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なろうラジオ大賞3

助手席の彼女は瞬きをしない

掲載日:2021/12/11

ホラー作品です。苦手な方はご注意ください。

 深夜の国道。


 車もめったに通らない。




 街灯が等間隔で並んでいる。


 光と闇が途切れ途切れになるこの道を、一台のスポーツカーが走っていた。




 真っ赤なその車を運転するのは、20代の若い男性。


 真面目そうで虫も殺さないような見た目。




 彼はハンドルを軽快に動かしながら、横目で助手席に座る彼女を見やる。




 白いワンピースを着た彼女。


 力なく助手席に身を横たえている。




 呼吸することもなく、目を見開いたまま前を向いている。


 瞳には命の光が灯っていない。




 男性は彼女を見て満足そうに微笑むと、前を向いてアクセルをふかす。




 と言っても、制限速度はちゃんと守っている。


 いわれなき因縁をつけられる覚えはない。




 君はこの曲が好きかい?




 男は彼女に質問を投げかける。


 無論、返答はない。




 車内で流れるのは80年代のシティポップ。


 軽快なメロディとは裏腹に、空気は鉛のように重い。




 はるか前方の案内標識に高速の入り口の案内が見えた。


 そこから入って一気に東京へ向かおう。




 インターチェンジの料金所の所までたどり着くと、パトカーが数台見えた。


 男性は車を減速させ、警察官の案内に従う。




「夜分遅くにすみません。

 近くでちょっと事件があったもので。

 車内を拝見させていただいてもよろしいでしょうか?」




 男性は、ええもちろんと快く答える。




 彼は車を降りて警察官に車内を見せる。


 怪しいものなど何も持っていない。




「あの……彼女は降りないんですか?」




 警察官が尋ねる。




 ええ、ちょっと降りたくないみたいなんです。


 そう答えると、二人の警察官は顔を見合わせた。




「あの……先輩、この人……」




 警察官がライトを彼女の顔に照射した。




 何をするんだ!


 人の顔にいきなりライトを照らす奴があるか!




 あまりに失礼な行いに、男性は憤りを隠せない。




「すっ……すみません」

「失礼しました! どうぞ行って下さい!」




 警察官がそう答えたのを聞いて、男性は一安心。


 車内に戻り、アクセルを踏んで料金所へ。


 本線に合流したら隣に座る彼女を見てほほ笑む。




 怖かっただろ、もう大丈夫だよ。


 失礼な奴らだよ……ほんと。








「あの……あれ……」


 スポーツカーを見送った警察官が、先輩に声をかける。


「ああ、そうだな」

「よくいるんですか?」

「さぁ、少なくとも俺は初めて見たよ。

 この手の仕事をしていると、

 たまにああいう奴と出くわすことがある。

 まぁ……忘れることだ」

「そうですね……」


 暗い闇の中に灯る料金所の光。

 二人の警察官の青ざめた顔を照らしている。

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― 新着の感想 ―
[一言] じわっと嫌な感じが残りますね。面白いです。 傑作の出来なのかなぁと気になりました。
[良い点] 実際遭遇したら、地味に怖いですね…でも本人が楽しそうなら、まあ、良いのでしょう…
[良い点] 深夜の国道の描写がほんのり怖さを感じさせてくれます。 1000文字という制限下での演出、凄いなぁ…… [一言] 死体とデートのパターン?と思いましたが、警官がスルーしたので、それじゃ一体……
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