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警察不信  作者: 山本正純
Episode 2  信賞必罰
38/106

Side.038 裏切り者の銃弾 A betrayer's bullet

 午前10時。その日非番だった北条は秋葉原にカメラを買いにやってきた。彼はカメラ店に向かうため横断歩道を渡る。その途中で杖を持った白いひげのおじいさんが北条の肩にぶつかった。ぶつかった衝撃でおじいさんは転ぶ。


「すまぬ。足がよろけてしまったわい」

 北条はおじいさんに手を差し伸べる。

「いいえ。私も考え事をしていましたから」

 そう言いながら北条はおじいさんの耳元で囁く。

「ラグエルだろう。お前の目的は何だ」

 


 その頃600ヤード離れたビルの屋上でレミエルはライフルを構えていた。スコープで北条を確認した彼はラジエルたちと連絡する。

「今ターゲットを確認した。その近くに警察はいないだろうな」

『いません』

「分かった。それではラグエルが下がったら暗殺開始だ」

 

 レミエルの銃口が北条の命を狙っている。この時の北条は、このことに気が付いていなかった。

「ラグエルってなんじゃ」


 北条は目を点にする。おじいさんは立ち上がり、北条とは反対の方向に歩き出した。

「さて孫の誕生日プレゼントを買わねば」

 

 人違いかと北条は思った。そう思ったのはつかの間。北条は殺気を感じた身震いした。

(一人や二人じゃない。遠くから狙われている。まさか)

 

 北条は辺りを見渡す。右側にあるメイドカフェの前に黄色いネクタイにサングラスの男。左側にあるアイドルショップに赤いネクタイの男。さらに右斜め横にあるアニメグッズ専門店の前にはラジエルがいた。

(完全に囲まれている。そんなことはどうでもいい)


 北条は前に歩き出す。まるで地獄へ行くように。北条の行動を見てレミエルは感心した。

「いいね。これで狩りやすくなるぜ」

 

 レミエルは北条の胸に標準を合わせる。

「さようなら。ゼラキエル」

 

 レミエルはライフルで北条の胸を狙撃する。

銃弾が胸を貫いた感触があった北条はその場に仰向けの状態で倒れた。

(やっぱり。狙撃してくれてありがとう。ラグエル)

 

 周りにいた観光客は何が起きたのかが分からなかった。そのうちの三人は応急処置を行う。

「もしもし。救急です。今秋葉原の横断歩道で人が倒れて。大量出血があります」

 

 北条は気を失うまであることを考えた。

(いいや。撃ったのはレミエルだろう。それにあのラグエルのことだ。絶対に急所は外すように指示しているはずだ)

 

 北条は涙を流しながら気を失った。その様子をスコープで確認したレミエルは逃走の準備を始めた。

「さて後は、メモを残すだけか」

 


 狙撃場所であるビルの玄関前に白いランボルギーニ・ガヤンドが駐車した。逃走の準備が完了したレミエルは車の助手席に乗り込む。車の後部座席にはラジエルが乗っていた。

「早いじゃないか。狙撃から五分も経っていないぜ。狙撃があったからそう簡単にこのビルに到着できるはずがないだろう。あっちはパニックになっているし、現場保存のために交通規制があってもおかしくない」

「結構忙しかったですよ。あなたがトリガーを引いたころには200メートル先の駐車場にいましたから。そこから迂回して五分でここに到着しました。逃走は早い方がいいでしょう」

「それはそうだが、どうも腑に落ちない。逃走なら俺のポルシェ・ボクスターでやればいいだろう。態々仲良く逃走する必要はねぇ」

 

レミエルの言葉にラグエルは笑う。

「これはあの方からの命令ですから。親睦を深めろということでしょう」

 

すると沈黙していたラジエルが時計を見ながらラグエルに話した。

「そろそろいい時間じゃない。動きましょう」

「では行きますか。鴉さんはバイクで逃走していますから」

 

 そして退屈な天使たちは逃走を開始した。


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