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警察不信  作者: 山本正純
Episode 3  幻影の娘
74/106

Side.074 とある組織の氷壁破壊 Ice wall destruction of a certain organization

コンピュータ用語やハッカーの専門用語多様してすみません。



 久保田はその言葉を聞くと銃口を彼女の頭に近づける。


「そうか。降参するか。だが降参したら殺さないなんて約束はしていない」

 

 ウリエルは腹を抱えて大笑いした。

「いいえ。まさかあなたは化け狐の正体を暴くためにコンピュータにハッキングしたと思っているのですか。それは大きな勘違いです。なぜならこの作戦の目的は、あなたの夢を壊すことですから。そう。あなたの夢は終わっているのですよ」

 

 久保田はまだ自信たっぷりに彼女に質問する。

「ハッキングには別の目的がある。どんな作戦だか知らないが、負けるのはお前ら退屈な天使たちという結論は変わらないだろう」


「いいえ。負けるのはあなたですよ。それでは我々の作戦を馬鹿でも分かるように説明しましょうか。コードブレーキングでパソコンに犯人はあなたというメッセージを表示した所までは説明しなくてもいいですよね」

「ああ」


「その裏で我々の仲間はあなたの思惑を壊す準備をしていました。あなたの目的は国家転覆を目論む新たなるテロ組織の結成。その夢を壊すには切り札として持っているファイルΩを完全に削除するしかない。最初に我々はバックドアでファイルΩを完全削除することにしました。もう一度あなたが政府の機密コンピュータにハッキングしたとしても、もう一度あのファイルを見ることはできないでしょう。なぜなら政府のコンピュータにハッキングしようとする人を強制的にフリーズさせるコンピュータウイルスを仕掛けていますから」

 

 久保田はポケットからUSBメモリーを取り出し余裕の笑みを浮かべる。

「そんなことしったってこっちにはバックアップがある」


「無駄ですよ。実はあの暗号メールにはコンピュータウイルスが仕掛けられていましたから。メモリーを刺し中身を確認した時点でファイルを強制削除するコンピュータウイルスがね」

「何だと」


 久保田はウリエルの言葉を聞き絶望する。そんな彼にウリエルはさらに絶望させるような事実を彼に伝える。


「次に組織の過去10年分の犯行声明をインターネット上にアップしたから、全国の愉快犯が組織の模倣犯になるということですが、その作戦も潰しました。あなたが今日アップしたサイトにハッキングして、そのサイトを閲覧した人物を強制的に政府のコンピュータに侵入させるようなプログラムを仕掛けておきました。プロのハッカーでも侵入不可能なコンピュータにワープさせられたユーザーのコンピュータは強制的にフリーズ。あなたのアップしたサイト経由で政府の機密コンピュータにアクセスした全国の愉快犯さんには、おまけとして警視庁サイバー犯罪対策課のコンピュータにIPアドレスが送信されるようにしておきました。これで全国の愉快犯さんは不正アクセス防止法違反で全員逮捕されます」


 完全に負けたと久保田は思い、悔し涙を流す。

「くそ。組織のコンピュータにハッキングできたから上手くいくと思ったのに。組織には俺以上のハッカーがいたのかよ」


 ウリエルは一応補足をしておく。

「ちなみにあなたのコンピュータにハッキングした組織のメンバーは組織内でナンバー2の実力を持つハッカーです。つまり我々の組織を敵に回せば痛い目を見ることになるということですね。命だけは助けてあげますから、安心してください」


 ウリエルはこう言い残すと部屋を後にした。こうして全国の警察組織を巻き込んだ壮大な振り込め詐欺事件は幕を閉じた。


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