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休止  作者: 御戊土山
3/43

運命再交(フタタビマジワルミチ)

一刀「ただいま。やっと……やっと帰ってこれたみたいだ」


足に力が入らなかった。ガクガク震えて、涙が止まらなくて。

すぐにでも駆け寄って抱きしめたいのに……。

身動きが取れないでいると、お兄さんが近寄ってきて……抱きしめてくれました。

懐かしい匂いが風の身体を包み込んでくれます。

まるで足りなかった欠片がぴったりと嵌ったように、心が満たされて。

だから、頑張って


風「お帰りですよ、お兄さん」


そう、言いました。




やっと……帰ってこれた。

やっと皆に会えるんだ。

これは夢じゃない。

だって……ここに、風がいるから。

しばらく抱きしめていると


風「この三年間、何をしていらしたのですかー?」


いつもの調子で風が聞いてきた。


一刀「何って……何だろうな?」


苦笑しながら。


一刀「ここに来たら皆といっぱい話をしようと思ってたんだけどね。

   いざ帰ってこれたんだと思うとさ」 


目の前が歪む。


一刀「うれしくてさ。頭真っ白になっちゃって……」


次から次に雫がこぼれ落ちる。


一刀「これは夢じゃないんだよな?

   夢だとしたら……こんなに嬉しくて……残酷なことってないよな」


情けない事に、自分の発した声は驚く程に細々としていて、震えていた。

何度も同じ夢を見た。

俺が華琳のもとへ戻ってきて、それを皆が笑顔で迎えてくれて。

本当に嬉しくて、心の底から暖かいものが溢れてきて。

俺は俯きながら顔を覆って涙を流していて。

涙を拭いて、ただいまって顔を上げるとそこには誰も居ないんだ。

そんな心を砕かれるような夢を何度も見た。

本当に死にたくなるくらい悲しくなった時もあった。



不意に、そっと頬に手が触れる。


風「お兄さん、風はここにいるんですよ。お兄さんに触れているんですよ」


その手はどこまでも優しくて。


風「夢なわけ、ないじゃないですか」


どこまでも暖かくて。

小さいはずなのに、大きくて。


風「お兄さん」


俺の心を包み込んでくれた。


風「改めまして、お帰りですよ。お兄さん」


満面の笑顔で答えてくれた。


一刀「ああ……ただいま、風……!」


その小さな身体を、抱きしめた。




風「さてさて、ここでお兄さんとちちくりあっているのも風としてはとても喜ばしいことなのですがー」


一刀「ああ……ああ!そうだな!皆に会いに行かなきゃな!」


そうして半泣き状態の俺の手を引いて森を抜け、宴の会場に戻ってきた。


一刀「ほー、ずいぶんと仲良くやってるじゃないか」


足元に転がっている何か痙攣している物体は見なかったことにして。


風「それはそうですよー。やり方が違っていただけで皆望んでいたことは同じなのですから。

  平和を願って、平和を掴んで、平和を守ろうという想いは皆さん同じなのです」


華琳「さぁ!ご教授願おうじゃないの!この心もとない私の胸をどうしてくれるのかしら!!」


……なにあのキャラ。酔ってるのか?

華琳が半ば本気で殺そうとしているような殺気を放っているのは気のせいとして。


霞「いや~楽しいなぁ!凪!今日は無礼講やで!のまんかい!!」


凪「し、霞さま!ちょ、まっゴボ!」


真桜「うわ!ちょ凪汚いやん。ちゃんとのみぃや~。」


沙和「そうなのそうなの!そんなんじゃフニャちんどもに負けちゃうの!」


霞が酒を無理やり凪に飲ませて、それを見て笑っている沙和と真桜がいて。


桂花「ちょっと春蘭!くっつきすぎよ!離れなさい!」


口から生まれてきたのかと思うほどに毒を吐く女が居て


春蘭「華琳しゃま~♪」


秋蘭「まったくかわいいなぁ、姉者は」


姉妹愛を満遍なく振りまいている二人がいて


季衣「流琉!もっといっぱい持ってきて!!」


流琉「も~~!少しは自分で動いてよ!」


親友同士のほほえましいやりとりを見て

ああ……ここが俺の居場所だ。帰ってきたんだ……帰ってこれたんだ!!

改めてその事実を実感し、おもわず笑顔になってしまう


風「ふふっ♪」


風が笑ってくれて。


ん~~~~、どうせなら皆を驚かせたいな。普通にただいまを言うのもどうにも面白くないし……


風「おにいさん?どうしたんですか?」


一刀「ん?いや、こう……皆を驚かせてやりたいじゃん。普通に帰るよりもさ」


ん~~~と、風。


風「ぉお!」


一刀「うわなんだよ風」


風「お兄さんの持ってるそれはなんですかー?」


ん?俺なんか持ってたか?視線を下に。


一刀「あれ?」


刀だ。

どうみても刀だ。

日本刀だ。

え?だって俺持ってきてないぞ?


そう、一刀は三年の鍛錬の間に祖父と同等に戦えるようにまでなっていた。

そしてそのときに祖父が


「か、一刀よ……ようわしを破って見せた!今のお前にならこれを……託すことができる……!」


一刀「じいちゃん!だめだ!そんなこといっちゃだめだ!まだ何も返してないじゃないか!」


「ふ、そんな顔をするでない。わしは……お前を……」


一刀「じいちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!!」



………………

…………



一刀「で、これ何?」


「うむ、我が家の宝刀じゃ。名前は……なんじゃったかのぉ。たしか「虎徹」じゃったか」


一刀「宝刀なのに覚えてないの?」


「うむ、なにしろわしとて使ったことはないからの」


「ご飯できましたよ。食べていくでしょう?」


「ふむ、もうそんな時間か。まぁ食っていけ」


一刀「あ、うんいただきます」



いやいやそこじゃない。

確かにもらった経緯はそうだが肝心なのはそこじゃない。

確かこれは部屋の墨に置いてあったはずだけど……。


風「お兄さん?」


一刀「ん、あぁなんでもない。これは刀だな。なんで持っているのかはわからないけど……」


風「ではそれを使ってみたらどうでしょうかー」


……はい?






はぁ、まったく。

どうして桃香はお酒が入るとああも崩れるのかしら。

もうすこし強くなってから飲んでほしいわ。

落ち着いて飲めやしないじゃない……ん?

あそこに居るのは……風?ともう一人居るみたいだけど……

何か様子が変だ。

風が暴れている。いやそうじゃない。


風が何者かに捕まっている!!


華琳「曲者!!捕らえなさい!!!」


???「え?……え!?ちょ、まっ!!!」


春蘭「ええい!問答無用!!」


???「えええ!?お前さっきまで酔ってなかったか!?」


春蘭「はぁぁぁぁぁ!!!」


ブォン!! ギィィィィン!!!


???「ぶはっ!」


春蘭「な、なにぃ!?」


……驚いた。まさか春蘭の一撃を受けるなんて。

というか……あれはなに?

目の部分が開いている布を被っていた。







一刀side


風「ではそれを使ってみたらどうでしょうかー」


……はい?


何を言っているんだろうこの子は。


風「まずはですねーこれを……」


風はどこからか取り出した布に二つ穴を開けて俺の頭にかぶせた。


一刀「あの、風?」


風「準備万端なのですよー。ではではー」


風が俺の手を取り、自分の首に絡ませた。

そして手足をばたつかせた。

え?何してんのこの子。

ほら、隅のこの騒動に気づいた華琳がこっちを凝視してるぞ。


「曲者!!!捕らえなさい!!!」


一刀「え?……え!?ちょ!まっ!!!」






華琳side


華琳「なかなかやるわね、あの覆面男」


秋蘭「ええ。まさか姉者の一撃を受けるとは」


まずい。

油断していたのだろう、春蘭に一瞬の隙ができた。

このままでは反撃を……あ、逃げた。

意味がわからない。


華琳「すぐに追いなさい!風を連れて行ったわ!直ちに救出を!!!」


魏一同「はっ!」







一刀side


一刀「バカじゃないの!?バカじゃないの!?どうするんだよ風!」


何故か風を抱えて逃げている俺。


風「んー、風としてはあそこでお兄さんが春蘭さまに伸されて終わると思っていたのですがー」


おい。

俺の感動の再会をどうしてくれるんだこの子は。


風「まさか防いで逃げてしまうとは思いませんでしたー」


いくら刃が潰れていたとはいえあんな怪物の一撃を食らったら骨が粉砕するわ。

ん?なんで刃潰れてたんだろ。平定記念日だから……とか?まぁいいやとにかく今は逃げよう。


一同「みつけたぁぁぁぁぁ!!!」


うおお!?


一同「風(様)をはなせぇぇぇぇぇぇ!!!」


一刀「ヒエエエエエエ!!!!!」


ドゴォ!!!




…………

……




春蘭「連れてまいりました。華琳様」


華琳「ええ、お疲れ様」


完全に不審人物扱い。当たり前だけど。


華琳「運がよかったわね?今日は皆武器は刃が潰れているの。だから死ぬことはないわ……多分ね」


おいいいいいい!風!そんなところでにやにやしてる暇があったら助けてくれ!


華琳「さらに個人的な特徴を肴にされてものすごく機嫌が悪いの。

   すぐには殺さないわ。じっくりと嬲り殺してあげる」


あ、やばい目が据わってる。

今日は平和の象徴ですよ!そんな物騒なこと言っちゃダメ!


華琳「さぁそのふざけた被り物を取りなさい!!」


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