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0枚目 写す少女

夕陽が辺りを赤く照らす頃

一人の「カラス」が私の前に立っていた

その「カラス」は人を殺したことがある者にしか見えない

私は子供の頃、友人を殺した

~~~~~

ここは「白鳳(はくほう)高校」

私の新たな生活が始まる場所

私は「灰咲(はいざき) アオイ」高校2年生

転校生として私は入学した

「アオイさん!私が学校案内するね!」

放課後の時間、一人の女子生徒が声をかけてくれた

小学生の頃は転校生ってみんなから注目されていたけど高校生にもなると、あまりそういうのも無かった

単に私がそんなに可愛くなかったからかもしれないけど

「ここはね……」

一生懸命一つ一つの教室を説明してくれる

けど私の耳には一切入ってこなかった

正直、どうでもいい

何も惹かれない、何も興味を持てない

早く終わらないかなあって思いながら、愛想笑いをして過ごしてた

「ここら辺の教室は全部部室になってるんだ!」

いつの間にか部室の紹介になっていた

懇切丁寧にどの教室が何の部室なのか教えてくれている

「ん……?」

けど、何故か一つの教室だけが説明を省かれていた

単純に見落としていたという感じではなく、明らかにその教室だけを飛ばしていた

なんだろう……あの教室

どの部室にも部の名前が書かれたプレートがあるがその教室だけには無かった

しかし、それ以外の見た目に変わりはない

何故だろうか、妙に気になる

「あ…待って!」

その教室に近づこうとした瞬間、案内をしてくれていた女子に止められた

「あの教室には近づかない方がいいよ」

「どうして?」

「あそこ…「オカルト研究部」の部室なの」

オカルト研究部……?

「それで?」

「え?」

「それがなんで近づかない方がいい理由になるの?」

「あ、ああ…えっと……」

「正直、あまりいい噂がなくて……」

「幽霊とかUFOとか調べてるらしいんだけど」

「誰もいないはずの部室から女の人の声が聞こえたり……」

「その…他にも色々あって……」

「ふーん……」

大した理由は無いけど単に不気味がられてるだけってことね

「それに部員の人達も結構変わった人が多いし……」

必死に止めようとする彼女を無視して部室へ向かう

「あ!行くの?じゃ…じゃあ私はもう帰るね!」

彼女は逃げるように走って行ってしまった

そこまで恐れる必要はないだろうに

しかし、少し無愛想にしすぎただろうか

あの子はきっと優しい子だろうから、少し罪悪感を感じる

けど今は……

ガシッ

この扉の

ガララ……

中を知りたい!

「…………」

ただ暗いだけの教室

カーテンが閉め切っている

誰もいない…?

パシャ!

「う!」

突然の光とともにシャッター音が鳴った

「何?」

「へぇ~」

ポラロイドカメラを持った一人の女子生徒がイスに座っていた

髪は紫のボブ

耳にはいくつかのピアス

そしてダボダボのパーカーを着ている

私から見て、印象は最悪だ

近づかなきゃ良かった

「中々じゃん」

私に言っているのか

「何の許可も無しにいきなり人の写真を撮るなんて」

「私はここ「オカルト研究部」って聞いて来たのだけれど」

「「変態写真部」の間違いだった?」

「言うじゃん」

女子生徒がカメラから出てきた写真を私に投げた

「ここは「オカルト研究部」その情報は何も間違っていない」

「そしてあたしの行動も何も間違っていない」

「それはあたしの専門じゃないからあんたにあげる」

私は写真に目を落とした

「な!?これは!?」

そこには私ともう一人、髪の長い女性の姿が写っていた

「あたしはね~、何でも写す」

「それなりの腕があるの」

「きっとあんたと一緒にいる子も油断してたんじゃないの?」

「それで反感買ってなければいいけど」

「…………」

「で?何の用でここに?」

「いえ…用は無い」

「ただ…何か惹かれるような感じがしただけ」

「ふ~ん、なるほど……」

「じゃあ、この部に入る?」

「え?」

「ちょうど助手が欲しいと思ってたんだよね~」

「いや、でも……」

「他に部活は入ってるの?」

「い、いえ……」

「じゃあ決まり」

「ちょ、ちょっと!」

「なに?」

惹かれるものはあった、だけどここは私の求めている場所なのか

私の人生を豊かにさせてくれるのか

第一印象は悪かったけど、この写真を見るに……

可能性はある

「見極めるための時間が欲しい」

「そう…だったら……」

「今から写真を撮りにいくからあたしについてきな」

「そこでじっくり見極めればいい」

私はこの時、既に惹かれてしまっていたのかもしれない

彼女のミステリアスさに

~~~~~

「そういえば、まだお互い自己紹介してなかったですよね」

「自己紹介?ああ、そうね」

「あたしは「(むらさき) スミレ」」

「私は灰咲アオイっていいます」

「あっそ」

あからさまに興味の無さそうな反応をする

それより、何故さっきからずっと狭い路地を進んでいるのだろう

「あの…ところでどこに向かってるんですか?」

「「どこに向かってる」ってのは少し違うかな~」

「今はある人物を探している」

「ある人物?」

「「燃えている男」」

「え?」

「それが今探してる人物」

「燃えているってそれは……」

「待った」

彼女の口角が上がった

「見つけた」

目線の先にいたのは……

「!?」

ボォォォ……

先の言葉通り、身体が燃え上がっている男がいた

「あれは……」

服は燃えていない

しかし、服から露出している手や顔が燃え上がっている

着ている服は学校の制服だ

うちの学校ではないが、どこか別の高校と思われる

燃えていてよく見えないが顔もそれなりに若そうだ

そして、その男の周りには倒れている人達がいた

既に事後だった

何があったのかは分からない

けれど……

「あ…ああ……」

倒れている人達が火傷を負っているのを見るに

「あの男がやったのか……」

パシャ!

すぐ隣から光と音がした

「…………」

私はものすごく嫌な予感がした

けど、まさか……そんな訳……

そこまで馬鹿なミスをするはずがない

目線を彼女の方向に移す

パシャ!

光と音の正体は彼女だった

「な!?何してるんですか!!」

「何って…写真撮ってるんだよ、言わなかったっけ?」

「いやいや、そういうことじゃないですよ!!」

「なんでフラッシュと音出してるんですか!!」

「あー、消し方よく分からなくて」

「いやいやいや!普通調べるでしょ!!」

「おい、何やってんだよお前ら」

バレた……

「あ~気にせず続けてください」

「あれ、まさか今の撮っちゃった?」

「ちょ!早く逃げないと!」

「おいおいおい、逃す訳ねえじゃん」

ダッ!!

「ヤバいですよ!!こっち向かって来てます!!」

「ちょっとカメラ持ってて」

「え?」

ダッ!!

そういってスミレは燃えている男に駆けていった

「ちょ!!嘘でしょ!?」

「うおお!!」

ブオオッ!!

燃えている男が腕を振り下ろし、炎が噴き上がる

「!?」

しかし、スミレの姿がない

「ど、どこへいった!?」

「ここだよ」

ドゴオッ!!

「があッ!!」

燃えている男が突然、背後から殴られたかのように前へ倒れる

「ふっふっふ」

何も無かったはずの空間からスミレが姿を表す

「まさか、お前……」

「そう、あたしもあんたと同じ能力者」

「あたしは「透明人間」なの」

「ふざけやがって…」

「待ちな」

「もう、あんたの負け」

スミレがポケットに手を入れ、何かを握る

そしてそれを燃えている男に向ける

「け、拳銃!?」

「あたしの能力ってホントに便利でね~」

「暴力団の事務所だって簡単に潜入できるし」

「何より触れた物を透明にできるから」

「証拠も残らないんだよね~」

「ま、待ってくれ!!」

「おっと、動くんじゃないよ」

「あたしも今、本当はすごく怖いんだ」

「もしかしたら反撃されちゃうかもしれないって」

「だから少しでも変な動きを見せたら」

「思わず引き金引いちゃう……かも」

「わ、分かった!!」

「もう何もしない!!だから許してくれ!!」

「許す?何言ってんの?」

「あたしはただ写真を撮るだけ」

「別にあんたがやってたことが悪いことだとかそんなのはどうでもいいの」

「あたしはただ、このまま帰りたいだけ」

「だけどあんたが邪魔なの」

「もう用はないから、とっとと消えな」

「は、はい~!!」

男はそそくさと逃げていった

スミレが銃を透明にして懐へしまう

「さ、帰りましょ」

とんでもない人だ

ヤバい現場の写真をバレバレの状態で撮るし、拳銃を携帯してるし、平気で撃とうとするし

けど……

「ふふふ…!!」

「何笑ってんの?」

「スミレさんって凄く面白い!」

「……あっそ」

「それで結局どうすんの?」

「え?」

「入るの?入らないの?」

「…………」

この人と一緒ならきっと……

私が今まで無駄にしてきた時間を埋めるだけの誰も経験したことのないことが出来る

「面白そうだから入るわ、オカルト研究部」

「そ、んじゃよろしく」

「ええ、スミレさん」

「呼び捨てでいい……ネクタイの色一緒ってことは学年も一緒でしょ」

「そっか、じゃあ」

「よろしく、スミレ」

「ん」

驚かされることもあったけど……

私の楽しい日々が始まる気がする

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