閑話・張三姉妹
天和「みんな~!てんほー、皆のこととっても愛してる~!」
「ほああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
地和「今日は来てくれてありがとー!私たちの歌を聴いて癒されていってねー!」
「ほああ!!ほあ!ほあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
人和「それじゃ一曲目、行くよー!」
「ほあああああああああああああゲェボ!あああああああああ!ほああああああああああああああああ あああああああああ!!!!!!!!」
人和「姉さんたち、お疲れ様」
天和「ほんとだねー。でも気持ちよかったよー」
地和「皆ちぃの虜だったしね~♪」
天和「ちがうよー。皆お姉ちゃんを見てたんだよー」
人和「はいはい、もういいから。そんなことよりも
もうすぐ成都で平定を記念した催しがあるから帰ってくるように言われたの」
天和「立食ぱーてぃだっけ?」
地和「そこでちぃ達の歌を披露してほしいわけね、わかってるじゃないの♪」
人和「それは違うと思うけど……。ここから成都までは結構距離があるから、
明日の朝にはここを出なければ間に合わないわ」
天和「えー。お姉ちゃん疲れたー、もう少し休んでからにしようよー」
地和「そうよそうよ!ちぃ達はあいどるなのよ?そこのところを考慮した上で──」
人和「そ、姉さん達が間に合わなくてもいいならね。私は行くから」
いつもならこんなわがまま言われてもしょうがないと思えるのに
いつになく棘のある言い方をしてしまった。
天和「ぱーてぃにいったって……一刀がいなきゃつまんないもん」
ちいさく、呟いた。
天和「どんなに気持ちよく歌ったって……一刀がいなきゃ虚しいだけだもん」
ぽつぽつと、消えてしまいそうな声で。
そんな姉に、言葉が詰まる。
天和「大陸一のあいどるになったって、一刀がいなきゃ嬉しく……ないもん」
頬を濡らし、震える声で。
天和「人和ちゃんは寂しくないの?一刀がいなくて悲しくな──」
人和「馬鹿なこと言わないで!!!」
我慢できなかった。
寂しくないわけがない。
悲しくないわけがない。
今だって思い出すだけで泣きそうになるのに。
人和「寂しくないわけないじゃない!!悲しくないわけないじゃない!!私だって……っ!
私だって一刀さんに逢いたい!!歌を聴いてもらいたい!!
一緒に……大陸一を目指したい!!」
感情が制御できなくなる
人和「でもそんな事を言ったって一刀さんは帰ってこないの!!
どんなに寂しくて悲しくて!泣いたって!!」
今までずっと抑えてきた感情が爆発したようだった
地和「ち、ちょっと人和?」
人和「一刀さんはもう──いないの!!」
嗚咽が混じった叫びで言い切った。
自分に言い聞かせるように。
涙が止まらない。
最初に会ったときはどこか頼りなくて、へらへらと笑っている印象しかなくて、
世話役と言われたときも正直反対だった。
それでも一緒にすごしていくうちに、彼の心の温かさに触れ、やさしさに触れ。
いつの間にか惹かれていく自分がいた。
消えたと聞かされたときは果てしない喪失感に襲われた。
足元からすべてが崩れていくようだった。
それでも私は予算を組み、演目を決め、頑張った。
頑張ろうと決めた。
だって──大陸一のあいどるは、一刀さんの夢でもあってくれたから。
一緒に夢を見てくれたから、追ってくれたから。
人和「こんな姿見たら一刀さん悲しむよ?
一刀さんと一緒に頑張ってきたことが……全部なかったことになっちゃうんだよ?」
天和「っ!!」
震えながら、首を横に振った。
そんなこと耐えられるわけない。
姉さん達だって一刀さんのことが大好きだ。
一刀さんが消えたことによる悲しみはかなりのものだった。
だからこうして弱くなってしまうのだ。
人和「だから……頑張ろう?一刀さんに笑われないように
胸を張って報告できるように」
天和「うん……っうん!……ぐすっ」
地和「そうね、まねーじゃーを放棄したことを死ぬほど後悔させてやるんだから!
こんないい女を三人も泣かせるなんて、帰ってきたらぶん殴ってやるわ!」
そして、三人で誓った。
必ず大陸一のあいどるになることを。
三人で願った。
いつか、かならず帰ってきますようにと。