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84話 ハイライン•アークライン邸



 瘴気が消えた事でワイバーンが進めるようになり、街の様子を見下ろしながら飛行していたグレンツェンは唯一動く一点を見付けて飛び降りたそうだ。

 唯一動く一点、という事はこの近くで視認できる人だけでなく、ガナルディの人々は皆倒れているのだろう。


「しかしあの瘴気は一体…?魔族が出すものとは違ったように思えるのだが」

「作り物なんだってさ。こんくらいのガラス玉だったけど」

「まさか魔道具か?!」


 ポークとキャッツを見遣ると二人は頷いた。


「倒れている方々は無事ですから、いや、本来であれば徐々に抜いて差し上げるべきなんですが…蓄積していた毒が一気に抜けた事で気を失っているだけですよ、いやほんと」

「僕が凄すぎてね?こんな力があるのだから女神を封じても文句なんて──」

「キャッツポークお疲れ!」


 食い気味に言葉を被せて言うとキャッツも悟ったのかポークを連れて消えた。目の前で人が二人も消えたためドミニクを除いたグレンツェンのメンバーが驚く中、何故がドミニクは得意気に鼻を鳴らすと「素晴らしいだろう?」とドヤ顔を見せる。


「ど、ドミニク様が認めた魔術師…!ギルバートはいよいよクビという事ですね!」

「なんでそうなるんですか!脳筋連中のせいで私がどれだけ苦労しているのか…っ」

「ビュートピアリー様は居ないの?あと…その、リオ様とか…ふふ、名前呼んじゃった!」


「ドミニク、ユリウスの居場所は分かるのか?」

「恐らくアークライン邸だろう。既に眷属化されていなければいいのだが…」


 鬱陶しいので無視して話を進めるとキャロルが突っ掛かってきた。瘴気が消えたとしても、いつキャッツの魔法陣が展開されるか分からないガナルディに悪魔二体は近付けないだろう。小さいキャロルがこれ以上近付いて来ないように頭を押さえれば漫画のように腕を振り回していた。


「俺達は後から行って治癒に尽力する、でいいんだろ?」

「あぁ。魔物はこちらに任せてくれ。下級だろうが見逃しはしない」

「早くベッドでしこたま寝たいんだ…頼んだよ」


 我慢できなかった欠伸を晒すとキャロルとハシヅメに緊張感の無さを指摘される。同じ人間だというのにコイツ等は一睡もせず、しかも夜中から戦い続けていたというのに…


「高ランク冒険者様は偉いな…」

「ま、まぁな!ドミニク様のお側に居れるのは俺くらい──」

「置いていくぞ、ハシヅメ」

「ちょ!ドミニク様ぁ~!待ってくださいよーっ」


 屋根の上から降りていったドミニクを追ってハシヅメが走る。


「あ、ドミニク!」

「なんだ?」


 呼ぶと振り向いたドミニクに質問を一つ。


「ビュートピアリーには会わなかった?」

「会っていないが…グラウディアスと共に行動していたのではないのか?」

「そうか…呼び止めてごめん」

「構わんよ。では、援護をよろしく頼んだ」


 ベルゼテはグレンツェンの方へ行くと言っていたが…何処に行ったのか。


「人の目は気にしなくて良さそうだし、一回街を回ってみるか」


 瘴気が消えた事でバンパイア達も確認するため外を彷徨くかもしれないと考え、そういえば吸血鬼という存在は太陽の光に弱いんじゃなかったか、とジェインに聞くがそもそも影の国には居ないから知らない、と言われる。セレーネは吠えるが何を言っているのか分からないため誤魔化すように頭を何度か撫でておいた。


「わふ…」

「ベルゼテかリオが居ればセレーネの言葉が分かるんだけど」

『バンパイアでも太陽光に弱いのはセイクリッドバンパイアかのぅ』

「セイクリッドバンパイア?」

「わふ!わぉんっ」


 セレーネもそれを伝えたかったそうだ。セイクリッド…とはバットが探していたバンパイアだったか。


「バンパイアロードとセイクリッドって何か違うの?」

『混血種か純血種かじゃ。混血種であるバンパイアロードはバンパイアの王であるが純血種のセイクリッドはバンパイアの神。しかし人や魔物の血は吸わんし虚弱体質でな?太陽光に当たれば灰になってしまうのぅ』

「なんだ…バットが必死に探すからヤバイやつかと思ったけど」


 瘴気は既に浄化しているから日の光も地上に届いている。外に居れば純血種とやらに会うことはないだろう。ノーブルバンパイアまでなら倒せるし、問題はユリウスだけ…グレンツェンが対処してくれれば良いのだが、勿論不安もある。

 バンパイアロードに眷属化された剣聖ドミニク、という筋書きがあったなら。あの時のドミニクは確実に噛まれていた。そのバンパイアロードよりもユリウスは立場が上なのだ。


 無事に終わるとは思えない依頼に、どこまで首を突っ込むのか思案する。グレンツェンの前でなら今持っている術を晒しても問題はないか、ローフォンドの力があれば揉み消せるのか…


「もう見付けたみたいだぁ」


 ジェインの声に顔を上げると遠くで衝撃音が鳴り、続いて土煙が舞っていた。


「あっちか…セレーネ」

「わふ!」


 道端に倒れた人をぴょん、と跳び越えながら少し走ると、密集していた家が疎らになり広い道に出た。舗装されたタイルの色が変わり手入れのされた広大な庭、その先にある邸宅はヴァンスで訪れたリディアの家よりも大きい。


「さすが偉くて金持ちの家…」

「バイコーン装備の…!アウトラギルド長ローフォンド殿からの報せは本物だったのか!ご助力に感謝するっ」


 騎士姿の男は邸宅の方から此方に向かって走り寄ると荒くなった呼吸を整えるように深呼吸し、姿勢を正して腕を胸の位置まで上げて敬礼した。


「魔物か?セレーネ、気を付けろよ」

「ヴゥウウウウ」

「なっ、違う!私はエース騎士団所属の…ーっ!!じゅ、銃を向けないでくれ!グレンツェンの方々も既に中に入った!ハイライン•アークライン様達の元へ案内するから!」

「どう思う?」

「今のうちに歯を抜いておくかぁ?」


「ひっ、」


 俺達を見付けて安堵の表情を浮かべた男の顔は一転して真っ青になっている。瘴気に覆われ、一気に浄化した事で 人 は皆倒れたというのにこの男は何故無事なのか。人のフリをした何かだと疑うのは当然。

 ジェインがセレーネから降りて男に近付き腕を伸ばすと邸宅の一部が破壊され数体のバンパイアが外に逃げ出してきた。


「中のバンパイアが…!」

「グレンツェンから逃げてるんだろうな。アンタも逃げる?」

「だから俺は魔物じゃないって!それより奴等が向かってる先はハイライン•アークライン様達がいらっしゃる離れだ!」


 そう言って腰に下げていた剣に手を伸ばして走ろうとする男の足元を銃で撃って止める。弾丸は舗装されたタイルを抉って大きな穴を作った。


「なっ!にを…っ!ローフォンド殿はなんて奴を送り込んだんだ!」

「アンタが人間なら喰われるんじゃないか?」

「人間だよ!これでもエース騎士団所属だ…冒険者ランクで例えるならBランク、君よりも優秀なんだよっ」


 結局走った男をセレーネが追い掛ければすぐに抜き去ってしまい、バンパイアに向かって銃を撃つと灰が舞っていく。最後の一体を撃ったところでセレーネから降り、破壊された邸宅の方を見遣った。


「エース騎士団の部隊長から話しは聞いたよな?ご貴族様の救出は任せたぜ!」

「…おう」


 ハシヅメが外に逃げたバンパイアを始末するつもりだったのか目が合い、既に討伐を終えている事を確認するとそう言ったため頷く。遅れて到着した騎士の男はジト目で俺を見ると「だから言っただろ…」と膝に手をついて嘆いた。


「ん?何か問題でもあったか?」

「この距離で息を上げてる奴が部隊長とは思わないじゃん?」

「彼が私を魔物ではないかと銃を向けてきて…はぁ、瘴気から身を守る結界を長時間維持し続けて休む間もなく走り回ってたら息くらい上がるさ」

「ぶっははは!なに!まさか味方の事を狙ったのかお前!ははっ」


 笑い出したハシヅメに無言で銃を向けると反射なのか両手を挙げられた。


「その銃の威力は知ってるけどな…どうするつもりなのかは聞いてやろうじゃねーの」

「味方と敵の判別がつかないんだ。見た事がある顔の奴に化けてこうして足止めをする敵の作戦かもしれない」

「ふっざけんな!」


 パシ、と叩かれた反動で斜め下を向いた銃から弾が飛び出た。いつもの如く銃声は聞こえないが芝生が無惨にも飛び散り穴が出来たそこを三人で見つめてから沈黙する。




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