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乗務12 運転手:カーク・キーン⑥


俺の名は『カーク・キーン』

絶賛ぶっちギレ中のどうやって相手を潰そうか考えている、しがない『職業:運転手』だ。

いや、運転手ぜんぜん関係ないな…。


ソレはソレとしてぶっちギレ中である。


「おい、ザークォ…知らないようだから教えておいてやる…」

「……なんだと?」


「俺は騎士団に入る前は冒険者だったんだ…。そして当時の俺のランクは『S級』…」

「なっ!?」


「知っているか…?S級冒険者はこの国では『侯爵』相当の地位に当たる…そして俺は騎士団は抜けたが未だ冒険者の資格は有しているんだが…。さて………お前は何処の誰だったかなぁ…」

「くっ…」


この国では高ランクの冒険者はそれなりの地位が保証される。A級で伯爵相当、SS級に至っては公爵相当である。

まあ、SS級の冒険者なんて、この国には存在していないが…。


それでもS級の冒険者ならば数人はいるし、国の上層部ならソレも把握している。…が、どうやらザークォは…というより親であるコモーノ伯爵は上層部には位置していないのだろう…。

そして、知らないからと言って許されるかどうかは、また別の話しである。


「不敬罪だ何だと、随分ほざいてくれていたな…。」


俺は口角を上げつつも低い声でザークォに語りかける…。


「伯爵家当主でもないお前が、侯爵家相当の地位を持つ俺に対しての先の件は、どう落とし前をつけてくれるんだろうなぁ…」

「うぐっ…」


冷や汗を流し、呻くザークォ。…だが、まだまだ追い詰める。


「爵位剥奪…までは無いか…。降爵とお前は廃着くらいが妥当なせんか…?いや、俺の家族云々とも言っていたな…」


俺が一言発する度にビクつくザークォ。頭の中ではぐるぐると色々考えているのだろうが、俺は怒っているのでまだまだ止めない。


「…とすると先のじゃ足りないか?財産没収のうえ廃爵。…で、お前は打ち首…かなぁ」


ザークォの顔は青を通り越して土色のように見える。もう精神的にも限界かな?


観察しているとザークォの眼から光は消え失せ、何処か宙を見ている。

そして薄く、暗い笑い声…


「フフ………フフフフフ…」


ゆらり………身体を揺らし、口元に薄い笑みを浮かべ話し始める…その光の無い眼でこちらを向きながら…。

いや、怖いんだけど…。


「貴様がS級冒険者?…一体どんな不正を行ったんだ…。そうだ、不正でもしない限り、貴様がS級になどなれるはずがない…」


いやいや、どうやったら不正してS級になれるんだよ?俺が聞きたいわ。

まあ、そんな言葉が出てくるあたり、事実を受け入れるより、ワケの分からんプライドが勝ったんだろう…。


「不正で成り上がった冒険者を私が倒せば…それがS級ともなれば、大きな手柄だ…」


ぶつぶつと呟くザークォ。どうやらザークォの中では都合の良い#成功する未来__サクセスストーリー__#が展開中らしい。


「…フフフ、カーク・キーン…。不正でS級冒険者に成り上がり、さらには王都騎士団の副団長にまで卑怯な策を用いて成り上がった貴様は私がここで討つっ!そう、これは天罰…いや、天誅であるっ!」


おおぅ…、いよいよ言動がおかしい…。アレだけのことで簡単にぶっ壊れたか…。なんて残念な#精神力__メンタル__#の持ち主なんだ…。


だけど…


今、怒っているのは俺の方なんだよ…。


「もう黙れ七光りのクソボンボン…。お前に正義なんざ何処にもない。退場するんだよ、お前は…今っ!ここでぇっ!!」


その言葉が引き金になったか…ザークォは身体強化の魔法を発動。一気に俺との距離を詰めるべく、駆け出す。


「カァーク・キィーーーンッ!!」


身体強化をしての本気の刺突が俺の心臓の位置を穿つべく放たれた。

訓練用の模擬剣とはいえ、喰らえば死ぬであろうその一撃を俺は…


「ふんっ!!」

『ズドンッ!!』


迫りくるザークォの左手側に避けつつ、カウンターで俺の左肘内側をザークォの首元に巻き付けるようにして振り抜いた。


ザークォはその場で一回転し、白眼を剥いて地面に横たわる。


かつて異世界から伝わった『ぷろれす』という格闘技の中の必殺技『うえすたんらりあっと』である。


俺は白眼を剥いて横たわるザークォを見下ろし…




「家族に危害を加えようとしやがって絶対許さん!あとお前から受けた数々の嫌がらせ…忘れてないからなっ!!」


『ダンッダンッ!!』と踏み踏みと追い打ちをかける。

気絶しているザークォに言っても聞こえていないだろうが…。


このあと、騎士団内のザークォの取りまき共が止めに入ってきたが『えるぼー』で全員なぎ倒した。最後の一人には『えるぼー三連打からのろーりんぐえるぼー』で沈めたのは言うまでもない。


さらにこのあと、追撃!と言わんばかりにザークォを踏みつけていたのだが、さすがにやり過ぎ…とエムリスにその他騎士団員とドライ殿下が止めに入ってきたので、ここで俺は漸く攻撃を止める。

勿論エムリスにだけはかち上げ式の『えるぼー』をお見舞いしてやったのは言うまでもない。


エムリスは顎を擦りながら「えっ俺?何でっ!?」と言うような表情をしていたが、お前は許さん。


俺の名は『カーク・キーン』。

元騎士団員で副団長だった、しがない『職業:運転手』だ。



〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓



今回のネタ①:「今っ!ここでぇっ!!」=途中で主役を変えられてしまった運命の人。

今回のネタ②:『うえすたんらりあっと』=さすがに『ウィー』は伝わってないらしい。

今回のネタ③:『えるぼー』=鼻の頭の汗を『ぴっぴっ』と払うのも伝わってないらしい。


次回はタクシーの話が少しは入るはず…。

次回もよろしくお願いします。


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