Side.007 つまらない襲撃と目立つ服装 A petty attack and a conspicuous dress
鬼頭は堂々と玄関のドアを返り血によって赤くなった腕で壊す。鬼頭は玄関に置いてある鏡を見て衣服の汚れを確認した。かなりの返り血が鬼頭の体や衣服には付着している。50人も殺したのだ。衣服が汚れていない方がおかしい。
「服も奪うか。サイズがあるといいが」
そうして中に入ると人の気配はなかった。お宝を探して館中を物色したが人に出会うことはなかった。鬼頭は悔しがる。
「逃げやがったか。もう少し殺し合いを楽しみたかったのに」
彼は高く売れそうな絵画を見つけた。
「これでいいか。金目の物は期待できねぇ」
住人が避難していなければ金目の物を奪うこともできた。住人は金目の物を持って避難したのかどこにも金目の物はなかった。鬼頭は絵画を取り外す。
「まったく。あれだけ殺して報酬がこれだけかよ」
絵画が飾ってあった場所にカードを貼ろうとした時に彼の携帯電話が鳴った。
「俺だ」
『鬼頭さん。どうですか。北海道の豪邸は』
電話から聞こえてきた声は聞き覚えのある声。彼は思い出す。
「ラグエルか。つまらない襲撃だったな。警備員は殺しがいがないし、住人は避難している。金目の物は住人が持って行ったらしいから適当な絵画を奪うことにした」
『そうですか。災難でしたね。それでは逃走して次の目的地である島根県に向かってください』
「分かった」
鬼頭は電話を切ろうとしたがラグエルは話を続けた。
『それとまだ銃弾は残っていますか』
「ああ。二か月に一回支給されるあれか。九月はいっぱい使ったから残り7発しかないぜ」
『そうですか。珍しいですね。あなたがそこまで銃弾を消費するなんて』
「仕方ないだろう。あの日は銃撃戦をする気分だったから」
気分で殺し方を選んでいると知りラグエルは呆れた。
『とにかく残りの銃弾はハロウィンまでキープしてください』
「了解」
鬼頭は電話を切り適当な部屋にあるクローゼットからサイズが合う服を探した。
「やっぱりねえか」
するとサイズが合いそうな服が一つだけ見つかった。その服はあきらかに半世紀遅れの日本軍の軍服だった。こんな服を着ていたら確実に目立つだろう。だがサイズが合う服はこの服しかみつからない。
「返り血がかなり付着している服か半世紀前の日本軍の軍服。どっちも目立つのに変わりない。返り血が付着していると警察犬から逃げることができねぇ。日本軍の軍服を奪うとするか。まあ服はガブリエルにでも用意してもらえばいい。それまでの辛抱だ」
鬼頭は日本軍の軍服に着替える。そうして鬼頭は豪邸から逃走した。