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三題噺もどき3

年が明け、

作者: 狐彪

三題噺もどき―よんひゃくいち。

 


「――」

 ふと。

 目が覚めた。

「……」

 やけに頭が重たい気がする。

 昨日羽目を外して飲みすぎたりでもしたせいだろうか。

 あまり弱い方でもないのだが、ここ最近飲んでいなかったからなぁ。色々と祟ったのかもしれない。

「……」

 とは言え、二日酔いという程の感覚ではないので、さして酷くはないのかもしれない。

 そもそも二日酔いになったことすらないので、何とも言えないのだが。吐き気もないし頭痛もないので、平気だろう。あれってホントに動けなくなるほどになることあるんだろうか……。身内はむしろ強い方なので、見たことがない。

「……」

 この頭の重さは、単純に寝起きだからとか、寝不足だからだとか、そんなあたりだろう。

 よくあることだ。

 なんだか、起きてすぐはものすごい異常のように感じてしまったが。

 よく考えれば、定期的にと言うかほとんど毎日のようにこんな風になっている気がする。

「……」

 視界の端に時計が入り込んでくる。

 未だはっきりとは見えていないが、まぁ、昼前ではあるだろう。

 外から入り込む光が、やけに明るいし、かなり温かい。

 朝であればもう少し、雰囲気というかなんというかが、冷たい気がする。

「……」

 しかしどうして、寝ていたはずなのに視界に時計が入り込んでくるんだ……。

 昨日の夜は確か、らしくもなく。

 月がきれいだなぁ、なんて思って。

 それで、たまには月見酒でもしてみようかと、窓際に椅子を引っ張ってきて。

「……」

 座ってぼうっとしていたら、寝てしまったのか。

 おかげで体中が軋んでいる。

 節々が痛むし、足は酷く冷えてしまっている。

 幸いなことに、グラスは置いて寝たようなのでこぼれてはいない。

「……」

 新しい一年を迎え、一週間がたったあたりの今日。

 なんというか、年明け早々倒れてしまって。

 仕事に復帰できないでいるもので、こうして自堕落に過ごしている。

「……」

 医師にはもっと早く来てくださいと言われ。

 職場の人にはご自愛くださいと言われ。

 身内にはもう少し体力をつけなさいと言われ。

「……」

 ま、倒れてから病院に来たんじゃ遅いに決まっているし。

 たいした戦力でもない癖に倒れられては、会社としては面倒だろうし。

 自分たちより若い癖に過労で倒れるなんてありえない、私たちの頃はそんな仕事量当たり前だったと言いたいんだろう。

「……」

 なんというか。

 冷たい世の中だ。

 おかげでこのざまだ。

「……」

 こういってみると、身内が一番冷たいのは何なのだろうな。

 まぁ、昔からこちらに関心を持つようなタイプの人たちではなかったので、納得の反応ではあるけど。

 もっとこう、なぁ。

「……」

 そう思ってしまうのも、今ばかりは弱っているからだろうか。

 今までだって、こんなことは沢山あったはずなのだけど。

 どうにも…こう。弱ってしまって仕方ない。

「……」

 年明け早々。

 世間では大きな出来事が重なり。

 自分自身も色々とあってしまって。

 今年はそう、良いことはなさそうだ。

「……」

 そういえば、初詣に行ったりもしていない。

 新年早々病院送りだったから、そんな余裕はなかった。

 年明けからの外出は、運動代わりの通院だけだ。

 家に帰ってからだって、数日は仕事をしていたし。

 ご自愛くださいと言った会社から、これだけしておいてくれと言われたので。

「……」

 なんというか。

 他でも回せるくせに、あなたにしかできない雰囲気を出してくるのが癪にさわるのだ。

 もう、そいう扱いは慣れているのでいいのだけど。

 それに耐えてきたせいで、倒れてしまったのもあると言われた。

「……」

 医者というのは、何でもお見通しなんだなぁと、しみじみ思った。

 少し話してみただけで、分かったように話してくれるのだから。

 さすがプロということだろう。

 ああいう仕事は、私には向いていなさそうだ。

「……」

 さて。

 自堕落にご自愛するのもいいが。

 そろそろ動くことにしよう。

 今日は通院の予定はなかったが、たまには書店にでもいくかな。

 もっていた本は読みつくしたし、新しいものでも探しに行こう。





 お題:月・朝・時計

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