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漁師と小さい魚
漁師が海に網を投げると、一ぴきの小さい魚がかかりました。その小さい魚は、漁師にいいました。
「ぼくは、まだこんなに小さいのだから、いまはつかまえないで、はなしてくださいな。ぼくがおとなになって、大きい魚になったときに、またつかまえればいいじゃありませんか。そのほうが、あなたも得するでしょう。」
「よせやい」と漁師はいいかえしました、「たとえ、どんなに大きな獲物だって、いつつかまるか、あてにできないものとひきかえに、こうやって、ちゃんとここにつかまえた獲物を逃がすほど、おれはばかじゃないぞ。」
ーーイソップ童話[上]
二宮フサ=訳
漁師と小さい魚 より