5話
サブタイトルェ
はいどうも北郷一刀です。二十歳です。
宴の真ん中で正座する二十歳の青年。それを見下ろす華琳様。
周りは魏の重臣方が囲み、蜀、呉の方と共に呆然とした表情で俺を凝視してる。
……気まずい。
何が気まずいって誰も何も発しない。只々俺を見ている。
まさに公開処刑。
大海賊時代でもないのにこんな体験をするとは思わなかったよ。
おもわず海へ飛び出したくなるね。
現実逃避をしていた俺に。
さく……
ヒィィ!
思い切り目を瞑った。
さわ……
頬に優しい感触。
まるで何かを確かめるような。
華琳「かず、と?」
声が震えていた。
頬に触れている手も震えていて。
華琳「一刀……なの?」
目を開けて上を見る。
そこには女の子がいた。
あの日の夜に見た、
寂しがりやの女の子が。
華琳「一刀……ッ」
ぼろぼろと涙が頬を伝っている。
実感した。
俺はこんなにも愛しい人を悲しませていたのだと。
こんなにも寂しい思いをさせていたのだと。
だから精一杯の笑顔を向けて。
一刀「ああ、ただいま。華琳。」
泣きながらも笑顔を向けて
華琳「遅いのよ、バカ……!」
強く、優しく抱きしめた。
霞「一刀や……」
ん?
春蘭「北郷……」
そうか……皆だって待っていてくれたんだ。
寂しい思いをさせてしまっていたんだ。
俺は自分の持ちうる最高の笑顔で
一刀「ただいま!!」
霞「かずとやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!」
春蘭「北郷ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!」
俺は手を広げて……
春蘭「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」
ブフォン!!!
うおぉ!!?あぶねぇ!?
一刀「ちょ春蘭!?おま、何するん───」
そこには子供のように泣きじゃくっている春蘭がいた。
春蘭「貴様!!なぜ我々になにも言わずに消えたんだ!!皆がどれだけ……!
私がどれだけ悲しんだと思っている!!!」
……。
一刀「……そうだな、ごめん。
皆の笑顔が見たくて戦ってたのに悲しませちゃったな……ありがとう、春蘭」
頭をなでつつ
霞「がずどぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
一刀「どほぉう!!?」
大泣きしながら渾身のタックル。
耐え切れずに後ろに吹っ飛んだ。
霞「ばがずど!!いばばでだにじどっだんや!!!どれだげウヂがざびじがった思うどるんや!!!」
(バかずと!!今まで何しとったんや!!どれだけウチが寂しかった思うとるんや!!!)
もはや人の言葉ではなくなっている。
一刀「ごめんな霞。もう消えたりしないよ。こんなに想ってくれてる子がいるんだ。
二度と消えてやるかよ。それに約束したもんな、二人でローマに行こうって」
一刀が約束を口にした途端、さらに涙があふれた。
霞「あたりまえやろぉ……もう絶対……居なくならんといてや……」
一刀「本当に……ありがとうな」
三年だ。
「たいちょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
聞きなれた、けれど懐かしい声。
一刀「凪!真桜!沙和!」
三人がなだれ込んできた。
凪、真桜、沙和「本当に隊長なんですね!?ホンマに隊長なんやな!?隊長なの~!!」
ぐぉぉ……!さすがにキツいがここは甲斐性。
一刀「ああ。俺だよ、ただいま」
くしゃっと三人の頭をなでる。
一刀「ありがとう。俺なんかの帰りを待っていてくれて」
凪「あたりまえです!何をバカなことを言ってるんですか!」
真桜「せや!どんだけ待たせれば気ぃすむねん!!」
沙和「ずっと寂しかったの~!!」
一刀「本当に、ありがとう」
「にいちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!」
「にいさまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
一刀「季衣!流琉!」
二人「うわぁぁぁぁぁぁぁん!!!!」
ドゴォ!!!
おえぇっ!だめだ!耐えろ俺!頑張れ男の子!
一刀「うっぷ……ただいま。季衣、流琉。」
季衣「何やってたんだよ!兄ちゃんがいなくてずっと寂しかったんだぞ!」
流琉「そうです!なんでもっと早く帰ってきてくれなかったんですか!!」
一刀「ごめんな。ずっとこっちへくる手がかりを探してはいたんだけど、なかなか見つからなくて……」
季衣「そんなことどうでもいいよ!!兄ちゃんが帰ってきてくれたんだから!」
いいのかよ
流琉「そうです!そんなことどうでもいい!兄さまが帰ってきてくれたんですから!!」
いや、今君が聞いてきたんじゃ……
季衣、流琉「うわぁぁぁぁぁん!!!」
一刀「……ありがとうな。二人とも」
三年もかかったんだ。
「北郷」
一刀「その声は秋蘭か?」
後ろから聞こえた声に返す。
秋蘭「ああ。よく帰ってきてくれたな」
一刀「あたりまえだろ?ここが俺の居場所なんだからさ」
秋蘭「そうか。そう言ってもらえると嬉しいよ」
静かに俯き、何かを噛み締めるように頷く
一刀「ありがとう。ただいま」
「一刀殿」
この凛々しい声は。
一刀「稟」
稟「まったく、どれだけ待たせれば気が済むのですか」
一刀「はは。そういうなよ、こうして帰ってきたんだから」
稟「そうですね、おかえりなさい。一刀殿」
一刀「ああ。ただいま、稟」
少し離れたところにその子はいた。
一刀「桂花」
桂花「……なによ」
こっちを向いてはくれない、でも。
一刀「やっと帰ってこれたよ」
桂花「ふん。また孕ませられる危険性があると思うと泣けてくるわね」
肩が震えているから、わかってしまう。
この子も、悲しんでくれていたのだと。
一刀「ただいま、桂花」
桂花「…………おかえり」
「一刀~~~~~~~~!!!!!!!!」
一刀「天和!地和!人和!」
地和「せやぁ!!!」
ドボォ!!
ぐほぁ!!?なんで!?何で肝臓!?
天和「か~ず~と~!!」
ふにっ。
まさに地獄と天国。
人和「一刀さん!!」
地和「なに勝手に消えちゃってんのよ!!あんたはちぃ達のまねーじゃーでしょ!?」
一刀「いやもうまったくおっしゃるとおりで」
リバーブローをねじ込まれたので結構キツい。
人和「ずっと……ずっと待ってました」
……。
人和「ずっと帰りを待ってました」
ああ、この子達も……
一刀「ありがとう。天和、地和、人和」
あやべまた泣きそう。
一刀「ただいま、またよろしくな」
俺は大きく息を吸って
一刀「ただいま!!!みんな!!!」
やっと帰ってこれたよ。
ただいま、魏の国
華琳「で、さっきの騒ぎはどういうことかしら?」
感動の再会の後とは思えない光景。
また正座。
そんなに俺の正座が好きかキミ。
一刀「い、いやあれはですね。風さんが──」
風「お兄さんが風と森で再会して嬉しさのあまり襲い掛かってきたので逃げていたのですよー」
え、ちょ、ちがくない?だいぶ現実と差異があるよね?
華琳「……」
一刀「ち、ちがう!誤解なんだ!」
どう見ても浮気がバレた夫のような俺。
華琳「そう、誤解、誤解ねぇ……」
わあすごいジト目。絶対信じてないこの人。
風「お兄さんは風にあんな激しいことをして口にするのも恥ずかしいような事を要求してきたにもかかわらず逃げるのですねー」
一刀「嘘だ!!!」
ブチ
あ、俺初めて人の堪忍袋の音を聞いた気がする。
華琳「一刀……どうやら帰ってきて早々に罰を与えてほしいようね」
んな訳あるか。
一刀「風!これもうやばい!顔見て!」
必死の訴えに風は。
風「Σdグッ!」
GJじゃねぇよ。何もよくねぇわ。
凪「隊長……」
真桜「ないわぁ……」
沙和「隊長は乙女心の欠片もわかってないの」
やめて!そんな目で見ないで!
霞「一刀もかわらんなぁ~!」
そんな嬉しそうに言わないでくれ。
華琳「全軍……」
ん?
華琳「突撃ぃぃぃぃ!!!!!」
えぇぇぇ!?
一同「いけぇぇぇぇぇ!!!!」
一刀「ヒエエエエエ!!!!!!」
北郷一刀。
今日も皆に愛されてます……。多分