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警察不信  作者: 山本正純
Episode 2  信賞必罰
27/106

Side.027 突然の訪問客 A sudden visitor

 10月15日午前10時千間刑事部長は刑事部長室で榊原刑事局長からの電話を受けていた。

『退屈な天使たちとの攻防に負けたらしいな。あの事件から一日経過しても彼らの逮捕につながる手がかりが出てこないから完敗だよね』

「はい。マスコミが騒いでいる。警察は無能だとね。この一件に関しては記者会見をしない。この一件で分かったことは、退屈な天使たちが本格的に動き出したということぐらいだな。後の捜査は公安に任せることにして捜査一課は捜査から撤退する。捜査本部は解散だ」


 榊原からの質問に答えた千間は質問を返す。

「ところでそんなことを聞くために呼んだ訳じゃないのだろう」

『見解が聞きたくてな。この一週間の間に退屈な天使たちは動き出すのか。犯罪心理学者の山本尊の見解はこの一件がプロローグにすぎないから一週間以内に彼らはテロ事件を起こすというものだった。その事件の指揮をしたあなたにも見解を聞きたいと思った』

 

 千間刑事部長は山本尊という名前を聞き怒る。

「聞きたくない名前だ。山本尊という名前は。犯罪心理学者だか知らないが、あんな優男に何が分かる。あいつは警察を侮辱するコメントしか言わないじゃないか。だから抗議文を出すつもりだ」

『そうかな。彼は腐敗した警察組織を立て直すために必要な人材だと思うけどね。彼の見解は的を射ているし、毒舌だから民衆からの人気もある。犯罪捜査に協力を依頼すれば心強いと思うがね。そうなれば逮捕率も上がり庶民は警察を信用するようになる。毒を持って毒を制するということさ』

「使えるものは使う。あなたらしい考えだ。だが俺はあんな野郎に捜査協力はしない」

 


 そう言い千間刑事部長は電話を切る。すると刑事部長室に一人の女性がノックをしてから入室した。

「失礼します」

 

 その女性を見て千間は驚く。彼女の名前は望月裕子。組織犯罪対策課の警部だ。刑事部と組織犯罪対策部は縄張り意識が強い。暴力団絡みの事件で特に対立することが多い。彼女が刑事部長室を訪れることは、捜査一課と対立するような事件が起きたことを意味している。なるべき対立したくない千間はため息を吐いた。

「組織犯罪対策課の警部が刑事部長に何かようか」

「はい。捜査一課三係に捜査協力を依頼したいです」

 

 その申し出に千間は目を点にする。

「それはどういうことだ。何かの思惑があるのか」

「思惑はありません。彼らの力がどうしても捜査に必要です。実は流星会幹部小野田の財布からある人物の名刺が発見されました・・」

 

 事情を把握した千間刑事部長は望月の申し出を了承する。


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