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58話 父親は時に面倒である




「調査の任を受けたマクウェル一行の帰還!負傷が見られるため治癒師は南門へ!」

「マクウェルが戻ったそうだ!」

「治癒出来る奴は早く!急げっ!!」

「私が行きます!」


 治癒が使えるのか、女が一人走っていく。髪の毛を結っていたリボンがスル、と解けて足元に落ちたため拾うとナナがニヤリと笑った。


「女の子の髪の匂いが付いたリボンをすーはーしちゃうんだね?!」

「しねぇーよ!」

「グラウディアス…最低…」

「しないって」


 どうせダリンズも南門に居るのだから渡してやるだけだ。一度手に持ったモノをまた捨てるのはポイ捨ての感覚に似ていて気が引けるし…まぁ、拾わなければ良かったのだが…。


 調査へ向かっていたマクウェルの帰還によってザワつく南門に近付く。女三人の傷は酷く意識も薄いようだった。それを支えている長身の男女には見覚えがある。


「ベルゼテ、リオ」

「あら、おかえりなさい。合流まで待てなかったのかしら?」

「タイマンなら私とか言ってた奴が随分と遅かったからな」

「しょうがないでしょう?この子達を街に戻す方が優先かと思って」


「どうして…戻ってきたんだ…!!」


 ダリンズは俺を見て怒鳴るような声を出した。その声に周りの人達はシン、と静まり注目が集まる。マクウェルはリボンを落とした女の治癒を受け、残りの三人は他の治癒師の魔法を受けている。


「ダリンズさん聞いて~!魔族の大軍は──っ!」


 後ろからステラの口を塞ぎ、ベルゼテをチラリと見た。


「…場所を変えましょう」

「ダリンズだけに話したい。出来ればステラとナナは別の所で待機しててほしいんだけど」

「な、なんで~?!」

「私達だって話したいっ聞きたいっ」


 案の定ごねたステラとナナをどうするか考えると殺気を感じて身構える。力の入った腕に潰されないように腕を掴んだステラは不思議そうに俺を見上げた。


「随分と距離が縮まったようだな…?グラウディアス君」

「待てダリンズ、何か…殺気が」

「しっかりと順を追ってもらわないと困るんだ…ステラは俺の娘だからな」

「は?……あ、あぁ、…!!違う、これは違うから!」


 殺気の出所を理解してステラから離れるとダリンズは血管が浮く額をそのままにニコリと笑った。


「とにかく話が…」

「俺だけに話したい事、だよな?この非常事態という時にくだらない話をしたらどうなるかよーく覚えておく事だ」


「だ、ダリンズさん…彼はドラゴノイドですっ、失礼はいけませんよ!」

「マクウェルさん!まだ治療は終わってません!」


 回復したマクウェルが慌てて間に入ると治癒師の女も慌てて追って来たのでリボンを渡す。


「これ落としたよ」

「!あ、ありがとうございます!」


「ドラゴノイド…?娘に手を出した野郎ならば関係ない……他の女も誑し込むような野郎ならば尚更だ!」

「?ただ落とし物を届けただけ……」

「さぁ来い!聞いてやる!!」

「すまない。ステラやナナの事になると強引な人で…南門から出ても魔族は居ないから安心してくれ…なんて、君にはなんの脅威でもないか」


 ふっ、と笑ったマクウェルはすぐに悔しそうな表情を見せたが…俯くことでソレは隠された。リボンを受けとった治癒師がマクウェルを支えながら端に寄り座らせている所を尻目に、随分と先を歩いていくダリンズを追う。


「そっちはどうだった?」

「ルノドフガンズの部下とその兵が瘴気を振り撒いて外からの応援は来れないようにしていたわ。…あの瘴気の中ではガルダワンの冒険者達も戦えなかったでしょう」

「タイタン族は居なかったがな」


 嫌な予感がする、そう言って進軍するルートを急遽変えたルノドフガンズは悪魔二体に遭わずに済んだのだから間違っていなかったのだろう。

 それを知らないマクウェル達は調査に向かい、同じく辺りの様子を見に来た魔族と鉢合わせし倒した。だが、瘴気によって動く事が出来なくなりベルゼテとダンタリオンによって街まで戻って来れた…という経緯があったそうだ。


「情報にあった魔族の拠点は潰してあるけれど、私達では瘴気をどうにかするなんて事は出来ないから……結局の所、この街を救った事にはならないわね」


「ベルゼテさん、そんな事を言わないでください!ゼノンダラス国の聖女に依頼して、必ずガルダワンを救う!それにルノドフガンズが何処から攻めて来るか分からない今……俺達はっ」


 ダリンズが熱く語り始めたのでインベントリからルノドフガンズの頭を地面に落とした。巨大な頭の額は穴が空いており、首から上しかないのだから絶命しているのは一目瞭然だろう。


「……これ、は」

「ルノドフガンズの頭」

「はは…は?なん、え……グラウディアス君……?」


 街の中での強気な親父ダリンズや先程までの熱き冒険者ダリンズから一転し、まばたきも忘れてしまうくらいに動揺している目の前の男に近付いた。


「魔族の拠点はベルゼテ達によって潰された。統率者はこの通り、生き残った魔族は居るが皆逃げた」

「そんな…」

「ソル村よりも手前…岩場の開けた所があるだろ?そこに待機してたんだ。瘴気は聖女を呼ばなくても消す方法がある」

「!!」

「条件を聞くか?ダリンズ」


 二手に別れた戦力で各々が結果を出している事、瘴気を消す方法がある事、ドラゴノイドとか…そういう事…簡単に言えば俺達の事は他言無用にしてほしい、それだけだ。


「……驚かされてばかりだな…負けたよ、グラウディアス君」


 ダリンズは苦笑すると俺の肩に手を置いた。少し目元が潤んでいるようだが、街の危機が被害も無く去ったのだから見なかった事にしてやろう。


「じゃあ……──」

「ステラをよろしく頼む」

「……?」

「魔族…しかもタイタン族であるルノドフガンズを倒してしまう男だ。しかも瘴気まで…そこまでしてステラを想っているなら許すしかないだろ」


 すん、と鼻を啜ったダリンズ。ジェインは「抜け目がねーなぁ」とからかい、ベルゼテは首を傾げた。


「あら、私達が居ない所で何かあったの?」

「ねぇよ。ダリンズもそんな簡単に大事な娘をくれてやろうとすんな」

「簡単だと?!街を救った男だぞ!」

「取り敢えず違う、色々違う…ステラとは何もないから」


 まどろっこしい言い方なんてするもんじゃなかった。条件なんて押し付けてさっさと街から離れてやる。

 ジェインの他にもベルゼテまで悪乗りをし始めたため、セレーネにお願いして二人を黙らせておく。ダリンズは「俺の娘に不満でもあんのか?」とキレていたので魔法袋を取り出した。


「何が入っているんだ?」

「デマントイドドラゴン。これはベルゼテが討伐した」

「嘘だろ…!?本当にやったのか…っ!」

「この街の危機をだいぶ救ってやったと思う。だから、俺達の事は他言無用にしてほしい」

「グラウディアス君とステラの事は秘密にしろ、と?だが…」

「そうじゃなくて、俺達…コイツ等の事!あまり目立ちたくないんだ。ドラゴノイド?とか、ドラゴニン?」

「ドラゴニア。我をほ──」

「そう、ドラゴニアとか。俺達が目立ちたくない理由は分かるだろ?」


 ナイスアシストだダンタリオン。後で褒めるから「我を褒めろ」とか言うのは少しだけ待ってくれ。


 考える素振りを見せたダリンズだったが疑われるような話ではない。魔族の拠点を無傷で潰し、タイタン族であるルノドフガンズの首を持ち帰り、デマントイドドラゴンを討伐したパーティー…そのメンバーにはドラゴニアとドラゴノイドが居る。竜人族である事を隠しているため目立つわけにはいかない。


「わかった…だが、どう説明する?」


 顔を上げたダリンズ。


「説明なんて必要ないよ。ジェイン」

「はいよぉ」


 ジェインはルノドフガンズの首をインベントリにしまうと影の国へ戻った。姿を消したジェインに驚くダリンズだったが、暫くして街の中から悲鳴が聞こえたため武器を手に取ると駆けていく。その勇敢で忙しい冒険者の後ろ姿を見送った俺はセレーネに元の大きさに戻るよう伝え、背中に乗った。


「まさかグラウディアスがルノドフガンズの首を持ち帰ってくるとはね。凄いじゃない」

「後で確認したい事があるんだけど…取り敢えず瘴気が発生してる所の手前まで行こう。ポークがどうにか出来る」

「いいのかしら?」

「今のうちに行くしかないだろ。魔族の問題が片付いたらセトキョウスケの依頼に集中出来るらしいから」

「ふふ、それは大変ね」

「だろ?」


「戻ったぜぇ。ククク、奴等の叫び聞いたかぁ?」


 ジェインが戻ったのですぐに移動を開始する。ガルーダに会うことが出来なかったベルゼテは少し名残惜しそうだったが、悪魔であるベルゼテならばまた来れるだろう。



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