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03 つよさ

作者: 芳村


「───── 頭が良くないから,運動が出来ないから,容姿が悪いから 虐められたのであって、全部良くすればボクの勝ちでしょう? ─────────── 」

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▸ 成績は大体いつも下から数えた方が早かった 。

▸ 運動は、嫌いだ 事実として自分には出来ないから 。

▸ 言われた暴言の八割が容姿の事だった 。

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でも、何より虐めっ子の誰よりも勝る部分があるとすればそれは "痛みに対する貪欲さ" だとボクは勝手に思っている。

人間は裏切り 世界は力が全てなのだと知ったのは小学生の頃だった。ボクは朝が苦手だ。毎朝上手に起きられなかった。

体調が悪い、と 眠い、と 親に言ってはみるものの毎回必ず全否定、聞く耳は何を訴えたとしても持ってくれなかった。

本当の事を言っているだけなのに嘘だと疑われ続け泣き出したボクに父親は言った。

「嘘を付くならもっとマシな嘘を付け、甘えるな」 と、。

そして最後にボクの首を締めながら大声で怒鳴った 何を言ってるのか分からなかった そして、もう覚えていない。

そんな父親とボクを母親はただ側で見ているだけだった。私は何時でも貴方の味方なのだ と言っておきながら。ボクの中で親は信用の対象から外れた。ボクはこの世界での力の強さを知った。やがて弟が生まれた。弟はよく泣いていた 時に自分だけでは無くボクの事も汚した ボクが何をしても母親がボクを優先する事は無くなった。ボクに母親は言った。

「貴方はお姉ちゃんなのだから、年上なのだから 1人で何でも出来るようになりなさい。貴方に手を焼く暇は無い」 と、。

ある日、弟は泣いていた 五月蝿かった ボクは本を読んでいるのに 何度声を掛けても泣き止む事は無かった。そしてある言葉を思い出した "甘えるな" "貴方は年上なのだから"

そう、ボクは年上で少なくともボクと弟を力の優劣で天秤に掛けた時 勝るのは間違いなくボクなのだ。躊躇うこと無くボクは弟の頬を叩いた。弟は泣き止んだ。ボクが力の強さを目の前で実感した瞬間だった。

この世は弱肉強食なのだと痛感したのは中学生の頃だった。

誰もが伸び伸びと学び育つ学校はスクールカースト上位が仕切る地獄だった。目を付けられない様にと常に怯えながら生活した。そんなある日、スクールカースト上位の女とボクの好きな相手が同じだと云う理由でボクは虐められる様になった。関係の無い 勉強 運動 の事や容姿 趣味 友達 の事も酷く言われる様になった。辛かった 悲しかった 理不尽だと思った 申し訳無かった 恥ずかしかった 情けなかった 羨ましく 憎かった

学校へ行きたくなかった。けど 親にも言えない 理由も無く休め無い 休んだら負けな気がする だから学校へは行き続けた。

耐えた、必死に。耐えた。

けどもう限界だった。そんな時ネットで自傷行為についてを知った。ボクは神の助けなのだと思った。光が見えた。そして無我夢中で切った。腕が足が腫れ上がっても尚、切り続けた。重い体を起こし虐めに耐え切って寝る そんな日々を過ごし続けた。その時にはもう虐めが酷くなればなる程 切れる、ご褒美、なのだと思っていた。いつの間にか辛さは消えていた。虐めっ子達に体の傷を見られた。虐めっ子達は怯えていた 困惑していた 怖がっていた 化け物を見る様な目でボクを見ていた。虐めは無くなった。ボクは嬉しかった。傷が増えれば増える程 恐れられ異質な者だと認識される 強くなった気分だった。傷はどんどん増えていった 切るだけでは足らず薬の多量摂取や軽度の首吊り、飛び降り自殺未遂 色々やった。その度に噂になりその噂がボクを強くしていった。楽しかった人生を諦め友達を夢を希望を捨て得た物は自我だった。やっとボクはボクを手に入れられた。そこからは楽しいだけだった。死ぬと言いふらし死なないと見せかけて首を吊ったり本当に死ぬと泣き散らかし飛び降りる真似をしたり サーカスをしている気分だった。やっと生きた心地がしたんだ。

ボクがしている事は何も生まない が、失う物が無いボクには楽しくて仕方無い。ボクを生んだのは環境で、ボクを殺したのも環境だ。力が全てだと教え込んだ人間が悪い。遊び方を教えた人間が悪い。もうボクは力の大切さも人間での遊び方も傷も知ってしまった。環境は環境を呼ぶ、幸運な事にボクの部屋には瓶も刃物も沢山ある。生きる意味はボクが作る もう二度とあんな地獄に戻りたくない 自我を殺して自我を産み それに満足したら産まれないようにしっかり殺そう。そして今日もボクを壊そう 傷が傷だけがボクの強さなのだから。

傷を負って治すのが強さなら幾らでも傷を付けて治そう 痛みで痛覚が麻痺するくらいに。最後にボクが楽しければオールオッケーなのだから。

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ボクは勝てるのかな。ボクを痛め付けた物達に勝つ事が出来るのだろうか。

─── きっと勝てるだろう 己がそれ等を許せば救われるだろう 一人の少女として息をする事が出来る筈だ ────

何故、許す?勝たないと意味が無いだろう ボクはボクと同じ目に合わせたいのだ 和解がしたい訳では無い。

─── 仮に勝てたとしても許せなければまた新たな闘いが生れるだろう 戦うのでは無く許せ 強くなれ ────

ボクはもう強さを持っている 弱くなどない 前とは違う。

─── 許し強くなるのでは無い 強い者が許し更に強さを得るのだ 心が子供のままでは意味が無い ────

分からない 難しい言葉は嫌いだ。ボクを認めないお前も嫌いだ。でも、やってみよう ボクは強いのだから ボクを捨てずにもっと強くなってみせよう。彼奴らに勝てた時、また会おう

ありがとう。ボク、。おやすみなさい。

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今でもボクは傷を付け続けている そして誰とも関わっていない。ただ、一つだけ変わった事があるとすれならばそれは 許そう と少しだけでも思える様になった事だ。

ボクは強い 強くなければならなかった。だから今日も明日も強くなる為に息をしている 得る方法が前と変わらなかったとしても、変われていると信じて 一人の少女として息が出来る日の為に。

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