Side.042 脅威の殺人ウイルス A threatening killer virus
10月18日午前1時群馬県警の赤城警部と北海道警の海原警部は喜田参事官の三人は国立微生物研究所にいた。
喜田は海原たちに確認する。
「株式会社センタースペード人質籠城事件の主犯とされる透明人間のアジトから大量のウイルス入りのアンプルが発見され、群馬県の馬場研究所で開発されていたウイルスと名称が一致したということですね」
「はい。まさか喜田参事官が関わった事件が一本につながるとは思いませんでした」
神の悪戯だろうと海原は思った。三人は国立微生物研究所に足を踏み入れる。
研究所の受付の近くには久保田花子という女の研究員が待っていた。
「警察の方ですね。昨日あなた方が提出したアンプルの鑑定が終わりました。結果は会議室でお話しします」
久保田は三人の刑事を会議室に通す。会議室の中では研究所の所長天井竜彦が待っていた。
天井は久保田を見つけると声をかける。
「久保田君。君は下がりたまえ。この結果は国家機密だった」
「分かりました」
久保田は会釈すると自分の持ち場へと帰った。
ドアが閉まるのを確認した天井は、深呼吸してから三人の刑事に結果を伝える。
「これからいうことは国家機密に相当します。まず北海道警が提出したアンプルと群馬県警が提出した研究記録に載っていたウイルスは完全に一致しました。ウイルス名はブラッディティア。感染力はインフルエンザの4倍。感染経路は空気感染のみ。潜伏期間は10日間です。初期症状は目から赤い涙を流し失神するだけです。ウイルスが体内に潜伏すると、免疫力が徐々に低下し、衰弱します。潜伏期間の10日間が経過すると、42度以上の高熱に苦しみ、体が徐々に赤くなっていく。その時の免疫力はゼロとなり、この空気中にあるあらゆる細菌が感染者の体を蝕み死亡する。今の所ワクチンはなく、治療法もありません。つまりウイルスに感染すれば最高で10日間しか生きることはできない。もともと免疫力が低いとされる子どもか老人がウイルスに感染したら5日の命ですが」
そんな凄い殺人ウイルスを馬場大輔は開発したのか。バイオハザードがすぐそこまで来ている。喜田参事官は顔を青くした。
天井は三人の警察官の青ざめた顔を見て、あることを思いだし、彼らを慰めた。
「北海道で発見された数百本のアンプルを回収できただけでもよかったでしょう。あのウイルスの威力からあれだけの量のウイルスがこの日本のどこかでばら撒かれたら、現在の日本の人口の半分はウイルスに感染して死亡したでしょう。それだけのウイルスがテロリストの手に渡らなかっただけでもよかったではありませんか」
天井の意見は正しいだろう。もしもあの量のウイルスがテロリストによって盗まれれば、8日で日本の人口を半減させることができるのだから。
だがその考えは甘すぎる。あれだけの量のウイルスを作成した研究員が生きているとしたら恐怖は現実になる。その研究員がテロリストの仲間だとしたら、いつバイオテロが起きてもおかしくない。




