乗務10 運転手:カーク・キーン④
"俺"の名は『カーク・キーン』。
先日まで騎士団に所属していた、今はしがない『職業:運転手』なんだが…。
「………………どうしてこうなった…」
スモールシダーから第三王子殿下を乗せ、王都騎士団宿舎に到着。
殿下の降車時に"現"副団長ザークォ・フォン・コモーノが出現。
騎士団長エムリス・"ナイト"・ストランディア出現。
(New)俺とザークォが宿舎裏の訓練場で戦闘開始の合図待ち。←今ここ
いやいや、『今ここ』とか『New』とかはいらないのだが…。
話は騎士団長の登場まで遡る。
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「久しぶりだなカーク…」
「ご無沙汰しております」
"俺"を見ても変わった反応をしない騎士団長。ソレを見て"俺"は「この人は変わらないな…」と安心する。
「ドライを送ってきてくれたのか…」
「はい」
殿下をチラリと見て、何故ここに"俺"がいるのかも察したのだろう。
そして…
「…で、何を騒いでいた、ザークォ…」
ほんの少しの威圧を込めて、ザークォに問う。
「だ、だだだ、団長殿…それはですね………そう!久しぶり元副団長殿の顔を見ましたので、剣でも振っていかれてはどうかと提案していたのです」
汗をかきつつ、身振り手振りで話すザークォ。まぁ、間違ったことは言っていない。
「だがカークは仕事中だろう…。それに今は騎士団でもないのだ。何故そんな提案をした」
「うぐぅ…いや、それは…アレがアレで…」
ごもっともな意見がザークォに投げられ、先ほどよりもアタフタとし始めるザークォ。
何だよ?アレがアレでって…。
「ドライ、お前も王家の男だ。もっと毅然としていろ」
「し、しかし叔父上…」
第三王子殿下の名は『ドライ・フォン・ストランド』、騎士団長は『エムリス・"ナイト"・ストランディア』。
ストランディア家はストランド王族の血を引いた王位継承権を有する公爵家である。
つまり二人は血縁であるのだが…。
騎士団長エムリスは騎士団長任命時に王族から抜け、騎士として一生を迎える道を選んだ。
イコール現在は貴族ではないのだが、その影響力は根強く残っている。
そして"俺"はそんな騎士団長…いやエムリスと戦友であり好敵手であり、そして親友でもある。
つまり…
「(……アイツ、ちょっと楽しんでないか?)」
その#無表情__ポーカーフェイス__#からは読みきれないが、多分間違いないだろう…。
エムリスは#コレ__・__#を切っ掛けにザークォを…いや、ザークォを利用してコモーノ伯爵を…、そして貴族派を追い落とす気だ…。
そんなことを思考していると『バチッ』とエムリスと視線が合う。
「………………(協力しろカーク…)」
「………………」
野郎っ、分からないように小さく笑って、ウインクまでしやがったっ!
もういい歳なのにウインクがよく似合いますねっ!この野郎っ!
「ふん…まあ良いだろう…。カーク!宿舎裏でザークォ副団長の相手をしてやってくれ。旅客課の方には私から連絡をしておく」
「………………(ちょっとぉっ!?俺まだ了承してないでしょっ!?)」
「………………(やるよな…?)」
「………………(お前…あとで覚えておけよな…)……了解しました…」
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こうして俺は、騎士団長エムリスに見事に担ぎ出され、宿舎裏の訓練場でザークォと対峙するに至る。
先ほどまでの狼狽えっぷりは何処にいったのか、ザークォは刃を潰した訓練用の剣を肩に乗せ、ニヤニヤと厭らしい笑みを浮かべる。
そしてエムリスとドライ殿下…。
………あと大勢の騎士たちが俺とザークォを囲んでいた…。
エムリス…、お前が集めたな?
宿舎入り口から裏に来るまでの間にどうやって集めたんだ…まったく…。
集まっている騎士たちをパッと見ると、俺の知っている顔が多い…いや、知っている顔の中に知らない顔も混じっている、が正しいか。
つまり…
「………………(ほとんど俺の知っている奴らばかりじゃないか…。おい、そこ、賭けを始めるんじゃない!止めさせろエムリス………胴元お前かよっ!?)」
俺はこの騒動のあと、エムリスを殴ることを決めた…。
俺の名は『カーク・キーン』。
このあと、騎士団長を殴る男………違う。今はしがない『職業:運転手』だ。
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今回のネタはなし。
タクシー関係ないし、話がまったく進まない。
殿下は名前決まりました。
次回もよろしくお願いします。




