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神具の呪師  作者: fukuchan
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呪師

今回は説明回です。

「あ、お兄ちゃんそれに狐孤さんも、おっはよー!」

「おはうございます。こーくん、狐孤ちゃん。ご飯もうできてるよ。」

小太刀と狐孤がリビングに入ると、二人の少女が声をかけてきた。一人は小柄だが、活発そうな可愛らしい美少女、もう一人は狐孤に勝るとも劣らない素晴らしいスタイルを持つお人形のような可愛らしい美少女である。小柄な方の少女は影森彼方(かなた)、般若、もとい小太刀の妹である。そしてお人形のような少女は()向井(むかい)日和(ひより)、なまはげ、もとい小太刀の幼馴染である。ちなみに影森家、刃向井家は共に両親不在だ。刃向井家の両親は外務省で働くお役人さんで、その多忙さゆえに家を空けることは多い。影森家の両親は小太刀が幼いころに他界している。それ以来、お隣さんで、家族ぐるみの付き合いもあった刃向井家が影森兄妹のめんどうをみているのだ。

「ああ、おはよう。彼方、日和。」

「おはようございます。彼方様、日和様、よい朝ですね。」

挨拶を返し、そのまま食卓に着く。

「お、朝から焼き魚か豪勢だな。」

「うん、こーくん昨日は夜遅くまでお仕事してたみたいだから、しっかり栄養とってもらおうと思って。」

「そうか、ありがとな。いつも助かってるよ。」

小太刀は幼馴染の気づかいに感謝し、箸をとる。

「「「いただきます」」」

「はい、どうぞ。」

そして彼らはいつものように食事を始めるのであった。

「そうだ、彼方。頼まれてたものできてるぞ。ほれ。」

小太刀はお守りのようなものを3つほど手渡す。

「おー。さっすがお兄ちゃんありがとう!」

「しかしお前、本当にそんなのでいいのか?神具どころか呪具とすら呼べない代物だぞ、それ。」

「いいの、教室にちょっとした結界張るだけだし。ていうかお兄ちゃん、これそこらの呪具よりよっぽど高品質なんだけど・・・・・・。」

唐突だが、影森小太刀と影森彼方は一般人ではない。呪師である。この世の生きとし生けるものは、すべからく穢レと呼ばれる邪な気を放っている。それ自体は別段悪いことではない。酸素を取り込み、二酸化炭素を吐き出しているようなものである。しかし、何らかの原因で穢レが密集し、密度を増したとき、穢レは邪魅と呼ばれる不浄の存在に変貌し、森羅万象に害をなすのである。その邪魅を祓い、浄化する力を持つものが呪師なのである。呪師は(まじない)という術を用いて、森羅万象の力を借り受けることで邪魅(じゃみ)を退治、浄化するのだ。しかし、邪魅はなかなかに手強い、呪師が返り討ちにされることも珍しくはない。そこで開発されたのが「呪を込めた道具」通称「(じゅ)()」である。例えば、小太刀が彼方に渡したお守りには、穢レを散らすための結界の呪が込められている。長々と語ってきたが要するに、呪師とは呪具と呪を用いて邪魅と戦う者たちの総称なのだ。

「ねぇねぇ、こーくん。昨日のお仕事ってこれのこと?」

日和が小太刀に尋ねる。

「ん?ああ、いや、それは片手間だよ。本命はこっち。」

小太刀は懐からさやに収められた刃渡り10㎝程の小刀を取り出す。華美な装飾は何一つない実に簡素な作りである。しかし、小刀から漂う気品、そしてオーラが業物であることを物語っている。

「あれ?珍しいね、お兄ちゃんが小刀とはいえ(じゅ)(とう)を作るなんて。」

「ホントですよねぇ。いつもなら、めんどくさい、疲れる、だるい、と申されて仕事をお断りなさるのに。ご主人様、何があったんですか?」

狐孤は怪訝そうな表情を浮かべ、尋ねる。

「別に何もねぇよ。呪刀っていってもこの大きさだからな、大して手間はかからねぇし。ま、顔見知りからの依頼だったってのが一番の理由だけどな。」

小太刀は面倒くさそうに答える。

「ふーん、にしたって珍しいよね、こーくん基本的に呪には関わらないようにしてるのに。」

そう、影森小太刀と影森彼方はとある事情から呪師としての活動は行っていない。普通の一般ピープルとして生活している。せいぜい自分のクラスに魔除けの結界を張る、小金稼ぎ程度の依頼を受けるくらいのものなのだ。幸い影森家は呪師の家系の中では全くの無名で、今は亡き両親も呪師としてはよくて中の下程度の力しか持っていなかったため、身を隠すのはそう難しくなかったとは影森家両親談。

「いやー、実を言うとさ、ここ一か月出費が激しくて。ちょうど金欠だったところにそこそこの報酬くれるっていうからさ、顔見知りだったし、つい。」

ちなみに用途は(エロゲ)の(と)宝(エロ本)だ。ばれるとこの上なく恐ろしい地獄が待っているので小太刀は用途について語らなかった。

「なーんだ、そんなこと。つまんないの。」

「そんなことだろうと思いましたよ、まったく。普段から倹約してくださいと申しているではないですか。」

「そうなんだ、良かった。誰かに脅されてたわけじゃないんだね。心配してたんだー。でも無駄使いはだめだよ!。」

三者三様の反応にいろんな意味で泣きそうになる小太刀であった。


「さて、ぼちぼち行くか。これ以上のんびりしてたら遅刻しそうだ。」

「あ、ほんとだ。もうこんな時間。彼方ちゃん準備できてる?」

「もちろんだよ、日和姉ぇ。それよりお兄ちゃんはどうなの?」

「見てわからんか、準備ばんたn「あ、こーくんお弁当忘れてるよ」」

「準備なんだって?」

「ご主人様、カッコ悪いです。」

彼方は笑いをかみ殺し、狐孤はあきれながら小太刀を見る。

「う、うるさい!とにかく行くぞ、狐孤!」

小太刀が狐孤の名を呼ぶと狐孤は空中でくるりと一回移転し、愛らしい子ぎつねのストラップに変身した。

「いわれずともお供しますよ、ご主人様。」


というわけで第2話でした。お楽しみいただけたでしょうか?

もうしばらく日常パートが続きます。お付き合いいただければ幸いです。

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