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警察不信  作者: 山本正純
Episode 2  信賞必罰
35/106

Side.035 理由 Reason

 そのニュースは昼のニュース番組ではトップニュースだった。

『本日午前9時30分頃神奈川県江の島で爆弾事件が発生しました。爆発したのは赤い車で、事件発生30分前にマスコミ宛てに届いた犯行声明の映像と今回の事件が酷似していることから警察は事件の関係性を調べています』

 


 千間刑事部長はテレビを切る。彼の隣には月影管理官と喜田参事官がいた。

「月影。この爆弾事件の目的は何だと思う」

「分かりませんが、一つだけ分かります。この爆弾事件の目的は警察組織への挑戦状ではないということです。あの映像をマスコミより早く入手していたなら、警察への挑戦状という線もあります。しかし我々はテレビで初めてマスコミ向けの犯行声明を観ました。それから三十分後に犯行声明と同様の爆弾事件が発生。警察に挑戦するにしては明らかに早すぎると思いませんか。それにあのマスコミ向けの映像には神奈川県や江の島というキーワードはありませんでした。犯行声明の映像に映っていたのはどこにでもある街並みです。それだけで爆弾事件を察知することは困難でしょう」


 千間は月影の見解を聞き考え込む。

「だが模倣犯ではないのだろう。あの映像が公開されてから30分以内に爆弾を準備して赤い車に仕掛けるなんてことできるはずがないからな。都合よく爆弾を持っていない限り不可能だ」

 


 すると喜田参事官が呟いた。

「もしかしたらあの爆弾事件の目的はマスコミと視聴者に向けたメッセージではありませんか。退屈な天使たちの犯行声明が送られた午前9時にニュース番組をしていなかった地上波のテレビ局は一つだけ。そのチャンネルでは凡人散歩秋の生放送二時間スペシャルを放送していました」

 

 喜田参事官は録画用DVDをDVDプレイヤーに入れて映像を再生する。

「これが本日の午前9時に放送された凡人散歩を録画したものです」

 

 午前9時という文字がテロップとして右端に表示されたが、放送は中断されていない。その代わりにニュース速報のテロップが表示された。


「テレビ局に確認すれば分かることでしょうが、あの犯行声明が公開してから30分間はこのテレビ局以外はどこも退屈な天使たちのこれまでの犯行について解説するという内容に放送内容が変更されました。それで視聴者がつまらないと感じ唯一バラエティ番組の生放送スペシャルを放送していたチャンネルに視聴者が飛び乗ったとしたら・・」

 

 月影は喜田の話に続くように見解を述べる。

「視聴率が上がり、多くの人間に生放送という形で爆弾事件を目撃させることができるということですか。そうやって一般人に恐怖を与えて、印象付けたかったのでしょう。我々は本気だと無関心な視聴者に。おそらくそれが目的だったのでしょう」

 

千間刑事部長は彼らの推理をまとめる。

「つまり彼らの仲間は凡人散歩の撮影クルーの中か番組関係者の中にいるということか。そうだとしたら番組を続行したのも頷けるだろう。番組関係者である彼らの仲間が、二時間スペシャルの企画を利用しようと考え、特番の日程を仲間に伝えた。そして放送に合わせて爆弾事件をロケ先で起こした。結論から言うとこの爆弾事件は退屈な天使たちの犯行だということだ」


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