乗務20 冒険者ギルド運輸部③
『#氾濫__スタンピード__#』の通達から数日…。冒険者ギルド運輸部は…
「いやぁ、本部の方は忙しそうだねぇ…」
「そうですね、部長…」
部長たる国土交通大神と旅客課課長の二人が『ズズズ…』とお茶を啜っている音が聞こえるほど暇だった…。
…といってもサボっていたワケではなく、前日までは国への報告やら下部組織への通達やら根回しやらで走り回っていたのだから…。
まあ、輸送課はギリギリまで忙しいのだが…。
そんなワケで大神と旅客課課長の二人は『#氾濫__スタンピード__#』当日までの残り数日、束の間の暇な時間をお茶してまったりと過ごしていた。
対照的に冒険者ギルド本部は大荒れである。
戦力の確保、物資の確保を始め、宿の手配、輸送手段の確保及び手配(コレは運輸部にほぼ丸投げに近いが…)、冒険者と騎士を纏めての戦術の確認やら配置の割り振り、そのスケジュール管理に加え、さらには…
「○○帝国のS級○○氏、到着とのことです!」
「○○共和国のA級パーティー○○○、参戦とのこと。明日、こちらに来るそうです!」
「○○連合の○○隊、到着。案内と宿の手配お願いします!」
「○○公国の第二公女が来る?んなもん知るかっ!政府で対応しとけっ!」
各国の有名冒険者や要人の受け入れやら手配やらで、職員たちも荒ぶっていた。
「荒れてるねぇ…」
「荒れてますねぇ…」
『ズズズ…』
運輸部に二人のお茶を啜る音が響く…。
~~~~~~~~~~~~~~~~
「そういえば…」
「ん?」
「部長は当日はどう動かれるんです?」
「そうだねぇ。今回の『#氾濫__スタンピード__#』は近場だからね。防衛大神と前々日に現地入りして、前日に二人で『結界』張って、当日は防衛大神の『祝福』を確認したら#運輸部__こっち__#に帰ってくるつもりなんだけど…」
『結界』…指定した範囲を『神力』による透明で強固な壁で覆う。
主な効果は強力な魔物を通さないことと、スキルや魔法による衝撃波や効果を防ぐこと。
弱い魔物は通してしまうのでランクの低い冒険者や新人騎士などが対応するように配置されている。
防衛大神の『祝福』とは、一時的ではあるものの『防衛』の名に相応しい防御特化の『#能力上昇__バフ__#』である。
物理防御力、魔法防御力の特大上昇に加え、状態異常無効化も#付与__エンチャント__#する、防御に於いて最高クラスの…いや、文字通り『神』クラスの
『#能力上昇__バフ__#』が『祝福』である。
「当日は当日で忙しいですからね。戻ってもらえると助かります」
「不測の事態…については防衛大神が現地に残ってくれるからね。僕は#運輸部__こっち__#で様子見だね」
『ズズズ…』
「じゃあ宿は手配しておきますね。…スモールシダーのいつもの宿で良いですか?」
「うん、よろしくね」
「防衛大神の方は…?」
「彼は彼で手配してるみたいだから大丈夫だって」
『ズズズ…』
「そうだ部長…」
「ん?」
「食事代の領収書なんですけど…」
「うん」
「『冒険者ギルド本部』じゃなくて『冒険者ギルド運輸部』で切ってくれって、ギルドマスターから…」
「ええぇ…」
「お願いしますね」
「分かった、気を付けるよ…」
「あっ、あと、夜のお店は領収書切れないですからね」
「………ダメかい?」
「ダメです」
『ズズズ…』
「「………お茶が美味い」」
今日の運輸部は平和だった。
「「手伝ってくれませんかねっ!!」」
運輸部副部長と運送課課長はまだまだ忙しかった…。
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
今回のネタ①:「ダメかい?」=「ダメです」
閑話的な何か…。
次回もよろしくお願いします。




