乗務14 スモールシダー営業所①
旅客課の各営業所では決まった時間に『運行管理者』による『点呼』が行われる。
時間は朝五時から、六時、七時、八時、九時、十七時、十八時、十九時、二十時の一日に九回。
それぞれの時間に出勤してくる運転手に合わせて行われ、その日の連絡事項や注意事項、前日の出来事などが通達される。
また運転手は出勤時に魔導具『アルコール検知器』に息を吐き、身体にアルコールが残っていないかを確認。
アルコールが残っていた場合、その日の乗務は停止となり仕事はさせずに帰すことになる。
ちなみに運転手は固定給なので、乗務停止時は罰金として給金が差し引かれるか、休日に乗務をするかを選択してもらう方式をとっている。
アルコールチェックに合わせて運転手はギルドカードを提出。
運行管理者はギルドカードを読み取る魔導具に通し、記録されている『レベル』『スキル』『更新日』を確認して運転手に戻す。
「あっ、ヒルさん、来月更新ですね」
「おっ?ホント?」
「更新日、過ぎないように気を付けてくださいね」
「りょ~うかい」
「はい、カード戻しますね」
「おう」
時間になり営業所入口直ぐのカウンター前に五時出勤の運転手が並び『点呼』が開始される。
「おはようございます」
「「「おはようございます」」」
「○月○日、金の日、五時の点呼を始めます」
「~~~というようなことがあったそうなので皆さんも気を付けてください」
「○○街道の整備が来週から始まるとのことです。来週始まったら再度通達しますが頭に留めておいてください」
「今日は昼過ぎから天気が悪くなりそうです。走行時は水跳ねに気を付けて走行するようにお願いします」
「では今日も気を付けて、行ってらっしゃい」
運行管理者が一通り、連絡事項、注意事項を通達してから『ギルドカード』とは別の『乗務員証』『乗務員カード』と呼ばれている物を順番に渡し、点呼終了である。
『乗務員証』は『スーパーサイン』の裏に差し込む、運転手の顔写真と名前、所属が記載されている。
乗務中はコレを差し込んでいなければならず、記載面は車内側でなければいけない。
『乗務員カード』は車内にある『メーター』に差し込み、当日の業務を記録する物である。
記録内容は乗務時間(『乗務員カード』を差し込んでいる時間)、賃走回数、空車回数、迎車回数、乗車人数、賃走一回ごとの距離及び料金、決済方法、賃走時と空車時の最高速度、急発進・急減速の回数、休憩時間、総売上、売掛、納金額……と記録される事項は多い。
ちなみにこのカードを差し込まないで走行するのは違法である。
五時出勤の運転手を送り出すと、入れ替わるように夜番の運転手が帰ってくる。
「おつかれ~」
「お疲れ様です」
運転手は帰ってきて『乗務員カード』を専用の魔導具に差し込み、別の魔導具から印刷された『業務日報』と表された当日の業務内容が記録された紙を受け取る。
カードを抜き取り、アルコールチェックを再び行い、日報の金額を確認。
「お願いしまぁす」
日報と乗務員証、乗務員カードを運行管理者に渡し、日報の納金額を専用の魔導具へ投入。
運行管理者は日報の内容を確認。
「○○さん、ちょっと休憩足りてないですね。ちゃんと休憩とってくださいね」
「あぁ、すいません、わかりました」
最後に納金額に間違い、差異がないかを確認して…
「はい、オーケーです。お疲れ様でした」
「おつかれさまぁ」
運転手一人の納金業務はコレで終わりである。
次に運行管理者は運転手の『出庫』『入庫』の時間を所定の書類に記入。
その次に業務日報を見ながら、今度はまた別の魔導具に決められた内容を入力し始める。
「○○さん、出庫十六時五十六分、入庫五時八分、休憩四十八分…と」
続けて売掛内容を入力して、納金額との違いがないかを再度確認して完了。
運行管理者は『交番表』と呼ばれる出勤者の木札が掛かっている表を見て…
「あと数人、夜番が残ってるな…」
呟きながら次の仕事に取り掛かった。
旅客課の一日の売り上げの締めは、前日の夜番が全員が帰ってきてからである。
次の六時の点呼の準備をしつつ…
「今のうちに帰ってきてくれないかなぁ…」
運行管理者はそう呟きながら準備を進める。
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今回のネタ①:『点呼』の時間。タクシー会社による…多分。
今回のネタ②:『アルコールチェック』=厳しい。(当たり前である)
今回のネタ③:『ギルドカード』=免許証代わり。
今回のネタ④:『乗務員証』『乗務員カード』=だいたい本当。
タクシーネタ満載。名称など違うところはあるかもしれないけれど、だいたい本当。………多分。
次回もよろしくお願いします。




