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第一章「(略)」 6
「犯人は誰?」
「あ、納東」
「んー久しぶり」
「郷がさぁ、誰かに電話してっからさ、いやはやまさかあんただったとはね」
「驚かないんだ、接穂ねーさん」
「いや、ある程度予想はついてたし」
接穂と納東くんの会話を聞きながら、僕は一人で東那ちゃんを眺めた。
鼓動が止まってさえいなければ、
心臓が動いてさえいれば。
彼女は。
「にしても」
と納東くんは東那ちゃんを抱える。
「なんで死んじまったんだろうな」
複雑な表情。
「…め…」
不意に接穂が何かを呟いた。
「ん?」
「ごめん」
「ほんっとにごめん、あたしが、あたしが早く気づいてりゃ」
彼女はそこで一旦言葉を切った。
「あたしがもっと早く気づいてりゃ、もっと早くここについてりゃ…東那は死ななかったかもしんねーのにっ」
僕はその時初めて接穂が泣くのを見た。
またもやてけとーイラスト付き。