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掃除当番

中間考査の勉強イヤすぎて書いた。

頭おかしいよ

 たとえ教師であったとしても、掃除の時間というのは面倒なものだ。基本的に毎日生徒がしっかり掃除しているか見なければならないし、終礼直後という時間も正直言って微妙だと思う。

 また、時々お菓子の包装などが落ちていることがあり、見つかれば明日の朝礼で追及しなければならない。この仕事は好きだが、この時間はどうしても面倒で、好きになれない。

「先生、こんなのが落ちてました」

 またお菓子か何かか……そう思って俺は振り向いた。

「機関車トー■スの顔です」

「……は?」

 信じがたい光景ではあったが、確かにそこにはトー■スの顔面があった。窓から差し込む夕日に照らされる、トー■スの顔面。

 そのトー■スは、いつも我が子と一緒に見ているはずなのになんだかいつもより憎たらしい顔をしているように見えた。

「……分かりました。先生がとりあえず預かっておきます」

 トー■スの顔面を学校に持ち込む生徒がいる。それを考えるだけで俺は気が気じゃなかった。

「先生、これも別の場所に落ちてたんですけど」

「またか。今度は何が落ちてたの?」

「ムキムキ褐色おじさんフィギュアの腕です」

「ムキムキ褐色おじさんフィギュアの腕?????」

 生徒が何を言っているのかしばらく理解できなかったが、やはりそこにはムキムキ褐色おじさんフィギュアの腕が存在している。

 決して教室という空間と縁のない物体が、今ここに、存在している。

「そもそもムキムキ褐色おじさんフィギュアって何なの?」

「え……ムキムキ褐色おじさんフィギュアをまさかご存知無いのですか?」

「そんなあたかも常識みたいな感じで言われても困るよ」

「最近すごい流行ってるんですよ。ムキムキ褐色おじさんフィギュアが」

「最近の若者はすごいなぁ……これもひとまず先生が預かります」

 今現在、教卓の上には憎たらしいトー■スの顔面とムキムキ褐色おじさんフィギュアの腕があり得ないほどの存在感を放ち、鎮座している。

 流石にこの教室は異常と言わざるを得ない。こんな奇怪な物が発掘される教室など、通常ならあり得ない。あり得ないはずなのだ。 

 それとも、俺が時代遅れなだけなのか……?

「先生、また落ちてました」

「これで3個目だぞ……今度はどんなものが落ちてたの?」

 若干呆れた口調で生徒に問いかけた。

「キーホルダーにできるタイプの犬のぬいぐるみです」

 良かった。やっと普通の落とし物が発掘された。すっかり安堵した俺はぬいぐるみを預かろうとした。

「でも、頭と両腕が外されてます」

「怖っっ!!!!!」

 信じた俺が馬鹿だった。

「何で?何で頭と両腕外されちゃったの!?」

「いや、それをボクに言われましても……」

 彼の反応は至極真っ当なものであったが、この状況下では彼も何かとんでもないものを持ち込んでいるのではないかと疑ってしまう。

「では、これも先生に預かっていただくということで……」

「嫌だよ!呪われそうだし怖いよ!持ちたくないよ!!」

「でもここにおいておくわけにも……」

 結局渋々預かってしまった。教卓にはあまりにも個性の強い落とし物達が揃っている。一体明日の朝礼でなにから話せば良いのやら……そもそもこれを無くして困っているヤツはいるのか?捨てたら捨てたで祟られそうで、本当にタチの悪い落とし物が揃ってしまった。

「先生」

「信用せんぞ!!」

「うわびっくりした……こんな紙が見つかったんです」

「どうせしょうもないものだろ……一応見せてみろ」

 その紙には、『帰還者の顔、禁憎の腕、鎖を断ち切った亡骸 全てを集め繋げし時、栄光が骸より出ずる』と書いてあった。

「何だこりゃ…誰かのイタズラか?」

「いいえ先生、よく見てください。帰還者と機関車、禁憎と筋肉……偶然の一致とは思えません。そして鎖とはキーホルダーのチェーンのこと……つまりこの落とし物は!」

「全て……繋がる……??」

 よく見ると犬の千切られた腕や頭部には連結できそうな部分があり、ムキムキ褐色おじさんフィギュアの腕とトー■スの顔面がカチッとハマった。

「何が起きるんだ……!?」

 骸より出ずる、ということは犬のぬいぐるみの中に何かがあるのだろうか。するとぬいぐるみの背中がいつのまにか開いていることに気づいた。

「この中に何があるんだ……!?よし、取り出すぞ!」

「はい!」

 中には先程と同じような一枚の紙切れが入っていた。

 恐る恐る紙切れを開くと、そこには……

『おめでと〜〜』

「何じゃそりゃ!!!!!」

 バカバカしい。ほんの少しでも期待してしまった自分をぶん殴ってやりたい気分だ。

「こんなことやってる内に掃除の時間とっくに過ぎてますよ」

「本当じゃん!よく見たら2人しか残ってないし……帰るか」

 本当に、本当にあれは何なのだろうか。少なくとも、馬鹿の作ったアホらしいイタズラということだけはわかった。

「何だったんでしょうね、さっきの」

「さぁね……知らなくてもいいんじゃない?」

「まぁ、楽しかったしいいか!」

「楽観的だなぁ……」

 でも実際、楽しかったのは俺も同じで、たまにはこういう馬鹿もアリだとも、少し思った。

 なお、最終的に完成した犬の胴体にムキムキ褐色おじさんフィギュアの腕とトー■スの顔が張り付いた最悪の人形が教卓に放置されている。明日の朝最初に登校した生徒は、声にならない悲鳴をあげることとなる。

 このことを2人は明日の朝まで忘れたままであった。

ムキムキ褐色おじさんフィギュア

声に出して読みたい日本語。

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