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乗務15 冒険者ギルド運輸部②


王都にある冒険者ギルド本部の廊下をやや早足で歩く二人の男。

一人は『コッコッ』と踵を鳴らし、もう一人は一歩ごとに『ガシャガシャ』と音を響かせる。


『ガチャリ』とドアを開け、『運輸部』に入ってきたのは冒険者ギルドのギルドマスターと王都騎士団騎士団長のエムリス・"ナイト"・ストランディア。


二人は迷わず運輸部の奥にいた一人の机の前まで行き、ギルドマスターが口を開く。


「部長、お疲れ様です」

「うん、お疲れ様、イゴール君。」


本来であれば『冒険者ギルド:ギルドマスター』であるイゴールの方が役職的には上になるのだが、運輸部のトップは別………いや例外と言っても良いのかもしれない。

『運輸部長:国土交通大神』………そう、『神』である。


そして、その神はというと…


「エムリス君は久しぶりだね。元気だった?」


微妙に軽かった…。



~~~~~~~~~~~~~~~~



場所を移し、冒険者ギルド本部の小会議室にギルドマスター:イゴール、騎士団長エムリス、国土交通大神と運輸部副部長の四人が机を囲んでいた。


「そっかぁ、もうそんな時期かぁ…四年経つの早いねぇ」


大神が呟く。


大神の発した『時期』…#ソレ__・__#が意味するものは…


『#氾濫__スタンピード__#』


特定の場所で魔物や魔獣が大量発生し、大きな都市に大挙して押し寄せてくる。それも四年に一度の頻度で…である。


しかし四年に一度も発生しているということは逆にこちらも馴れているということでもある。

かつては大きな被害を出していた#氾濫__スタンピード__#も、今ではその察知も対策も概ね万全である。


『概ね』というのは、稀に魔物の群れに竜種が混じっていたりするため、多少の被害が出てしまうことがあり、その辺りの対策は現在も模索中といったところか。


「今回の#氾濫__スタンピード__#の場所は何処なの?」

「今回はスモールシダー北側ですね」

「北側というと……トードゥロの闘技場か」


四年に一度、#氾濫__スタンピード__#で狙われる都市はランダムである。…だが発生時、事前に急激に魔力が集束し『門』が現れる場所が在ることを確認。


『門』が出現する位置は固定されており、その場所はストランド王国の各地に存在している…が、#氾濫__スタンピード__#が発生する場所はその内の一ヶ所である。

同時に複数ヵ所、発生したことは今のところない。


王国は各地に点在する発生場所を特定し、ソコに闘技場や競技場などを建設。

普段はイベント会場として使用されているが、コレが最前線の砦の役目を果たす。


あとはこの闘技場・競技場の魔力を観測することで、ランダムで発生する#氾濫__スタンピード__#の場所の特定を可能にしたのである。


「イゴール君、発生日の特定は?」

「来週の頭頃…ですかね。週末にはもう少し詳しくわかるかと思います」

「ん、了解。副部長、いつも通り通達宜しくね」

「はい」


「物資の輸送については商業ギルドから改めて話がありますので、そちらの対応もお願いします」

「ん、そちらは輸送課の課長に伝えておくよ」


物資…#回復薬__ポーション__#類や予備の武器・防具、野営道具などは輸送課が担当。


「人員についてもいつも通りですが一応…。前日、当日のみ有効のチケットを参戦する冒険者に配布しますので通達をお願いします。騎士団についてはエムリスから」

「騎士団からは第一、第二騎士団と港湾都市ヨーハマの騎士団も応援に来る予定です。私が率いる王都騎士団は不測の事態に備えるため、今週から移動、現地入りの予定になっています」


一部は王都に残りますが…と付け加える。王都を守護する王都騎士団が王都を空けるワケにもいかないので当たり前ではある。

ちなみに第三王子であるドライは居残り組である。


「了解。チケットはまだある?」

「いえ、残り少ないのでいただければ…と」

「ん、副部長、チケットの用意もお願いね。帰りにエムリス君に渡せるように」

「はい、では用意させますのでちょっと失礼します」


そう言い、副部長は席を立ち小会議室から出る。『パタパタ』と小走りで運輸部に向かったようである。


「それから大神に一つお願いが…」

「ん?」


そう騎士団長エムリスが切り出す。


「スモールシダーの運転手のカーク・キーンなのですが…」

「うん」


「元々王都騎士団出身で私の部下…副団長だった男でS級冒険者でもある男なのですが、今回の#氾濫__スタンピード__#では運転手としてではなく戦力として回していただけないかと…」

「うん?私は構わないけれど…イゴール君はソレでも大丈夫なの?」


「はい、カーク・キーンはS級冒険者ですし、戦力としてならこれ以上ない人員かと…」

「そう…う~ん、じゃあ良いんじゃないかな」

「「ありがとうございます」」


「「よし、言質とった」」と喜ぶ二人の男。その顔はどことなく悪い笑みを浮かべているようにも見えなくもないが…。


こうして本人のいないところで#氾濫__スタンピード__#参戦が決定していた。

なにそれこわい。


ちなみにカーク・キーン本人にこの件が伝えられた翌日、カーク・キーンは冒険者ギルド本部に突撃。

ギルドマスターから『えすてぃえふ』でギブアップをとっていたのが目撃される。


さらにその後…王都騎士団の宿舎に突撃。


エムリスが仕事から帰ってきたところを捕獲。

『投げ放しじゃーまん』三連発からの『たいがーすーぷれっくす』で騎士団長が沈められたのが目撃されたのは言うまでもない。



〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓



今回のネタ①:『イゴール君』=某長官から。


今回のネタ②:『四年に一度』=一体何処のスポーツの祭典なんだ。


今回のネタ③:『居残り組』=王子様はさすがに連れていけない。


今回のネタ④:『えすてぃえふ』=ステップオーバートゥフェイスロック。


今回のネタ⑤:『じゃーまん』×3、『たいがーすーぷれっくす』=怒った。


次回もよろしくお願いします。


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