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逃げ水

作者: 索☆創

 夏の高原は昼下がりは涼やかで。


 散歩するにはちょうど良い。


「あれ、なぁに?」


 白い服に、麦わら帽子。


 昔の私の望みの衣装の。


 可愛い、可愛い、娘達。


 指差す先には夏の輝き。


「逃げ水よ」


 それは夏の蜃気楼。


 追っても届かない儚い幻。


 駆けて行く、幼い姉妹の。


 帽子の赤いリボンの後を。


 ゆっくりとついて歩く私。


 通り過ぎる先の。


 散歩道沿いの花壇に。


 潤いを撒くホースには。


 ちいさな穴が密かに隠れて。


 ほとばしる先端に大きな虹を。


 穴からピューッっと吹き()でた。


 霧は秘密の小さな虹を架けている。


 ん?


「ママー!」


 娘達がこちらに振る手が。


 "何か"の引っ掛かりを外す。


 暑い最中、働く旦那に。


 南無南無、感謝の合掌。


 静に娘に手を振り返す。


 私は優雅な夏の貴婦人。




「きゃー!」


 きゃー? 


 娘達が逃げ水(蜃気楼)に。


 なぜか追い付いていた(・・・・・・・)


「ギャー!」


 白いワンピースがー!


 止めて、ヤメテ、止めて。


 パシャ、バシャしないでー!


 スカートが両足に絡まる(をたくしあげて)


 飛んだ麦わら帽子が首に紐で(を絞めて)


 三人お揃いの服を。


 泥汚れから救うべく走る私の先を。


 ざまぁ。


 酔ってるんじゃ無いよ、と。


 思い浮かべ(舌を出し)た幻の旦那。


 その顔を映した本物(逃げ水)が。


 すいーっと滑らかに遠ざかって行った。

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― 新着の感想 ―
[一言] 前半と後半でガラリと変わるの、最高ですね! 前半のゆったりまったりとした、輝かしい夏の時間。可愛らしい娘さんたちとのほのぼのとしたやりとり。 が。 あらら~っ!!  親としては分かる…
[良い点] 企画より拝読いたしました。 アレって逃げ水っていうんですね。 まさか蜃気楼に追い付くとは思いもしなかったでしょう…… まあ、子供は水遊び好きだし、仕方ありませんね^^ ちょっと不思議で明…
[一言] こんにちは。 夏の光企画から来ました。 無邪気な子供と、現実的な母親との対比が面白いですね。 自分も昔、お出掛け前に用意された一張羅を来て遊び回ってゲンコツ食らったなぁと、この詩を読んで思…
2020/09/09 12:37 退会済み
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