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乗務19 運転手:マサノリ・アンドウ④


僕の名前は『マサノリ・アンドウ』。

漢字で書くと『安藤 正紀』なので某鳥型に変形するロボットのパイロットと名前は似ているけれど、完全に別人の『職業:運転手』だ。

決して『職業:パイロット』ではない。


『異世界タクシー』の運転手としてデビューして少し馴れてきた頃だったのに、スモールシダーの営業所長からの「来週『#氾濫__スタンピード__#』あるから」宣言。

点呼で一緒に並んでいる他の運転手たちからどよめきはあったものの、それも直ぐに収まっていた。


…が僕はというと…


「(#氾濫__スタンピード__#ってアレでしょっ?モンスターがいっぱい出てきたりするやつ。…えっ?ヤバくないっ?僕、チートとかないよ?無双出来ないよ?…えっ?ヤバくないっ?)」


内心、超焦っていた。


しかし、そんな僕を他所に、所長からの追撃。


「………………スモールシダー北部だ…」


………え"っ!?


「あっ、キーン君」

「はい?」


「君は当日は戦闘班配属になるみたいだから…」

「はい………はっ!?いや、ちょっ…」


カークさんが何か言われているようだけど、僕はそれどころではなかった。

このままだと『スモールシダー』がヤバいんじゃないか?僕は戦えないし…。一体どうしたら…。


ぐるぐると頭の中で考えてはみても、良い案が浮かぶでもなく、そのまま点呼は終わり営業所を出た。


しかし…


そういえば他の#運転手__みんな__#は、ちょっとどよめいた程度で全然平気そうだったな…。


「あっ、ヒルさん!」


僕は日勤(朝番)のヒル・バーンさんがいたので呼び止める。

ちなみに僕がこの異世界に落ちた時に乗せてくれた運転手さんがヒルさんだった。


「おう坊主、どした?」

「いやぁ、『#氾濫__スタンピード__#』って聞いたわりに、みんな普通だなって…」


「あぁ、坊主は初めてだもんなぁ」

「です」


「俺は運転手になってから『#氾濫__スタンピード__#』は九、十回くらい発生してるな。…で参加するのは三、四回くらいだったか?」

「そんなにっ!?」


「でもまあ基本的に俺たちが戦うことは#無__ね__#ぇよ」

「…そうなんですか?」


「そりゃそうさ、俺たちは戦闘員じゃなくて『運転手』だからな」

「…まあ、そうですね」


「俺たちの仕事は人員の輸送だろ?そのまんまさ」

「…そのまま?」


「ああ、そのまんまだ。時期になるとスモールシダーに戦闘員…冒険者やら騎士様やら各地から大量にやってくる。俺たちはその人員を現場までピストン輸送だ。忙しいぞ」

「…なるほど、そういう…」


「ま、危険が無いワケじゃあないが車に乗ってる分には安全だし、何より特別手当もでるからな。当欠(当日欠勤)しないように体調整えねえとな」


『ニカッ』と笑うヒルさんに安心感を覚え、僕も少しは落ち着きを取り戻す。


最悪、当欠も考えたけれど、ヒルさんの話だと『#氾濫__スタンピード__#』二、三回に一回は参戦しているみたいだから、これからのことを考えるのなら経験しておいた方が良いだろう。

…しかし怖い。


いや…。


怖いのは『知らない』からだ。知っても怖いかもしれないけれど、何も知らないよりはマシだろう。

明日、冒険者ギルドに行って調べてみようか…。僕はそう思い、今日の仕事を終わらせた。


そういえばカークさんはあの後、所長室に行っていたけれど大丈夫だったんだろうか…?



翌日、僕は冒険者ギルド:スモールシダー支部に向かう。

ギルド内も既に情報が出ているのだろう、『#氾濫__スタンピード__#』の話題で持ちきりな感じだった。


A級、B級、C級冒険者などはパーティー毎に、D級以下の冒険者は纏まってギルド職員を囲んで、と何やら打ち合わせをしているようだ。


僕はというと、#氾濫__スタンピード__#の資料を見せてもらうべく受付へと向かう。

冒険者たちは依頼より打ち合わせやらなんやらで、今日は受付まで並ぶことなく進んだ。


受付にいるのは、金髪碧眼、天使の微笑みを見せてくれたあの美人エルフさん。


「あっ、アンドウさん、おはようございます」


『ニコリ』と微笑むその美しさにうっかり惚れてしまいそうになるが、僕は平静を装い…


「おはようございます」


努めて普通に返す。


「今日はどのようなご用件で?」


『コテン』と首を傾げ聞いてくるその姿に、うっかり惚れて…げふんげふん。


「『#氾濫__スタンピード__#』がどんなモノか調べようと思ったんですけど…」

「ああ!アンドウさん『運転手』ですもんね。今度の『#氾濫__スタンピード__#』、参加されるんですか?」

「はい…」


「私もギルド職員として当日は現地に行くんですよ。もしかしたらお会いできるかもしれませんね」


『パチン』と手を叩き、『ニコリ』としながらそう言う彼女にうっかり惚れげふんげふん…。


「そうですね」


僕は『トゥンク』とした気持ちを抑え、そう応える。


「当日は運転手さんは忙しく往復しますもんね。何回も会えるかもしれないですね」


僕は「イケるんちゃうん?コレ、イケるんちゃうんかっ!?」と騒ぎ始めた脳内の似非関西人の小さい僕を抑え込み、あくまでも平静を装う。


「じゃあ当日に…。会えたら僕も嬉しいです。それじゃ…」


僕は片手を挙げて『くるり』と反転。受付から離れ、冒険者ギルドを出た。


「(よし!当日は頑張って仕事するか!)」


『ぐっ』と拳を握り、気合いを入れる。


僕の名前は『マサノリ・アンドウ』。

冒険者ギルドに行った目的を思い出したのは『旅客課』の寮に帰ってからだった『職業:運転手』の日本人だ。



〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓



今回のネタ①:鳥型に変形=「サイ○ードチェンジッ!!」


今回のネタ②:ピストン輸送=行ったり来たり。


今回のネタ③:エルフさん=ハニトラ(無自覚)要因。


次回もよろしくお願いします。


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