乗務3 運転手:ヒル・バーン②
俺の名は『ヒル・バーン』。この道四十年のベテランではあるが、しがない『運転手』だ。
現在、ギルドからの『配車』で乗客であるサントーリ商会の人間を乗せ、行き先である『港湾都市ヨーハマ』へ向かって車を走らせているところである。
乗客はいつも利用している商会の上役ではなく、比較的若く見える。
勝手な予想だが、商会支店への『おつかい』かなにかだろう……知らんが…。
行き方は何故か遠回りである南周りのルートを指示された。
途中、何処かに寄るのかも知れんな…。
車は『中継都市スモールシダー』から『サウスラインロード』と呼ばれる道を低い音を鳴らして、どんどんと南下していく。
『タコメーター』の針は『60km』を指している。うむ、順調順調。
サウスラインロードは広い街道ではあるが、馬車や人も多い。運が悪いと国軍の行列と被ったりして、思い通りに進まないことがあるからな…。
そんなことを考えている内に、さらに大きな街道にぶつかる交差点に近付く。
この交差点を右に曲がれば『港湾都市ヨーハマ』まであとは一直線である。…のだが…
「あっ、運転手さん。このまま真っ直ぐで『リバーケープ』に寄って貰えますか?」
「リバーケープ………はい、畏まりました」
俺は乗客からの指示で交差点を真っ直ぐに車を走らせた。
脳内では「フッ…予想通り、何処かに寄るか…」とほくそ笑んでいた。
交差点では速度を落とし、左右から馬車や人、同業者の車が来ないか、しっかりと確認して、ゆっくりと通過する。
あとはリバーケープまでまた真っ直ぐである。
徐々にアクセルを踏み、速度を上げていく。
「リバーケープは東門と西門、どちらに?」
「あっ、東門の方にお願いします。ちょっとおつかいで支店に寄るので待っててもらって良いですか?」
正直なところ、待つのは面倒なので勘弁してもらいたいが…
「良いですよ」
こう言うしかあるまい。
その後、五分程でリバーケープの東門に到着。
乗客を一旦降ろし、その場でしばらく待つ。
「サントーリ商会の支店までは往復で十分くらい…用を済ませるのに五分とすると…十五分くらい待機か…」
そう呟き、背中に体重を預ける。
えっ?運転中も預けてるだろっ!って?ソコは気分の問題だから良いんだ。
『リバーケープ』…この街はスモールシダーよりも昔から中継都市として栄えいた。スモールシダーよりも海が近い…ということもあり船着き場としての一面もあるからだろう。
港湾都市ヨーハマよりは利用する船は少ない様だが、昔よりは人の流入が多くなっているのは確かである。
俺はすれ違うリバーケープの同業者に右手を上げ挨拶をしながら、乗客を待つ…。
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今回のネタ①:『サウス』=『南』
『ライン』=沿線→『線』
今回のネタ②:『リバー』=『川』
『ケープ』=『?』
まだ目的地に着かないスタイル。
次回もよろしくお願いします。




