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フレデリカ嬢は続いて王子の弁護を始めた。
「ただ、こういう考え方も出来ると思うんです。これは決して殿下を庇う訳ではないのですけれど。」
「はあ。」
「まず一人でお越しになったことについては、まだアレクサンドラ様に未練があると思われたのではないでしょうか。だとすると、当てつけというのもそういうことではないかと思うんです。」
だからと言って、あんな言い方はないはずだ、と言いたいのをグッと堪えた。
「……なるほど。」
「出家されたことについては、殿下はやっぱり一緒に国のために働きたいと思われたのではないかと。」
「しかし……、あの仰り方は私を下僕か何かようになさるおつもりのように聞こえましたが……」
「殿下は口下手なんです……」
急に悲しそうな表情をされると困る。ただ、あれを口下手というのは贔屓の引き倒しという奴だろう。
「殿下は…、ずっとヴィクトール様とお話なさりたかったのです。ただ、アレクサンドラ様の婚約者でいらしたから、ご事情があって声を掛けられなかったのです。」
やけに王子の心情に詳しい。一体どういった関係なのだろうか。王子に姉妹はいなかったはずだ。メイドや侍女でもないだろう。従姉妹か何かか?
「殿下のことをよくご存じなんですね。」
「あっ、いえ。つい、想像で申してしまいました。」
想像にしてはやけに実感が籠っているような気がするが。
「とにかくっ、殿下はようやく色々と事情が変化して、やっとヴィクトール様と親交を深められるといったときに、出端をくじかれたように思われたのですわ。」
「そうですか。ただ、そうであれば、もう少し言い様もあったと思いますし、婚約中の私の状況についてももう少し慮って頂きたかったですね……。いや、失礼しました。」
思わず本音が零れてしまった。
「ええ、内緒ですもの。分かってます。」
「ありがとうございます。」
「でも、仰る通り、婚約に関しては大分お辛い思いをなさってきたかと存じます。その点については、また殿下にも申し上げておきます。」
「そんな、そう言っていただけるだけで十分です。」
「そういう訳には参りませんの。殿下はこのことでしっかり反省して頂かなければなりません。」
王子に意見できるのか。いよいよ何者なんだろう。
「ところで、あの時、アレクサンドラ様はどうなさってました?」
「えっ⁉」
「ヴィクトール様を庇われたりしてました?」
何を言っているんだ。そんなことできる訳がない。いや、多少は期待したけれど、それは期待する方が間違いであって、
「あの場では身動きが取れなかったと思います……」
「そう……」
急に冷たい表情になった。どこかで見覚えが……
「ま、いいですわ。また参ります。」
「いえ、何度お越しくださっても、色よい返事は差し上げられません。」
「ええ、それでもまた参ります。殿下のお気持ちをご理解いただけるまで。」
王子に余程強く命令されているのだろうか。気の毒な事だ。
※ 誤字を修正しました。(24/08/13)




