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警察不信  作者: 山本正純
Episode 5 銀の弾丸
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Side.093 招かれざる客 The visitor who is not invited

 その頃株式会社マスタード・アイスの玄関にウリエルたち5人が到着した。デザードイーグルに銃弾を装弾したレミエルはウリエルに立ち上がる。

「ウリエル。ラジエルはどうした。一緒じゃないのか」

 ウリエルは首を横に振る。

「いいえ。ラジエルはラグエルに同行してある仕事をしています。この前彼女が倒れましたよね。作戦の最中に記憶が戻る発作が起きれば作戦に支障が出る。ということでガブリエルが作戦を変更したそうです」


 レミエルはデザードイーグルを磨きながら向かいに立っている東京クラウドホテルを見つめる。

「ラグエルと一緒ということは、ラジエルもあのホテルの中か」

 レミエルの呟きを聞いたウリエルは微笑む。

「はい。後一時間もすれば戦闘員が2人増員されるそうですから、それまでの辛抱です」

「2人増員だと。聞いてないな。その内の一人は警視庁に張り込んでいるハニエルでいいとして、もう一人は誰だ」

「サラフィエルです。バスジャック事件の事情聴取終了後すぐに参戦するそうです」



 その頃警察署でバスジャック事件の事情聴取が始まるのを待っていたサラフィエルこと東條清太郎はラグエルからのメールを読んでいた。

『実践実習やりませんか。事情聴取終了後メールしてください』

「了解や」

 サラフィエルは微笑みながら残りの待ち時間を楽しんだ。



 午後7時30分。東京クラウドホテルのパーティー会場にいる支配人の大塚の前に一人の男が現れた。

「大塚さん。そろそろ始めませんか」

「ああ。パーティー参加者が全員集まったから始めてもいいだろう」

 男はマイクを持つ。

「皆様。私は司会をさせていただく山田と申します。主役の大工健一郎さんはまだ来られていません。主役不在でございますが、パーティー参加者が全員集まりましたので、一度乾杯をしましょう」


 パーティー会場の空気が不穏に満ちる出来事がこの後起きる。突然ドアが開き、招かれざる客が現れたのだ。その男の名前は犯罪心理学者の山本尊。警察組織以外にも政府関係者も非難していることからパーティー参加者の9割は彼を敵視している。

 招かれざる客の登場に参加者はざわつく。300人のパーティー参加者の一人である酒井衆議院議員は彼の顔を見て怒鳴る。

「散々政府関係者も非難しておいて、パーティーに参加するな。和解したくてパーティーに来たならこの場で謝罪しろ。政府関係者を非難してすみませんでしたって」


 山本尊は酒井の説教を聞き笑う。

「説教ですか。私はあなたたちと和解したくてパーティーに参加したのではありません。匿名希望さんから招待状を貰いました。この場で招待状の文面を読みましょうか。不祥事の目撃者にしてくれてありがとうと伝えたいからね」

 山本尊はパーティー会場に居座った。



 午後8時株式会社マスタード・アイスの最上階にレミエルと鬼頭はいた。彼らは今床に寝そべっている。午後10時まで彼らには仕事がないため、退屈しているのだ。

ウリエルとハニエルはビルの警備。鴉たちは人質と死体の処理。サラフィエルはこのビルに向かっている。それなのにこの二人は仕事がない。暇を持て余している鬼頭はレミエルに提案する。

「暇だから、ウリエルと合流して警備でもしないか。2人より4人の方が警備しやすいだろう」

 レミエルは首を横に振る。

「ダメだ。警備中に人を殺害することは許可されていない。絶対あなたはエンカウントで遭遇した人物を殺害するだろう。無駄な死人は必要ない」

 鬼頭は頬を膨らませる。

「でもラグエルからメールがあったよな。派手に暴れても構わないって。俺はまだ暴れたりないんだ。最低でも200人くらいは殺したい」


 レミエルは鬼頭の顔を睨みつける。

「これはあの方からの命令でもあるらしい。俺はあの方から直接連絡を受けたことがないから確証はないが、ウリエルの携帯にあの方からメールが届いたそうだ。死人は最小限にしろ。大量殺人は我々の目的ではないのだからってなぁ」

 

 株式会社マスタード・アイスの4階の男子トイレに月影管理官は隠れていた。なぜ彼がここに隠れていたのか。彼は正面に立っている東京クラウドホテルの警備を開始するついでに、この会社の社長に会いに来た。社長に久しぶりに会うことができた月影は、ホテルの警備をするためにビルを出ようとした。その時月影は違和感を覚えた。全く社員とすれ違わないのだ。社長に会いに来た午後5時55分までは100人の社員が残っていた。わずかな時間で100人の会社員が姿を消した。何かの事件が起きているのではと月影は直感した。


 犯人が何人いるか分からない現状で、捜査するわけにはいかない。トイレに隠れた月影は応援を頼むため、トイレ内で電話を掛けた。

 そして現在月影はトイレ内で応援の警察官たちを待っている。


 その時月影のいる男子トイレ内にウリエルが入ってきた。ウリエルは男子トイレ内を見渡す。

(生き残りの隠れ場所は、トイレの中くらいだよね)

 僅かながら人の気配を感じたウリエルはスタンガンを取り出す。

(あぶり出しますか)

 

 ウリエルはレインコートと長靴とゴム手袋を着用する。これらのアイテムは全て完璧なほど感電対策が出来ているものだ。

 

 衣服を着替えたウリエルはトイレの壁越しにスタンガンを当て、一文字を書くようにスタンガンを横に動かした。

 すると月影が手にしていた携帯電話が突然浮いた。それを視認したウリエルは頬を緩ませる。

(ビンゴです)

 ウリエルはスタンガンを使い壁越しに大という字を書く。トイレ内にいた月影の体に電流が流れ、彼は気絶した。


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