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乗務18 運転手:マサノリ・アンドウ③


僕の名前は『マサノリ・アンドウ』。

漢字だと『安藤 正紀』と書くのだが、決して某ロボットのパイロットではないし、もちろんMAP兵器も使えない。

数ヶ月前に異世界ウェルツムンドのストランド王国に落ちてきた日本人だ。


冒険者ギルド:スモールシダー支部の受付の美人エルフさんの天使のような微笑みという策略(※策略ではない)に見事に嵌められた(※勝手に嵌まった)僕は、『職業:運転手』に決めた。


こちらの世界では誰もが運転出来るワケではなく、運転出来るのは『職業:運転手』持ちだけなので、日本とは違い『自動車教習所』などは当然存在していなかった。

僕は年齢は十八歳にはなっていたけれど、卒業してから…と思っていたので免許は持っていなかった。


一先ずは仮配属、という形でスモールシダー営業所に行き、研修期間という#体__てい__#でお給料を貰いながら運転の練習と先輩運転手の車に同乗しつつ仕事を覚えたり…と過ごす。


しかし、この『異世界タクシー』……まさか特殊な『召喚魔法』の一種だとは思わなかった。


先輩に召喚術式を教えられて、自分の前にあっさりとタクシーを召喚出来たことにはかなりビックリしたものである。


ちなみに『職業:運転手』に決めた時にギルドの小神殿で登録すると、#固有__ユニーク__#スキル欄に『召喚魔法(特殊)レベル1』が表示されていた。

…召喚魔法なのに魔法スキルとは扱いが違うんだ…と思ったのは内緒である。


…で、タクシーの外観こそなんとなくイメージは出来ていたけれど、運転席周りなんてほとんど分からないのに、召喚したタクシーは内側もしっかりと形になっていた。

魔法…しゅごい。


そんなこんなで利用者の多い午前中は先輩の車に同乗して仕事を見る、落ち着いてくる午後は営業所近くの広い空き地で運転の練習…と約一ヶ月の研修期間を終えた。


この研修期間で覚えた事は…


・召喚術式。

当然、送還術式も教えてもらったのだが、送還て何処に還っているのだろうか…。


・洗車やガソリン、消耗品など。

ガソリンは自身のMP(もちろんマジックポイント。『職業:運転手』持ちは(先天的なモノを含めて)MP量が多いらしい)を消費しているので給油いらず。燃費は大分良いらしく、先輩たちに聞いても魔力枯渇になったことはないとのこと。

…というワケで給油要らずである。


汚れや消耗品(オイルやランプ)などは召喚する度に新車同様になるらしく、気にしたことがないらしい。魔法…しゅごい。


・車内機器の使用方法。

タクシーの運転席ってこうなっているのかぁ…と思うほど、思ったよりはメカメカしかった。教えてはもらったものの、これは実際に使っていかないと分からないな…と思った。

ちなみにコレの動力はバッテリーらしいのだが、バッテリー自体には運転手の魔力が変換されて…らしい。魔法…しゅごい。


・事務作業

ほとんど無いようなモノなのだけれど、納金時などに少々。

計算機があると楽なんだけれどな…と思ったらあった。もちろん魔力で作動する魔導具である。


・経路

要は『道』なのだけれど、地元どころか異世界出身なんだから全然分からないよっ!#経路__コレ__#が一番問題だなぁ…と思いながら、近隣の地図を見せてもらうと大きな通りは僕の地元とよく似ていた。

…というか、このストランド王国の地図を見ると日本列島にそっくりであるのにはビックリした。

一体どういうことだろうか…。


・交通ルール

あっ、こちらの交通ルールなども覚えたのだけれど、日本ほど細かいルールはなかった。…というか信号も標識もないのである。

強いて言えば交差点の一時停止くらいで、あとは歩行者や馬車優先…くらい。大丈夫か、そんなんで…?と思ったけれど、日本と比べると圧倒的に人口が少ないので、ほぼ問題なかった。


ちなみにスピードは最高60キロメートルまでしか出ないように車本体が制限が掛けられていた。

さらにちなみに、速度や距離の単位は日本準拠である。

#日本準拠__コレ__#は『最初の運転手』から教えられたモノが基準だそうなので、『最初の運転手』が日本人だったのは間違いないと思う。

僕としては馴染み深いので特に気には留めなかったけど。


・免許証

免許証があるわけではないので試験もなし。

試験がなくて楽で良かったとホッとしたのは内緒である。…だって試験受けるの面倒だし…。


まあ、そんなこんなで(二回目)研修期間を終え、僕はこの異世界で一人立ち、無事に手に職を得て生活基盤を整えていった。


まさか高校生のうちから働くことになるとは思わなかったけれど、運転するのも嫌いではないし、ストレスに思うこともあまりない。

僕は隔日勤務を選んだので休みも多いし、お給料もまあまあ貰っている。


突然この異世界に落とされ、家族や友達と離れてしまったのは寂しいけれど、なんとか上手くはやっていけそうだ。


そんな風にポジティブになっていた僕に、初めてのピンチが訪れる。


運転・道・仕事に同じ営業所の運転手の人の名前など、色々覚えてきて馴れてきたある日、出勤してスモールシダー営業所での点呼が始まると営業所長から通達がされる。


「えぇ、来週の頭頃になりますが四年に一度の『#氾濫__スタンピード__#』が起こるみたいです」


『ザワリ…』

所長とカウンターを挟んで並んでいる運転手側がどよめく。

ラノベなどは嗜む程度の僕だが、#氾濫__スタンピード__#というのは確か…モンスターの大量発生…とかじゃなかったっけか…?


「所長…今回は…?」


運転手の一人が質問する。所長は少し間を空けてから応えた…。


「………………スモールシダー北部だ…」






僕の名前は『マサノリ・アンドウ』。

四年に一度…と聞いて、「W杯かよっ!?」と心の中でツッコミを入れたのは内緒にしている、無事に運転手になった日本人だ。



〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓



今回のネタ①:MAP兵器=どの作品でも有能。


今回のネタ②:魔法…しゅごい=魔法…しゅごい。


今回のネタ③:信号や標識=タクシーか馬車程度しかないこと、城壁内にタクシーは入れないことになっているので、多分無いでしょう。


今回のネタ④:W杯かよっ!?=作者はスポーツの祭典よりW杯派です。


次回もよろしくお願いします。


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