47話 ゴミクズです
武器は持っていたが壊れてしまいこの街に寄った。同行者は高ランク冒険者であり俺はその弟子兼荷物持ち…という設定で納得したドワーフは「そんな事だと思ったわ!」と豪快に笑うと奥からデカい何かを引きずり出してくる。
布が巻かれたそれはドワーフの背丈よりもはるかに高く、持ち手を見る限りでは大剣だが、何故そんな物を持ってきたのか怖くて聞けない俺はゆっくりと後退した。
「これを持って行きな」
「なに、それ」
「ただの鈍だ!同行者は高ランクなんだろ?これを渡して、処理してきて欲しい。ほら、依頼書もやるよ」
無理矢理押し付けられた依頼書を確認すると殴り書きで『剣の処理。方法は不問とす Eランク+』と記されており、しかしギルド職員が押すハンコはない。紙の種類も異なっており俺はドワーフを見下ろした。
「これ正式な依頼と違くない?」
「前金もやろう。ほら、な?処理するだけだ。なんならお前のもんにしてもいい」
「余計に嫌だよ。金貰って剣も貰うって絶対になんかあるじゃん!こっちに持って来んなって!」
「ただデカくて邪魔なだけだよバカモン!剣一つその辺に捨てようものなら俺の技術がパクられちまうだろうが。だから遠い所に捨てるかお前が持つかして欲しいんだ。それだけだ」
言い切ったドワーフは俺の前に金が入った袋と大剣を置いた。
黒剣よりも細いが長さは同じくらいか…布を外してみるとこれも黒かった。
「…分かった。依頼の達成はどうやって知らせればいい?」
「それを俺に返して来なきゃ達成だ。行け、仲間が待ってるんだろ?」
今度はあっさりと引き下がる…本当に廃棄したいだけなのか、何かあるのか……。
門から出るときはギルドで受けた依頼書を見せ、ある程度離れた所でバイコーン装備に着替える事にした。ステータスに影響はないが切れても汚れても自動で綺麗になるので外はこっちの方が良い。インベントリからバイコーン装備を取り出すと自動的に服が切り替わる。なんとも便利な機能を見付けてしまった。
「……あれ?」
ドワーフから渡された大剣をインベントリにしまおうとしたが入らない。嫌な予感がしてステータスを確認する。
「どこが…なまくら、だよ!」
体力----魔力----
攻撃 1 +3200
防御 1 +700
知力 1
命中 1 +680
俊敏 1 +1200
幸運 1
国宝武器程ではないがそれでもステータスの上がり具合は大きいだろう。ただ持って歩くには大きすぎるため、布を外して紐代わりにして背負ってみる。これだけで俺のステータスはだいぶ高くなった。
「破棄なんてしないで貰おうかな」
ステータスを閉じてギルドカードをしまう。そしてもう一度取り出す。
グラウディアス•ドゥーベン
E ---
⇨セレーネ
⇨???
何か増えてるんだが。
「わぁ、あれ、バイコーン装備じゃない?」
「……待って。やっぱり、Eランクのお兄さんだよっ」
バイコーンでEランク、しかも聞き覚えのある声に振り返るとステラとナナだった。
「へぇ~…」
「フル装備になると低ランクっぽくないね?」
「ステラだっけ?俺から何か盗ろうとか考えてないよな?」
「ギクッ」
口で言う奴初めて見たわ。街の外に出ているため冒険者同士のいざこざなんて問題にならないだろう。前も外に出た所で襲われたのだ。この世界では貴重で珍しいバイコーン装備、しかも俺が低ランクと分かれば欲も出やすい。
やはりランクはある程度上げた方がいいか、と再確認した所で目的のコボルトから探すことにした。ステラとナナはBランク-の依頼を受注したようで鉱山を目指して歩いて行く。
「………」
ふと足を止めて二人の後ろ姿を振り返るが…共に行動する事を望んでいない俺達はこのまま別の道を進む、でいいのだろう。ダリンズという男が過保護なだけだ。そう結論を出して、俺も目的地へ向かった。
鬱蒼と生える木々の中には毒々しいキノコがたまに黄色い煙を吐き出している。なんとなく鼻を手で覆って、すぐに対応出来るように銃を右手で握って歩いた。
何かが動く気配がして木に隠れながら先の様子見をすれば金棒や剣を持ったコボルトが3体。魔核が依頼の数だけ取れればわざわざ一部を切り取る必要もないし…銃ではなく幸運も上がる武器の方が良いか。
「杖…キャッツは広範囲展開の他にも何が使えるんだろ」
いや、あの三人組は皆して煩いから今喚ぶのは違う気もする。
片手剣もある程度の補正はあったが幸運は上がらず。黒い大剣を手に取って一応確認するとこれは幸運にも+が付いていた。相手は3体、大振りの大剣ではあるが敵意に反応する大剣だから…いや、ジェインが居ないのに行けるか…?
いざとなると緊張してしまい、やはり銃にしようと大剣をしまって…そういえば、と弓を取り出す。一度使った一般的な弓ではなく矢のない国宝武器はそれなりの大きさがある。
体力----魔力----
攻撃 1 +3200 +9000
防御 1 +700
知力 1 +5000
命中 1 +680 +9000
俊敏 1 +1200
幸運 1 +9000
これだ。確か矢は魔力を使って作り出すと言っていたから…取り敢えず形だけでも構えてみる。矢も無く、弦なのか上と下から短い光が出ているが繋がっていない。矢を番えるための中仕掛がないこれでどこまで出来るのか。
「集中…」
矢をイメージして、一体のコボルトを狙う。
ぐ、と力を込めて引っ張る動作をすると指先から矢が姿を現していった。ピンと張った弦の感覚、風の音、方角…手を離すと思い描いた直線を飛んだ矢がコボルトの側頭部を貫くと向こう側の木に当たった。射抜かれたコボルトは木に固定され握っていた剣を地面に落とし、傍にいたコボルトが殺気立つ。
辺りを警戒するコボルトに向かって矢を放ち、続けてもう一体を片付けると俺以外の息遣いが消えた。
「ふぅ…」
木から体を離して討伐したコボルトが居た場所にいくと赤い魔核が三つ転がり、しかしコボルトもそのまま絶命しているようだ。こういうのは素材として保存するべきか悩み、インベントリに入れてみる。ギルドに戻ったらさっさと換金しよう…もし出来なかったらダンタリオンに燃やしてもらえばいいか。
「残り五体…探すか」
それから二体のコボルトも同じように討伐し、続いて見付けた四体のコボルトは三体を弓で、残り一体は銃で討伐した。スライムの時は幸運が1でも魔核が取れたため、もしかしたら…と思ったのだが転がっている魔核の数は三つ。銃で討伐したコボルトの所にも魔核はあったが拾う前に塵となった。
「セレーネが近くに居るか居ないか…か?」
マリオネットの魔核も消えてしまったし、しかしハイドラの魔核は手に入れることが出来ている。その時に使ったのは銃だし、トドメは悪魔のベルゼテだ。セレーネの幸運は300くらいだった記憶がある。
「ま、コボルトの依頼は終わりだな」
後は鉱山に住み着いたダイアウルフの討伐だ。基本的に15体の群れで動いているそうだが、Dランク-の依頼ではその内三体の討伐で完了する。はぐれてしまった三体を見付けるか、ベテラン冒険者と共に行動しておこぼれを貰うか。
どちらにせよ国宝武器を持っている俺の相手ではないだろう。
森から鉱山へ向かうと、洞窟の入り口には人が立っていたためそこは避ける。ダイアウルフは鉱山内では無く山の上に棲息していると書いてあるから…
「これ…上がんのか…」
セレーネの有り難みを再確認した。
ピュートーンが棲息していた山に比べれば断崖絶壁、という程でも無くしっかりと登山コースはあった。ロープの張られた坂道から上り始め、ある程度の高さまで来るとロープは途切れていたが平坦な道になっている。多少開けた視界で辺りを見回すと小さな洞窟の入り口があり、人の気配がないため近付いてみる。
レールが敷かれているため此処も鉱石の採掘が出来る場所だろうか。薄暗い中を進むと途中で壊れたトロッコが横に倒れていた。
「グゥウウウウウウウ」
「っ!」
唸り声に反応して体を反らすと目の前を獣の手が通った。近くで爪がレールを弾く音がしてそちらを振り向くと同時に銃を取って引き金を引く。
「ダイアウルフ…?」
すぐに消えてしまい赤い魔核も塵になって消えてしまったが…。ジェインが居なくても反応し切れた事に安堵をしつつ、しかし突然の攻撃に心臓がバクバクと脈打つのが分かった。気を抜かないようにしよう、と慎重に進んでいくが放置されているのか灯りが届かなくなってしまう。
「…キャッツ」
「はいはいなんですか。自分いまポークとバットとポーカーをやっておりまして良いところだったんですからね、いや、ほんとに」
「灯りってつけれる?」
「はい?!そんな事で自分を呼んだんですか?!そんなもの火の精霊でも使えば良いでしょうに!」
「俺なんの適性もないし」
「適性が無くてもマナを…いえ、魔力を使えば誰にでも出来ますからね!ほんとにっ」
「そうなの?どうやんの?」
聖魔法も結局俺では使えないと思っていたが、魔力でどうにでもなるなら俺最強じゃん。あとはやり方を聞いて、実践すればいいだけ、と希望に満ちた目をキャッツに向けると不貞腐れたように唇を尖らしたおっさんはクルリと回っていつもより小さな広範囲展開の魔法陣を作り出した。
「本来は必要ありませんが特別に初心者講座として展開陣でアシストしてあげますよ。この魔法陣の上に居る自分が認めた者は魔力感知をする事が出来ますので、まずは火の精霊の子を…ほら、あそこの」
「…どこ」
「分かりませんか?じゃあいいです。火を想像してください。灯りが欲しいならそのくらいの大きさの…」
「…………」
「いや、ほんと…早くやってくださいよ」
やってるよ。ランタンを灯すような火。松明が燃えるような火……
「大爆発でもいいですから…ほんと…どうせ、その…死なないでしょう?」
大爆発を想像してみるが何も起こらず、キャッツは震えたかと思うと一筋の涙を流した。それを拭うこともせずに天を仰ぐと被っていたフードが脱げ、てっぺんの禿げが晒される。
「自分…此処まで適性のない者は初めてでございます。ほんと…なんという嘆きを申せばよいか…女神様、これは自分への試練でしょうか…」
「…や、やっぱり使えないって事か?」
「使えないも何も本当にゴミクズですね!光でしたっけ?はいどうぞ。では!」
「あっ!ちょっ!!」
ぽい、と投げられた光の玉はふよふよと浮いて辺りを照らしてくれた。同時に消えたキャッツにまだ聞きたいことがあったというのに、あの様子だともう一度喚んだらブチ切れそうで止めておく…。
欲しかった光はあっさり手に入ったが、心にぽっかりと穴が空いた気分はなんとも言えない。適性がないのはドゥーロで確認済みだが、ゴミクズとまで言われるなんて…
「ははっ、泣きそ…」




