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桃太郎サイドじゃないストーリー

作者: 朝茶漬け

サイドじゃないです。

お話は粗めですね。申し訳ありません。

むかしむかし在るところに

おじいさんとおばあさんと桃太郎が住んでいたした。

おじいさんは山に芝刈りに…行かずおばあさんと川に出かけます。おばあさんはそこで洗濯をします。おじいさんは網を握りしめ、川を睨みつけます。

「来ましたよ。おじいさん。」

おばあさんが機械的に呟きます。おじいさんは素早く網を投げます。それにかかったのは綺麗な魚達。しかも大きな魚ばかりでした。

「…もう、止めませんか。」

魚がかわいそうですよ、そういつものように訴えるおばあさんにいつものように答えるおじいさん。

「まだだ。」

おばあさんはため息をついて首を振ります。そして水を絞った洗濯物は桃太郎の生まれてきた桃を包んだものでした。

不思議なことにそれを水に漬けると魚が寄ってくるのです。そこをおじいさんは文字通り一網打尽にしているというわけです。

「もうお金なら人に貸すほどあるじゃありませんか。」

「黙れ。」

布に魚が集まると知った時からおじいさんは変わってしまいました。おじいさんはそのことを秘密にして金儲けするようになりました。優しかったおじいさんはおばあさんを殴るようになりました。

しかしおばあさんは桃太郎には何も教えませんでした。いつおじいさんに話すか分からないからです。桃太郎はおじいさんが自分の言うことを聞くように躾ました。ですがもともと心優しい桃太郎は今でも他人の話もころりと信じてしまいます。

「裏のお山に幽霊が出た」

「井戸の中から赤ん坊が出た」

皆信じ込むのでおじいさんは気に入りません。

「ワシ以外のことを信じるな。」

ですが愚か…げふんげふん純粋な桃太郎は信じ込んでしまうのです。


おじいさんは金貸しを始めました。すると時の運も味方したのでしょうか、面白いようにお金が増えていきます。

「ひははははっ!」

こんな声を上げて笑うおじいさんを悲しげに見るおばあさん。桃太郎はおじいさんが笑っているのでにこにことしていました。この時、既におじいさん達が住む村と隣村の里長はおじいさんに借金をしていました。


ある日おじいさんは桃太郎に言いました。

「隣村の長者さんのところに行って、お金を返せと言ってきなさい。」

「はい、分かりました。」

隣村の長者さんはかなりの額を借りています。それで一軒家が建つほど。

桃太郎は出掛けていきました。桃太郎はこの辺りでは並ぶものがいないほど強いのです。だからお金を踏み倒したくても桃太郎がいるからどうにもならないのです。皆逆らえず、泣く泣く身売りをした者も多いのです。


桃太郎は隣村に着きました。

しかし、

「長者の家が壊れている。」

ボロボロになった家の前に人が立っています。

「どうしたのだ?」

手ぬぐいをかぶった村人Aは応えます。

「村に鬼ヶ島の鬼が来て我が家…げふんげふん長者さんの家を壊して宝物を持って行ってしまったのです。」

桃太郎は困って、

「ならば、長者は金を返せまい。」

「長者さんは死にました。」

桃太郎は驚きます。

「鬼にやられたか。」

「やられましたやられました。その通りです。」

しくしくとわざとらしい泣き声を上げる村人A。単純…げふんげふん優しい桃太郎はすっかり怒って、

「鬼許すまじ。」

そう言って拳を握りしめました。

「お願いです。鬼を退治して下さい。鬼の財宝はきっとたくさんあります。借金はそれで払って下さい。」

桃太郎はうんうん頷いて、ニッカと笑いました。

「私が鬼を退治しよう。お金も鬼に払わせよう。」

村人Aは喜んで、

「これを使って下さい。」

とボロボロの鎧、その辺にいた犬、猿、雉を紐に繋いで桃太郎にお供として渡すと、だめ押しに黍団子もやりました。

「すまない。」

そう言って桃太郎は意気揚々と鬼退治に向かったのでした。

…が、三匹はぐったりと動く気配がありません。仕方なく桃太郎は黍団子をやることにしました。

「お前達にはこの黍団子をやろう。これから鬼退治だ、欲しければ食え。」

三匹は桃太郎が差し出した黍団子にむしゃぶりつきました。あまりの食欲に桃太郎が引くほどに。黍団子を食べた三匹は正式にお供になったのです。


桃太郎は山道をずんずん行きます。すると日が暮れていきます。

「今夜はどこで寝るべきか。」

桃太郎はお供に聞きます。しかし

「ワンワワン、ウー…ワン!」「キキッキキキキッ」「ケーン」

答えてくれるのはいいのですが、

「三匹が一度にしゃべると分からないだろう。」

その言葉で皆、うなだれます。互いに大したことは言っていないものですから、また我先にとはしゃべり出しません。そこで優しい桃太郎は

「では猿はさっきなんと言ったのだ?」

一匹ずつ聞くことにしました。

「…キキッキキキキッ」

「そうか、この辺りには食い物がないのか…」

桃太郎は口をへの字に曲げました。少し前から桃太郎の腹の虫が騒いでいたのです。

「では次、犬。」

「ワンワワン、ウー…ワン!」「…そうか…良かったな。」

桃太郎は何ともいえない顔をします。犬は尻尾を振ってその幸せぶりをアピールします。

「最後に雉。」

「ケーン」

桃太郎の顔がパッと明るくなる。

「そうか、頼めるか。」

「ケーン」

雉は夕日に向かって羽を広げます。

「わふん?」

「あぁ、人家がないか見てくれるらしい。」

桃太郎は笑顔で答えます。

「キキッ」

「ウー」

二匹は何となく雉が帰ってこない気がしました。

「キキキッ」

「ワフッ」

二匹が何かを決意したところに雉が戻ってきました。

「お帰り。」

雉は桃太郎に

「ケーン」

空からの報告をします。

「そうか、やはりダメか。ならばここで一晩過ごすとしよう。」

こうして桃太郎一行は野宿となったのでした。野宿といってもただ、そのあたりの乾いた落ち葉の上で寝転ぶだけなのですが。

その夜、

「キキッキキッキ?」

「わふわふわふん?」

桃太郎が寝た後、犬と猿は雉を何故戻ってきたのかと問い詰めていました。

「ケーンケーン」

羽を広げ小さく鳴いて事情を説明する雉。どうやら桃太郎から離れすぎると不安で不安で仕方なくなるなるようです。半信半疑であった犬と猿もこっそり桃太郎から逃げ出すと気持ちの悪い不安が張り付いて帰ってきてしまいました。

「ワフッ」

「キキッ」

「ケンッ」

つまりは鬼を退治しなければ桃太郎からは離れられないないのです。そう考えた三匹は覚悟を決めます。こうして夜は更けていくのでした。


そして数日後、

桃太郎は犬、猿、雉を連れ、海にやってきました。砂浜に立つ桃太郎はお供に聞きます。

「あの島が鬼ヶ島か。」

遠くにぽつんと浮かぶ小島、それを見たお供は

「わん。」

「キキキキッ」

「ケーン」

順繰りに返事します。桃太郎はニッカと笑ってぼろ鎧を脱ぎました。

「わふん?」

犬が三匹を代表して不思議そうに聞きます。

「何、泳いでいこうと思ってな。」

「キキッ!?」

それに反応したのは猿でした。猿はあまり泳ぎがうまくないのです。

「キキッキキッキキキッキキッ!」

「…そうか、では待とう。」

猿はチョロい…げふんげふん優しい桃太郎を説得して舟を探すことにしました。犬もそれに加わります。犬も濡れるよりは舟の方がいいと思ったようです。雉は猿達に頼まれて舟探しを手伝います。

休憩している桃太郎を置いてお供は舟を持つ人を捜します。すると

「ワン!」

あっさりと見つかりました。ぼろの小屋に病気で漁に出られなくなった漁師が。

「ワン!」

「キキッキッ!」

交渉すると苦しげに咳をする漁師は夢うつつに舟をあげる代わりに食べ物をくれと言いました。猿は日暮れまでかけて野山の食べ物をかき集めます。漁師はそれを食べ、約束通り舟を…くれませんでした。漁師は冗談のつもりだったのです。ですから猿達は怒りました。


「キキキッ!」

桃太郎がうたた寝から目覚めると猿があかい小舟を砂浜に浮かべていました。

「でかした。さすがは猿だ。」

犬と雉は何とか笑みを浮かべます。

桃太郎は拳を突き上げると、

「では鬼ヶ島へ鬼退治だ!」

「キキキッ」

「ワン!」

「ケーン!」

三匹が答えました。


「ここが…鬼ヶ島。」

桃太郎は小さな浜に立っています。お供はあかい小舟を隠して桃太郎の傍に控えます。

「では、参る。」


「頼もう、頼もう!鬼はおられるか!私は桃太郎!借金を返してもらいに来た!」

鬼ヶ島の頂上付近、そこにあったのは洞窟でした。

桃太郎はその入り口に立つと声を張り上げます。しかし

返事はありません。桃太郎は夜目の効かない雉を残し、とりあえず暗闇を進んでいきます。と、

「う゛う゛っ!」

犬が唸ります。

「鬼か。」

返事はまたありません。桃太郎は身構えます。

「はぁっ!」

今度は相手が居たようです。桃太郎は暗闇で体当たりを喰らいます。

「ぐっ!」

しかし桃太郎は負けません。たたらを踏んだ身体を立て直し、相手に足払いをかけます。相手は倒れ、

「キキッ!」

悲鳴をあげます。どうやら仲間の猿を倒してしまったようです。

「すまん。」

桃太郎は手探りで相手を捜します。

「おんっ!」

犬が鳴いた方を見ると影が桃太郎の来た方、出口に向かって走り去っていきます。

「待てっ!」

桃太郎は影を追って洞窟を出ます。影は途中で転びます。

「待たんか!」

桃太郎はその背中を踏みつけ逃げられないようにしました。

「げふっ」

影は子どもでした。

「何、鬼が…子どもとな。」

子どもの額は微かに出っ張っており、

「角に見えんことはないが…」

子どもはしくしく泣き出します。桃太郎は困ってしまい、

「泣くな泣くな、何故お前は長者を殺した。」

宥めながら聞きます。子どもはしばらく泣き止みませんでしたが、しばらくすると話し始めます。

「おいらは、この島で暮らしているんだけど、お腹が空いたら海の向こうに食い物を探しに行くんだ。

この島には食い物はほとんど無いんだ。でも、遠くには行けないし、そんな偉い人を殺したりなんかしやしないや。」

確かに子どもは非力でそう言っている間にも、桃太郎の足を退けようともがくのですが全く動かせません。

桃太郎はころりとその非力で可哀想な子を信じてしまいました。

「そうか、人違いか。悪かったな。」

庄屋を殺したのはその子ではないようです。

「だが、ならば長者を殺した鬼とは何処にいるのだろうか?」

桃太郎は首をひねります。

と、桃太郎の後ろに影が一つ現れます。それは六尺もある棒を桃太郎の脳天に振り下ろします。

「ケーン!」

「ガッ…」

倒れたのは、雉の攻撃と素早い桃太郎の蹴りを喰らった影の方でした。

「お前が鬼か。」

桃太郎は伸びている影を見下ろしニッカと笑います。確かに影の額には角があります。

桃太郎は子どもを放し、鬼を捕まえます。

「庄屋の借金を払って貰おう。」

捕まった鬼はやっぱり泣き出します。

「そんなことはしていません。人違いです。」

「鬼に人違いも無かろうに。」

桃太郎は思わず突っ込みます。

ですが鬼はやってないの一点張り。単純な…げふんげふん純粋な桃太郎は鬼が本当にやっていない気がしてきました。

「我が家にあるお宝を持って行って代わりにして下さい。命ばかりはお助けを。」

そこまで言われた桃太郎は遂にその申し出を受けました。目を腫らした鬼は宝箱を渡し、何度もお辞儀します。

こうして桃太郎は無事、鬼ヶ島をお宝を持って後にしたのです。


お供を解放し、一人家に帰った桃太郎は絶句します。

「家が無い。」

その代わり、死んだはずの隣村の長者が嬉しそうに桃太郎の家の跡地に新しい家を建てさせています。長者は桃太郎の顔を見て腰を抜かします。

「も…桃太郎!」

そのとき、

「桃太郎!」

おばあさんがぼろぼろの姿で駆け寄ります。

「おばあさん、どうしてこんな事に?」


「実はね…」

何と桃太郎は長者にまんまと騙されていたのです。長者の家はもともと二つあり、一つを壊し、鬼に罪を擦り付け桃太郎を鬼ヶ島にやります。桃太郎が鬼に負けると思ったのです。その隙に長者はおじいさん達を捕まえ、借金を無理やり無いものにしたのです。

桃太郎は怒って長者を捕まえると思いっきり放り投げてました。長者はずっと向こうに飛んでいき、落ちた先は隣の村の何と長者のもう一つの家の家畜小屋の屋根。天井を突き破り藁の上に落っこちます。長者は目を回し、ばったり倒れます。

おじいさんは既に長者に抵抗して腰を痛め、ぽっくり逝ってしまっていました。

桃太郎はおばあさんと二人慎ましく仲良く暮らしましたとさ。

お終い♪


この桃太郎はチートですが、馬鹿です。

誤字脱字はあればお知らせください。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 昔噺を、微妙に改造する腕が素晴らしいです。
2014/05/16 07:36 退会済み
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