脱炭素用コーティング技術
「A先輩、本当にこのコーティング技術が使えますかね~」
Bは有機化合物でコーティングしたマグロのサクを高く掲げて言った。
Aはニヤリとして言った。
「絶対に必要になる。
脱炭素社会になったら、ドライアイスで冷やせないだろう」
ご存知のようにドライアイスはCO2の塊だ。
当然、脱炭素となればドライアイスでの冷却はできない。
それでAは、物質をコーティングして腐敗を防ぐことで、
脱炭素社会に貢献しようと思った。
というのはほぼウソ、Aはドライアイスが大嫌いだ。
それはスーパーでのある一幕。
レジを終えて、レジ袋に買ったものを詰めていたら、
おばさんらに舌打ちされたのだ。
いかにも環境に配慮していないというように。
でも、意識高い系の彼女らが無料ドライアイスをもらっていたのを
Aは見逃さなかった。
それ以来、Aはドライアイスが大嫌いになった。
「このマグロのサクを3日放置して食してみましょう」
Bはテレビの料理番組のように言った。
あッ、とBは声を上げる。
「なんとここに3日前にコーティングしたモノがあります」
Bは本当の料理番組のようにマグロを差し替えた。
「美味しく食せるように、冷やしておきました。
さあ、召し上がってください」
「お前、食えよ」
Aはマグロ3切れ盛り付けられた皿をBに突っ返した。
「嫌ですよ。
お腹こわしそうで~」
「マグロのコーティングはお前の実験だろう」
AはBに皿を差し出す。
「マジか~」
Bは決心して、口に含んだ。
「飲み込むなよ」
Aは言った。
「毒でも口の中だけなら死なないだろう」
Bは目をつむって、咀嚼する。
「マズー」と言って吐き出した。
「まず食感がダメですね。
気持ち悪くて味わえません」
「マグロには使えないか~」
Aはあまり落胆せずに言った。
難しいモノから実験しているので、しょうがないというように。。
「本当にこのコーディング使えるんですか~」
BはAを見つめて言った。
Aはニヤリとした。
2030年、このコーディング技術は政府のお墨付きを得た。
もちろん脱炭素社会に貢献する技術として。
従来に比べて、ずっとマグロは・・・
美味くない。昔のままだった。
もちろんAは食品に対するコーディングなんて、
初めから考えてなかった。
Aのターゲットは人間。
人間をコーティングするのだ。
味を気にすることはない。
でも、コーティングしたら窒息してしまうって?
問題ない。
死んだ人をコーティングするから。
そうこのコーディングは人を死んでから火葬するまで、
腐らせないための技術だ。
これまでなら、ドライアイスで冷却し、遺体の腐敗を防いでいた。
この技術により、温度環境にもよるが7日間程度保存可能となるのだ。
この技術を確立したAは、少し復讐をはたした。