親友
屋上へ到着した小太刀を待っていたのは、日和、彼方のいつものメンバー・・・・・・。
「お、きやがったな。遅いぞ影森!」
ではなく一人余計な人物がいた。
「なんでお前がここにいるんだ?さっさと帰れ。」
「なあ、俺たち親友だよね?普通親友にそんな暴言はかないよね!?」
「は?誰が親友だって?お前はあれだ、俺の忠実なる下僕だ。」
「お前に忠誠を誓った覚えはないんですけど!?そろそろキレていい?いいよね!?」
「もー、こーくん?あんまり意地悪しちゃだめだよ。鍔鳴君に謝って。」
「ドウモスミマセンデシタ。ソシテサッサトカエレ。」
「すげぇ、ここまで誠意のかけらもない謝罪なんて初めてだ。しかもさらっと追い打ちかけてるし!」
「はぁ。で?なんでここにいるんだ鍔鳴?」
そう、余計な一名とは小太刀の親友(?)鍔鳴断であった。
「いいじゃねぇかよ、たまには俺も混ぜてくれよ。」
「日和と彼方はいいのか?」
「いいよ~」
「別にいいんじゃない?」
「よろしい、わが忠実なる奴隷鍔鳴よ、本日に限り同席を許そう。」
「ははぁー、ありがたき幸せ。って奴隷に成り下がってる!!」
(すまんな、狐孤。)
(私のことはお気になさらないでくださいな。今はご学友とのひと時をお楽しみください。)
「さて、思ったより時間食っちまったな。さっさといいただこう。」
「「「「いただきます。」」」」
食事はつつがなく終わった。すると、鍔鳴は真剣な表情で小太刀に話しかけた。
「お前さ、この間の事件の時何してたわけ?結局体育館には来なかったよな。しかも、事件が解決したからって外に出てみれば、傷だらけの会長を抱えてるしよ。」
小太刀は事件の詳細を鍔鳴に伝えていない。呪が絡んでいる以上、真実を語るわけにはいかなかった。しかし、小太刀は鍔鳴だけでなく、日和や彼方にも詳しいことは話していなかった。鍔鳴の言葉は、小太刀以外の者の心情を代弁していた。
「すまん、話したいのは山々なんだが、警察の人にあまり人に話すなって言われててさ。」
小太刀はとっさに嘘をつく。しかし、日和や彼方ほどでないにしろ小太刀と付き合いの長い鍔鳴には通用しなかった。
「嘘つくなよ、何年お前の親友やってると思ってんだ。お前の嘘なんざすぐにわかる。」
鍔鳴は剣呑な雰囲気でいった。
「ふぅ、やっぱ通じなかったか。」
小太刀はあっけらかんと言う。
「お前な!!」
小太刀の反応に鍔鳴は怒りを覚え、小太刀の胸ぐらをガッとつかみ上げた。
「ちょ、鍔鳴君!?」
日和はあわてて鍔鳴を止めようとする、しかし・・・・・・。
「日和!」
小太刀は日和を止めた。
「いい、これは俺の問題だ。」
「でも!」
「いいから!大丈夫だ、日和。彼方、日和をつれて先に戻っててくれ。俺はこいつと話さないといけないからさ。」
「わかった・・・・・・行こう、日和姉ぇ。お兄ちゃんもああいってるからさ。」
「・・・・・・うん。」
日和は渋々彼方に連れられてその場を去った。ずっと、小太刀に心配のまなざしを向けながら。男二人だけが屋上に取り残された。やがて、鍔鳴は話し始めた。
「お前約束したよな、刃向井さんと彼方ちゃんの無事が確認できたらすぐに避難するって。俺はさ、お前が何の理由もなく約束を破るような奴じゃないって知ってる。ましてや親友との約束ならなおさらだ。なぁ、俺にも話せないことなのか?俺はお前の力になれないのか?」
「本当に申し訳ないとは思う。でも、お前には言えない。なにがあっても。」
「・・・・・・そうか。」
鍔鳴は胸ぐらをつかんでいた手を放し、小太刀を下した。
「ほんとうにすまない。」
小太刀は鍔鳴に改めて謝罪の言葉を述べた。
「あーもういいよ、お前のことだ、なんか厄介ごとに首突っ込んじまったんだろ?なぁ、影森。俺じゃ力にならないかもしれないけどさ、ほんとに危なくなったら俺を頼ってくれ。お前を家でかくまってやることぐらいはできるからさ。」
「鍔鳴・・・・・・ありがとな、そうさせてもらうよ。その時は頼むぜ、親友。」
「おうよ!!」
鍔鳴はへへっと笑いながら答えた。
「さて、じゃあ俺たちも戻るか、遅刻しそうだ。」
「そうだな、でもそのまえに・・・・・・」
バキッ!!
鍔鳴の拳が小太刀の右頬をとらえた。殴られた小太刀は頬を抑え、目を丸くしていた。
「約束破った罰だ、ほうとならもう三発ぐらいかましてやりたいところだが、事情があるみたいだしな、今回はこれでチャラにしてやるよ。」
「そうか、サンキューな。」
「殴られて礼を言ってんじゃねーよ、気持ち悪い。さっさといこうぜ。」
「ああ。」
二人はいつものように笑い合いながら教室へと戻っていった。
第十六話でした。
一章よりはテンポよくいけてるでしょうか?
感想などいただけたら幸いです。




