Side.029 法務大臣の圧力 Pressure of the Minister of Justice
午前11時須田哲夫は銀色のランボルギーニ・ガヤンドの運転席でウリエルからの電話を受けた。
「どうしましたか。ウリエル」
『ただの相談です。もう一つの不穏分子を見つけたからね』
ウリエルはもう一人の不穏分子の説明をする。彼女の説明を聞きラグエルは微笑む。
「そうですか。分かりました。ガブリエルとあの方に相談します」
『それともしも組織が不穏分子と判断したら、暗殺は私にやらせてください。もちろん詳細な暗殺の日付も任せてください。決着は自分でつけたいので』
「なるほど。そんなに執着心があるのですか。分かりました。それでは後半戦頑張ってください。後半戦の責任者はあなたですから」
須田は電話を切り、車を発進させる。
「望月警部は衆議院議員会館で重要参考人神部健の事情聴取ですか。こちらは一つ調べごとでもしますか」
その頃望月と合田は衆議院議員会館の前にいた。
「捜査に参加しないのではないのですか」
「別の真相があるかもしれないからな。あの事件が権力抗争だとしたら介入する余地はない。だが首相補佐官が殺人を鬼頭に依頼して小野田を殺害したとしたら捜査一課も介入できる。もしも後者が真実だとしたら遅れを取ることになる。それが嫌だから協力する」
素直じゃないと望月は思った。いざ衆議院議員会館に入ろうと思ったその時警備員が二人を止めた。仕方なく警察手帳を見せたが警備員は彼らを通さない。
「警察の方でしょうが、あなた方を通すことはできません」
もどかしいと望月は思った。合田たちの背後から男は声をかけた。
「合田警部か。久しぶりだな」
合田は背後を振り返る。そこには井伊尚政法務大臣がいた。
「井伊尚政法務大臣」
チャンスだと思い合田は神部首相補佐官がある事件の重要参考人であるということを話した。すると井伊は警備員に耳打ちをする。
「これは失礼しました」
警備員たちは合田たちを通す。その後ろからついてくる井伊を見ながら望月は合田に小声で話しかける。
「なぜ法務大臣があなたの名前を知っているのですか」
「ある事件で知り合ったからだ」
合田たちはエントランスで止まり、井伊にお辞儀をする。
「ありがとうございます。これで捜査ができます」
「たいしたことはやっていない」
井伊の一言を聞き合田は驚く。
「あれがたいしたことだ。どうやって刑事をこの衆議院議員会館に入れたのかが知りたい」
「ああ。そこにいる女性の刑事さんを酒井忠義国会議員の妹さんだと偽っただけさ。圧力を使っただけだ」
それを聞き望月は目を点にする。
「そんなことして酒井国会議員が怒らないのですか」
「大丈夫。こんな嘘誰にもわかるはずがないからな」
井伊は名刺を合田に渡す。
「神部首相補佐官の名刺だ。コンタクトが取れなかったら名刺に書いてある番号に電話すればいい」
そう言い彼は合田たちと別れた。




