第一章「(略)」 1
第一章「さぁて、しばらくお付き合いください」
「で、どうすんの?」
と接穂。
「どうするって、何を?」
「彼女の家に行くか、てこと」
「彼女からは来ないんだ…」
「うん。お嬢だから」
なんていうか、うん。なんともいえない。
「じゃあ、その子の空いてる日を教えてもらえるかな」
そして、当日。
その日は珍しく晴天だった。真っ青な空に白い雲。典型的な夏空。ただし今は11月。いや、「珍しく」という言葉には語弊があるかもしれない。言い換えよう。その日は、僕の記憶の中には滅多にない晴天だった。僕は一人、公園のベンチに腰掛けている。何をしてるのか、と思う方も多いようだから、説明しておくと。友達を、待ってる。それも、僕の数少ない友達。しかも同い年の女子。ただ、ここで、可愛らしい少女を想像してはいけない。あ、いや。可愛いことには可愛いんだけど。……。で、僕が待ってる相手は、一応私立お嬢様高校の三年生でまぁ同い年なんだけど。彼女は。待ち合わせの時間を。一時間過ぎてるのに。まだ、来ない。僕の貴重な時間はどこへ…。そんなことを考えながら、一人待つ僕。―公園のベンチに一人の男子高校生。空しい構図だ。いったい何で僕はこんな目に遭ってるんだろう。誰のせいなのかは言うまでもない。彼女のせいだ。そして、更に三時間後。そろそろ帰ろうか、と僕が思い始めたちょうどその時に、彼女はやって来た。いくらなんでも時間にルーズすぎる。「うーっす!郷、待った?」ここはセオリー通りにいくなら、「今来たところだよ」とでも答えたほうがいいようだけど。僕は流石にそこまで優しくない。まして四時間も待たされてるのだ。「滅茶苦茶待った」そう答えてやる。彼女はくははー、と笑った。
「まったく」
と僕は呟いた。
「それじゃあ、行こうか」
接穂の後輩、の家に。
電車を乗り継いで、一時間弱。
彼女の家に着いて、インターホンを押す。
ピンポーン…
誰も出て来なかった。
「おっかしーな、さっきメールした時は家にいるって言ってたんだけど」
怪訝そうな顔で呟く接穂。
二回、三回。インターホンを押してみる。
誰も、
出て来ない。
試しに扉を後ろに引くと、普通に開いた。
「戸締りぐらい、ちゃんとするべきだと思うんだけどね」と僕。
もしかして急用で出かけているのかもしれない。
「誰か、いますか?」
足を、踏み入れると。
そこで。
少女が、死んでいた。