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終
翌日の未明、真田医師の息子で、足の骨折のために入院していた真田高志が階段の踊り場で倒れているのが発見された。発見した看護師によると発見当時彼は既に死亡しており、病院では階段を下りようとしていた彼が、足を滑らせて転び、打ち所が悪く、また深夜だったために発見されることもなく、失血死したという見解だった。大きな騒ぎを嫌った病院側もこの事件を内々に処理し、その結果真相が明るみに出ることはなかった。
しかしそれからしばらく経って、病院内に新たな噂話が駆け巡った。
「ねえねえ、あなた知ってる?」
「何を?」
「噂で聞いたんだけど、夜になると、この病院の階段に幽霊が現れて、通りかかった人を突き落とすって言う話」
「ただの噂話でしょ、そんなの。信じる人なんかいるの?」
「ほんとだってば。ここの病院で働いていた内科の真田先生もその霊に殺されたって話よ」
「あれはただの事故でしょ? それによくある話じゃない、そんなの」
「そうよね」
噂好きの中年女性患者は笑い飛ばした。