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2)

 私はアインベルク侯爵家の三男として生まれ。13歳の時に、遠戚であるエアフルト侯爵家の令嬢であるアレクサンドラ・マリアと婚約した。彼女は生まれつき利発で両親に似て美しい娘だった。私とは家柄以外まったく釣り合わない相手だった。彼女は成長するごとに美しくなり、賢くなり、優れた才能をすべての面で発揮した。私はいつまでも彼女に釣り合う相手にはなれなかった。

 しかし、それが婚約解消の理由となったのではない。そもそも、アレクサンドラ・マリアはそもそもゲオルグ・フリードリヒ王子と相思相愛だったのだが、王子が側妃殿下の子であったのに対して、エアフルト侯爵家は王妃派であったため、家柄だけで私と婚約させられてしまったのだった。それが、今年の一月に側妃殿下が急逝され、翌月には王子が王妃殿下の養子となったことで問題が解決したことから、私との婚約を解消し、王子と婚約したいという申し出を受けたのだった。

 普通であれば不愉快だし、その申し出を受け入れることもないのだろうが、私は最初から事情を知っていたので快諾した。大体私には不相応な話だったのだ。

 そして、それだけではない。アレクサンドラ・マリアと王子の関係は社交界では公然の秘密であり、悲恋物語として話題となっていて、アレクサンドラ・マリアの婚約者である私は二人の恋を邪魔する醜い「悪役令息」扱いされ、子息・令嬢からの誹謗中傷のみならず、しばしば王子の取り巻きからの嫌がらせや暴力行為の対象ともなっていた。ようやくこの地獄から解放されるのだから、私にはメリットしかなかったのである。


 帰宅すると、両親と兄が迎えてくれた。

 「ヴィクトール、済まなかった。私が軽率だったのだ。」

 父が頭を下げて来たので、「しょうがないですよ。殿下が王妃殿下の養子になるなんて未来は予想できませんよ」と答えておいた。

 母は泣いていた。

 兄は「どうしても納得がいかん。横暴だ」とまだ憤慨していた。私が「まあ良いじゃありませんか。人の恋路を邪魔するのは野暮ですよ」と宥めようとすると、「お前がそのような軟弱な態度を取るから馬鹿にされるのだ。悔しくないのか!」となお言ってきたので、「悔しいと思えるほどの話でもなかったってことです」と言っておいた。納得したかどうかは知らない。

 そして、改めて両親と兄に、大学には進学せず神殿附属学校に入ることを伝えた。それは文官や宮中官として出仕しないことを意味した。

 父は「お前は貴族の出にしては事務能力が高い。神官になるのは勿体ないと思う。大学に進むべきではないか」と言い、兄も「出仕するのが嫌ならば、私の代理で領地の管理をしてくれればいいじゃないか」と言ってくれたが、「神殿附属学校で神学を学ぶのが夢だった」と伝え、大学へは進学しないことを認めさせた。

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