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フレデリカ嬢が帰った後、私はフレデリカ嬢について考えていた。
―それにしても、フレデリカ嬢は一体何者なのだろうか。余りに王子のことを知り過ぎている気がする。知っているというよりも理解しているというべきか。
それにあの表情。ただの令嬢ではない。王子と同じような激烈なものを秘めていると思う。そうだ。フレデリカ嬢は王子に似ている。実は双子の妹ということはないか。いや、さすがにそんなことはないだろう。
それに、フレデリカ嬢とは会話ができる。ここは王子と全く違う。そう言えば、アレクサンドラ・マリアと王子はどんな会話をしているのだろうか。取り巻き連中とも普通に会話ができているはずだ。
今日初めて気づいたのはアレクサンドラ・マリアへの敵意だ。あれは敵意だと思う。そう考えると王子に思いを寄せていた従姉妹かも知れない。そもそも王子に従姉妹がいるかどうかも知らないが。
今度もしアレクサンドラ・マリアから手紙が届いたら、フレデリカ嬢について尋ねてみることに決めて、その日はとりあえず眠りについたのだった。
数日後、修錬生から声を掛けられた。
「ヴィクトールさん。君、王子殿下と因縁があるんだって?」
「まあ、ちょっとね」
「その王子殿下だけど、最近、ふっと姿を消されるそうだよ。」
「姿を?」
「そうそう。しばらくすると何食わぬ顔で戻ってこられるんだってさ。」
「その話をどこで?」
「ちょっとした噂だよ。それじゃ。」
「あ、ありがとう。」
一体、どういうことだ。まだあちこち探っているのだろうか。いや、そんな必要はないはずだ。もうフレデリカ嬢が私と接触しているのは知っているのだから。
というより、さっきの彼は誰だ?
しばらくして、私は何故か大神官様に呼ばれた。
大神官は天つ后神殿(全国の分祠も含む)の長であり、現大神官は国王陛下の叔父に当たる方である。
「ヴィクトール・アントン修錬生、お召しによりただいま参上致しました。」
「楽にしなさい。急に呼び出してすまない。」
「とんでもありません。」
「そなたはフレデリカという娘を知っているか?」
まさか大神官様からその名前が出てくるとは思わず、ぐっと身が固まる。
「どうかな?」
「は、はい。存じ上げております。」
「正直でよい。何度か神殿で会っておろう。」
「はい。恐れながら、決して後ろ暗いことはなく、人目のあるところでございます。」
「それも分かっておる。」
「失礼致しました。」
「さて、そのフレデリカだが、あれが王宮の者であることも知っておるな。」
「はい。王子殿下のお使いとしていらしておりますので、存じ上げております。」
「うむ。あれがそなたに好意があることも知っておるか?」
「は?い、いえ、それは、……、そう言えば、そういったことを仰っていたようにも思います。」
大神官はニヤリと笑って言った。
「還俗してフレデリカと一緒になる気はないか?」




