昨夜の出来事(の語り)
「っていうことがあったのさ」
ドヤ顔で両手を広げた話し手もとい安芸津は、満足そうに息をついた。しかし、目の前の相手・・・聞き手側である落合摘実は納得がいってない様子だ。
「で?」
「ん?」
前者が素の声で疑問を投げかけたため、後者は思わず聞き返した。
「あ、俺の話分かりづらかった?」
「まあ確かにくそ長いしくそ分かりづらかったんやけど、結局アッキーはなにがいいたかったんかなー・・・って思って・・・」
「冒頭に戻れ冒頭に」
「冒頭とかいうなや!」
朝から全力で突っ込みを入れる落合に、登校途中の生徒の目が集中する。
「おい見られてんぞ落合」
「うっ」
落合は誤魔化すように止まっていた歩みを進め、後ろからついてくる安芸津に怪訝な目を向ける。
「まあ無様にもひったくりにあったアッキーが、綺麗な女の子に犯人を捕まえられて無様にも怪我したってことやな」
「無様二回言ったな!」
「事実やん。仮にも少年会会員が恥ずかしい醜態さらしたなあ!班長に怒られても知らないんだー!」
「しっ!声が出けえよ落合!」
「あ」
「ったく・・・会員であるために一番大事なことだろ」
安芸津は大げさに喉を鳴らしてから、ある人物の言い方を真似て言った。
「私立暁肖学園少年会会則第一項より、少年会は存在しないものとする」