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54話 かくれんぼ



「ルノドフガンズに有効な攻撃は?」

「タイマンなら私ね。ただ今回は魔族の数も多いでしょうしリオの幻覚展開陣の中に閉じ込めた方が効率は上がるわ」

「俺とジェインは離れられない。ベルゼテとリオの正体がバレても面倒。セレーネは団体戦に向いてないし…」


 本当なら二手に別れるなどしたくなかったが、ステラとナナがこのままついて来てしまえばそうも言っていられない。大人しく街に居てくれれば良いものを…此方も目的地を伝えていないのだからおあいこか。


「魔族は任せなさい。ただ、この辺りまで瘴気が届くのも時間の問題ね」

「…我に命令するといい。誓約者の言葉は絶対だ」


「はぁ…頼んだよ。ベルゼテ、リオ」


 二体の悪魔は小さく頷いて先を行った。セレーネが俺の足に身を擦って後ろを向いて吠えるとステラとナナは顔を見合わせながら出てくる。


「やっぱ気付いてたよね~、あはは、」

「安全な所に行きたいわけじゃないんだよ!お願いがあって、その…」

「街には戻らないから」

「「!!」」


 ダリンズは二人を危険な目に遭わせたくないから街から出ていく俺達を見逃したに違いない。だが、俺達は…いや、此処で魔族を狩りに行くと伝えれば二人は結局ついてくるだろう。開けた口を閉じて頭を搔くとジェインがニヤニヤしながら言った。


「コイツは臆病者だからよぉ。魔族となんて闘わずに安全なルートを選んだんだぁ。お前等みたいなお荷物を連れて行くわけねぇだろぉ?」


 ジェインに乗るしかないか、と溜め息を吐くとステラとナナが大股で近寄ってくる。そしてステラはジェインの胸倉を掴むとぐい、と持ち上げた。


「なんなの~このガキ!」

「グラウディアスは私達を助けてくれたんだから!わ、私は覚えてないけど」

「凄かったよ~!スパパバーンって!」


「あぁ?なんだこの女ぁ…」


 興奮したように捲し立てた二人にジェインは怪訝な表情を晒すと俺を見た。俺がアズライトリザードを討伐した事を知らないジェインに説明をするのも面倒でセレーネをモフモフする事で冷静さを保とうとする。

 人前で戦う事を避けたい俺は魔族が街に辿り着く前に、逆に街の人が魔族の元に行く前に決着をつけたかった。わざわざ迂回を選んでまで人目を避ける理由なんて一つしかない。だからステラやナナを連れて行く事は魔族の軍の中へ連れ込む行為でありダリンズの意に添わないわけだ。


 勿論、あの場で魔族を狩りに行くと伝えてしまい俺達が関わった事を知られるわけにもいかず…


「セレーネ、ソル村の道は覚えてるよな?」

「わふっ」


 魔族との戦に参戦してほしいステラやナナに事実を言った所でこの二人はついてくる。


「ソル村って…そんな、グラウディアス!」

「お願いします!ダリンズさんを…街を守りたいのっ」

「……」


 二人を巻き込まないためにはソル村へ行き、ベルゼテとダンタリオンが魔族の軍を倒した後に合流。セレーネに頼んで二人を街に帰す…これが最善なのだと思う。俺が関わっていないのならいいか、と今にも泣き出しそうなのを堪えて震える二人に向き直る。


「他に二人居ただろ?一人はAランク冒険者…俺の師匠様だから。あの二人に任せておけば街まで魔族は来ないだろ」

「それって…力を貸してくれるって事?!あ、でも…なんでグラウディアスは行かないの?」


 お前等が付いて来なければ向かってた…と、言いかけて止める。


「さっきDランクに上がったばっかの俺が街の火力総出で迎え撃つような闘いに参加出来るわけないだろ」

「アズライトリザード倒したでしょ~?!」

「傷も!ステラの傷も治しちゃったし!」

「だから、俺が残って二人の安全が保証されるまで面倒見るんだろ?いま街に戻ったらダリンズが煩そうだから取り敢えずソル村へ行く」


 二人が再び顔を見合わせて頷いた所で、俺はステラの頭に銃を向けた。


「行きたいなら勝手に行け。これ以上の足止めをするつもりなら撃つ。ついて来るなら大人しくついてこい。仲間が魔族を倒して合流した後は街まで連れて行ってやる」

「「………」」


 震えた声で わかった、と返事をしたのはナナだった。俺の腕を恐る恐る掴んで下げさせると、ステラは呼吸を忘れていたようで大きく息を吸う。


 これ以上の無駄話は必要ないためセレーネを先頭にソル村へ向かう事にする。二人は後ろからついてきた。


「どうしちゃったのよグラウディアスぅ?」

「仕方ないだろ…魔族が進軍すればこの辺りは瘴気が発生する」

「ククク、俺達は効かないじゃねぇかぁ」

「俺のセレーネが苦しむから却下」


 魔族は瘴気で街を囲う。街に近いこの森が瘴気で覆われてしまえばセレーネは体力を削られてしまう。勿論、ステラやナナも無事ではない。


「ソル村は廃村だろぉ?瘴気だらけの可能性もあるがなぁ?」

「廃村になってからシエルが確認出来たって事は瘴気がない可能性も、な。もし瘴気が濃ければその時に考えよう」

「そこ、数ヶ月前に村人が一夜で惨殺されたっていう、あの村?」

「知ってるのか?」


 ステラは頷いた。

 雲のない夜、ソル村の方角で赤い光の柱が目撃されたそうだ。ガルダワンからも近いため調査隊が向かうと村人は誰もおらず、家は破壊され瓦礫が残り……


「土は血を吸いきれずに水溜まりをそこら中に、って…ダリンズさんは言ってたけど~…」

「ダリンズさんが私達を街から出さないようにするための脅し話って思ってたんだよね」


 結果、ダリンズ達調査隊はアウトラへ報告、そこから派遣された騎士と冒険者によって事実だと知らされ…未だに未解決である、と。

 シエルやアギトが掴んでいる悪魔の情報を何処まで知っているのか分からなかったため、俺は話を聞くだけにした。暫く歩いて湖を見付け、ついでにトレントも蠢いている。


「はぁ~…破棄してなかったら俺のランクも上がったのに」

「薪はあっても困らねぇ」

「トレントを薪にすると煩いからな…」

「倒していく~?私達Cランクだし、Cランク-のトレントくらいなら行けるけど?」

「ちゃちゃっと終わらせられるよっ」


 それでもし怪我でもされたらポークを喚ぶのか?洞窟のように暗くないしアズライトリザードによって正気を保てていなかったあの時の二人とは違う。出来れば国宝武器は使いたくないし、セレーネに任せるとしたら此処まで移動をお願いせずに歩いた意味もなくなる。


「ジェインって戦えんの?」


 そういえば見たことがなかった。


「どうだかなぁ?確認するかぁ?」

「……今度にしようか」

「ククク…俺はか弱き少年だぁ」


 元は成人男性、だろ…。ツッコミはせずにトレントを避けて道を探す。他にも現れた魔物を悉く避けて進む俺にそろそろステラとナナの不満が爆発しそうになったが、その前にコボルトを見付けてその相手を二人に任せれば多少の鬱憤を散らせたようだ。


「この調子だとソル村までどのくらいだ?」

「歩いてじゃ半日かな~…もうすぐ日が傾くからもっと時間かかるかも?」

「夜じゃ何も見えないし不用意に火で灯せば魔物の…今だと魔族にも標的にされちゃうよ」


 鬱蒼とした森の中。まだ日があるとはいえ空の色は青から赤紫に変わっている。セレーネが居るため道は迷わないが…


「わふっ、」

「どうした?」

「わぉん…わふ」

「分かるか?ジェイン」

「腹でも減ったんじゃねーのぉ?」

「ヴァンッ!」


 違うようだけど。頭を撫でると潤んだ瞳で見上げられ、セレーネは走り出すと身をかがめた。同じように体勢を低くしてセレーネが見つめる先を見遣ると、先の道が木々や緑が少なくなり黒い岩場になっている。所々に小さな岩山もあるが、更にその先は視界が開けていそうだ。


「この先にソル村が?」

「待って…あれ……」


 ナナが指差した方向。二足歩行で歩く鎧を来たトカゲが三体。


「あれが魔族?こっちは集結場所…じゃない、よな?」

「わふ…」

「ここまで散開していたって事か?…一回引き返すか、視界が開けると見付かるし森の中の方が隠れやすい」


 戻ろう、と合図をしたがステラは口元を両手で押さえて上を見上げている。背の高い草や木の陰に隠れてはいるが目の前を魔族が通ったのだ。魔物相手にあれほど威勢が良かった二人も魔族が相手ではそうならないらしい。

 見開かれた目線は魔族をしっかりと捉え此方に気付かぬまま行ってくれ、という懇願が伝わってきた。


「ンン?ナァー」

「っ!!」

「ドウシター?」

「聞コエネェー?」

「ナニガー」


「……~!!っ、!」

「っ!!!」


 ステラとナナが声を出さないように、しかし恐怖からか早くこの場から去ろうと訴えてくる。だが今動けば確実に見付かるため、大人しくしてくれ、と口を動かしたが……


「心臓ガ鳴ル音ダー」

「ンンー?アァ、確カニ聞コエルナー」

「人間カー?ガルダワンノ人間ナラ喰ッテモ良インダロー」


 その音は不可抗力だと思うんだよね。どんなに息を殺した所で見付かる。ステラとナナは理解したのかどちらからともなく手を繋ぐと目を閉じてしまった。こんな事で怯え、死を覚悟するくらいならばやはり出しゃばった真似はしない方が良いというのに。あの時に学んでほしかった。


「コッチダー」

「俺ニモ喰ワセロヨー」

「何個ダー?居ルゾー女モ居ルゾー」


「ひっ、」


「見付ケタァアアー!!!」


 女、と言われて声を漏らしたナナに魔族は高い草を跳び越えて後ろに着地すると歓喜した。緑色の鱗、二足歩行で鎧を纏い、両手にはカタール。


「~っ!」

「……ダリンズさんっ」


後ろに現れた一体のトカゲと、草を掻き分けて見下ろす二体のトカゲ。そして涙を流し始め震える二人。俺は立ち上がると後ろに現れたトカゲを見据えながらインベントリに手を突っ込んだ。


「もういいよー。っていうまで」


 銃を向けて、


「目を閉じて十数えてて」


 撃ち込む。

 


 

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