Side.010 通報者とコンビニ強盗の謎 The mystery of a notifier and a convenience store robbery
鴉たちの暗躍を知らない木原と神津は現在渋谷署でコンビニ強盗事件の調書を読んでいる。神津は事件の概要を整理する。
「人質になった四人の名前は東都大学四年生の佐藤真実と牧田誠。身分を偽った国枝らしき男。彼はフードを被っていたため顔は分からない。そして店員の西沢冬馬。西沢は強盗犯をカラーボールで撃退しようとしたが、強盗犯にナイフで襲われ刺殺された。事件は謎の女による通報によって駆けつけた警官によって解決された」
木原たちは調書を読み終わると事件を担当した田辺巡査部長に質問をする。
「通報者の身元は分かりましたか」
「いいえ。女ということしか分かりません。手がかりは通報者と我々警察がやりとりしたテープくらいだけで・・」
すると田辺は通報者に関する不可思議な事実を思いだす。
「そういえば一つだけ気になることがあります。通報者の女小早川せつなは携帯電話を使って警察に通報したのですが、現場のコンビニから二キロ離れた位置で通報していました。気になるでしょう」
「つまり小早川せつなとコンビニ強盗犯には何かしらの関係があったということか」
神津の言葉を聞き田辺は首を横に振る。
「いいえ。被疑者の男にも通報時の録音テープを聞かせたが知らない女の声だという供述をしました。一応被疑者の関係者にもテープを聞かせたが全員が口を揃えて知らない女だと言いました」
つまりコンビニ強盗犯と通報者には接点がない。それならなぜ通報者は二キロも離れた位置からコンビニ強盗事件を知ることができたのか。
「それではその録音テープを聞かせていただけませんか」
「どうぞ」
田辺はノートパソコンで例の録音テープを再生させる。
『こちら警視庁通信指令センター。事件ですか。事故ですか』
『事件です。グロリアスマート渋谷店で強盗です。犯人は一人で建物内に立て籠もって店員をナイフで脅しています』
『あなたの名前は』
『小早川せつなです』
『それでは小早川さん。あなたの住所と連絡先を教えてください』
『はい。住所は・・』
小早川は住所と連絡先を伝えると電話を切った。
テープを聞いた木原たちは考え込む。
「後日通報者の自宅を訪れましたか」
「いいえ。彼女の言った住所を訪れたが彼女は事件解決から二週間後に失踪したそうだ。通報に使った携帯電話を残して」
「通報者である小早川せつなは何かの事件に巻き込まれた可能性があるかもしれないな。その録音テープと実況見分で採取した人質の指紋を提出してもらおうか」
「はい」




