乗務1 プロローグ 冒険者ギルド運輸部旅客課
『冒険者ギルド』
それは世界中に存在し、かつては各国で運営されていた組織。
現在は民営化されてはいるものの、公営時との業務に差はほとんどない。
国、都市、商会、個人問わず、受けた依頼を『冒険者』と呼ばれる人たちに回す斡旋業務が主な仕事である。
そんな冒険者ギルドに一際変わった業務を請け負う部署が存在する。
『運輸部』
その部署はさらに下に組織される『運送課』『旅客課』の二部門を統括・管理する部署であり、ここでの業務は各支店に存在する『運送課』『旅客課』の業績の集約や人員の管理、大口の依頼などの振り分けを行っている。
また『冒険者ギルド運輸部』として冒険者ギルドの管轄下に位置付けられてはいるものの、業務はほとんど別物であるため、組織としてはほぼ独立している様な感じである。
『運送課』
運輸部の下部組織で、主な業務は荷馬車による運送業務である。
運送課に関して言えば、馬車・馬・御者の管理、依頼の振り分け、スケジュール管理などが主業務となり、冒険者ギルド組織下として、冒険者との連携をスムーズに行い、護衛などの管理も行っている。
但し、安全性などが非常に高い分、料金が割高であり、個人の商人や小さい商会などは運送課を利用せずに冒険者ギルドの、『敢えて呼称するなら『冒険課』』から冒険者に直接依頼を出し、利用している人たちもいる。
『旅客課』
そして『旅客課』である。
冒険者ギルド各支店に存在する旅客課では、特殊な魔道具を使用し、そして特殊な人員の管理をしている。
主な業務は依頼の受付と『配車システム』と呼ばれている魔道具を使用した特殊な人員への『配車』斡旋業務。
特殊過ぎて利用者が少ないのでは?…と思わないでもないが、これがどうして…。意外と利用者は多い様である。
そして特殊な人員…。
『運転手』と呼ばれる人たち…。
何が特殊なのか…?
彼ら彼女ら、『職業:運転手』は特殊な『召喚魔法』の使い手である。
通常の召喚魔法ならば魔獣や精霊などを喚ぶのがこの世界では一般的ではあるが、『職業:運転手』は全く違うモノを呼び出す。
ソレは『自動車』…。
黒一色のモノや白一色のモノもあれば、やたらとカラフルなモノまであるのだが…。
何故か昔から存在するソレは何時からかこう呼ばれていた…。
『異世界タクシー』と…。
ここは地球によく似た『剣』と『魔法』の世界『ウェルツムンド』…。
そこにいくつか存在する大陸のうちの一つ『コンティネント大陸』。
そのコンティネント大陸の東端から海を挟み位置する『日本』によく似た形の列島『ストランド王国』に、何故か走り回っている『異世界タクシー』と呼ばれるモノ。
これは、そんな『異世界タクシー』と呼ばれるモノに携わり、利用する人たちのお話。
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プロローグ…と言うより、ほぼ説明回。
しばらくは説明を挟んだお話が多くなりそうですが、よろしければお付き合い願います。