Side.021 侵入者に銃弾を It is a bullet to an invader
渋谷クリーンビルの前には木原と神津以外は誰もいない。先ほどまでは大量の警察官が包囲していた。鬼頭がヘリで逃走したと分かった途端に彼らはヘリの追跡を開始した。現場に残った木原は神津に話しかける。
「たぶん鬼頭はまだ中にいます」
「ああ。さっきの野郎は偽者だろうよ」
確証はなかったが二人は渋谷クリーンビルの中に足を踏み入れる。ビル内は殺風景だが、日が当たっているため明るい。
その頃向かいに立っているクロサワビルにいたレミエルは渋谷クリーンビルの異変に気が付いた。
「どうやらネズミが紛れ込んだようだ」
ラジエルはライフルのスコープでビルの中を確認する。そこには確かに二人の人間がいた。
「どうしますか」
「決まっているだろう。ラグエルに連絡して狙撃の許可を貰う」
レミエルはラグエルに電話する。
『どうしましたか』
「ネズミが例のビルに紛れ込んだらしい。殺してもいいよな」
『はい。構いません。ウリエルにも報告しておきますね。狙撃に成功したとしても他にも侵入者がいるかもしれませんから』
「了解」
レミエルは電話を切ると愛用するH&KPSG1を構えた。それに合わせるようにラジエルはKar98kを構える。
彼らは標準を5階と6階の間の階段に合わせる。
「いいか。あの階段にネズミがきたら狙撃だ。俺は先頭にいる野郎を狩る。お前は後ろにいる奴を狩れ。横に並んで来たら、お前が先に撃て。窓側にいる奴を狙うんだ。俺はその後で相棒を殺されて動揺しているもう一匹のネズミを狩る」
「分かりました」
それから一分後木原たちは5階から6階に上がる階段を上っていた。向かいのビルで狙撃手がライフルを光らせているとも知らずに。
木原は携帯電話を取り出した。
「そろそろ千間刑事部長に報告した方がいいかもしれません。今あなたたちが追っている鬼頭は偽者であることを伝えるために」
「それがいいかもな」
そんな二人を向かいにあるクロサワビルの中でレミエルたちは見ていた。
「ターゲットは確認したな。俺の標的は先頭にいる携帯を持っている男」
「私は後方にいるもう一人の方ですね」
二人はトリガーに指をかける。
「それではカウントダウンでタイミングを合わせるか」
レミエルはスコープでターゲットの顔を見ながらカウントダウンを始める。
「5.4.3.2.1・0」
レミエルとラジエルは一斉にトリガーをひき狙撃を開始した。
一方木原たちは千間刑事部長に電話をしていた。
「ヘリで逃亡した鬼頭は偽者の可能性が・・」
直談判を開始しようとした時にレミエルの放った銃弾が窓を破り木原の携帯電話を打ち抜いた。一瞬銃弾が見えた神津は反射的に階段を二段飛び降りる。そうすることでラジエルの銃弾は壁に命中した。
この出来事で二人は確信した。このビルの中に鬼頭がいると。




