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なろうラジオ大賞3

助手席の彼女は瞬きをしない

ホラー作品です。苦手な方はご注意ください。

 深夜の国道。


 車もめったに通らない。




 街灯が等間隔で並んでいる。


 光と闇が途切れ途切れになるこの道を、一台のスポーツカーが走っていた。




 真っ赤なその車を運転するのは、20代の若い男性。


 真面目そうで虫も殺さないような見た目。




 彼はハンドルを軽快に動かしながら、横目で助手席に座る彼女を見やる。




 白いワンピースを着た彼女。


 力なく助手席に身を横たえている。




 呼吸することもなく、目を見開いたまま前を向いている。


 瞳には命の光が灯っていない。




 男性は彼女を見て満足そうに微笑むと、前を向いてアクセルをふかす。




 と言っても、制限速度はちゃんと守っている。


 いわれなき因縁をつけられる覚えはない。




 君はこの曲が好きかい?




 男は彼女に質問を投げかける。


 無論、返答はない。




 車内で流れるのは80年代のシティポップ。


 軽快なメロディとは裏腹に、空気は鉛のように重い。




 はるか前方の案内標識に高速の入り口の案内が見えた。


 そこから入って一気に東京へ向かおう。




 インターチェンジの料金所の所までたどり着くと、パトカーが数台見えた。


 男性は車を減速させ、警察官の案内に従う。




「夜分遅くにすみません。

 近くでちょっと事件があったもので。

 車内を拝見させていただいてもよろしいでしょうか?」




 男性は、ええもちろんと快く答える。




 彼は車を降りて警察官に車内を見せる。


 怪しいものなど何も持っていない。




「あの……彼女は降りないんですか?」




 警察官が尋ねる。




 ええ、ちょっと降りたくないみたいなんです。


 そう答えると、二人の警察官は顔を見合わせた。




「あの……先輩、この人……」




 警察官がライトを彼女の顔に照射した。




 何をするんだ!


 人の顔にいきなりライトを照らす奴があるか!




 あまりに失礼な行いに、男性は憤りを隠せない。




「すっ……すみません」

「失礼しました! どうぞ行って下さい!」




 警察官がそう答えたのを聞いて、男性は一安心。


 車内に戻り、アクセルを踏んで料金所へ。


 本線に合流したら隣に座る彼女を見てほほ笑む。




 怖かっただろ、もう大丈夫だよ。


 失礼な奴らだよ……ほんと。








「あの……あれ……」


 スポーツカーを見送った警察官が、先輩に声をかける。


「ああ、そうだな」

「よくいるんですか?」

「さぁ、少なくとも俺は初めて見たよ。

 この手の仕事をしていると、

 たまにああいう奴と出くわすことがある。

 まぁ……忘れることだ」

「そうですね……」


 暗い闇の中に灯る料金所の光。

 二人の警察官の青ざめた顔を照らしている。

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― 新着の感想 ―
[一言] じわっと嫌な感じが残りますね。面白いです。 傑作の出来なのかなぁと気になりました。
[良い点] 実際遭遇したら、地味に怖いですね…でも本人が楽しそうなら、まあ、良いのでしょう…
[良い点] 深夜の国道の描写がほんのり怖さを感じさせてくれます。 1000文字という制限下での演出、凄いなぁ…… [一言] 死体とデートのパターン?と思いましたが、警官がスルーしたので、それじゃ一体……
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