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兄妹勇者の回想録  作者: 水管 みく
第一章
9/11


 翌朝俺達は目を覚まし朝食をとりながら会話をしていた。


「少年達ともこれが最後の食事になりそうだな」


「ですわね、短い間でしたけどなんだか寂しくなりますわ」


 最後か……この人達には本当にお世話になった。お礼を言うのが礼儀というものだがそれよりも寂しさの方が上回っていた。


「そうですね……俺も寂しいです」


 本当はこのまま一緒に着いていって何か手伝いたい、だが俺は完全に足手まといだ。それに秋華もいる、彼女を危ない目に合わせるわけにはいかない。


「そんな、悲しい顔すんな。これが一生の別れになる訳じゃないんだ」


「そうね、生きている限りまた会えますわ」


 彼等にそう言われたが、俺の寂しい気持ちは変わらなかった。

 

 その後俺はその気持ちのまま食事を終え部屋へと戻り出発の準備をしていた。


「お兄ちゃん、支度はできた?」


「待ってくれ、あと少しだ」


「もう早くしてよね、私先に行ってるよ」


 彼女はそう言うと、部屋の扉へと手を掛け部屋の外に飛び出していった。

 元気な奴だな……秋華は寂しくないのだろうか? いや、俺が引きずりすぎなのだろう、俺も気持ちを切り替えなければ。

 そう思い俺も支度を終わらせロビーへと向かった。


「これは秋嶺様に秋華様おはようございます。外で既にセチル様達がお待ちですよ」


 ロビーに着くとラナクは俺達に挨拶をして、彼等の居場所を教えてくれた。


「そうですか、ありがとうございます。ラナクさんにもお世話になりました、また機会があればよろしくお願いします」


 俺は彼に一言挨拶をして外へ向かった。



「お、来たな少年達それじゃあ行こうぜ」


 彼は俺達に気づくと王宮に向かって歩きだした。

 ……これで彼等の後ろ姿を見るのは最後か、俺もいつか彼等のように強くなれるだろうか。なんて思っていると彼はまた口を開いた。


「あ、言うの忘れてたがちょっと寄り道してから行くぞ」


 彼は思い出したように俺達にそう言い、少し先にある武器屋へと入っていった。


「あの、ここに何しに来たんですか?」


「ん? ああ、少年達に武器を買ってやろうと思って寄ったんだ」


 彼はそう言って近くにあった剣を指差した。


「それは初心者用の剣だ、少年にも扱えるはずだぞ」


 俺はその剣を片手に取り剣を抜き軽く振った。

 意外に軽い、これなら俺にも扱えるな。そうして俺は鞘へと剣を戻した。


「お、様になってんじゃねえか。それは俺からの選別だ」


 彼は店の親父を呼び剣の代金を払って店を出ていったため俺もその剣を腰に下げ店を出た。

 ちなみに秋華はコリンさんにスティックと指輪を2つ買って貰っていた。


「ありがとうございます。大切にします」


「いいってことよ、いざって時に武器の1つでも無いとなにもできないからな。それはその時のための物だ」


 俺がお礼を言うと彼はそう答えて王宮へと再び歩きだした。

 

 しばらくして俺達は王宮の目の前へとやって来ていた。


「うっわぁー、おっきいお城すごーい」


 圧巻だった。開いた口が塞がらないとはまさにこの事を言うんだろう、現に秋華は口が開きぱっなしだ。


「こんな所で驚いてたら中には入れねえぞ、中はもっと綺麗だからな」


 彼はそう言って入り口に立っている門番に話しかけにいった。


「依頼と向こうの状況の報告に来たぜ」


「お疲れ様ですセチル様にコリン様。ただいま門を開けます」


 すると「ガッシャン」と門の開く音がした。


「どうぞお通りください」


「あんがとな、少年達いくぞ」


 彼は門番に一言お礼を言うと俺達に手招きして王宮へと入っていったため、俺達も急いで彼等の後を追い王宮へと入った。


 王宮の中も素晴らしいものだった。部屋の数は数知れず、壁には何の絵かは分からないが絵が全てに書かれ、使用人だろうかメイド服を着た人達が沢山いた。

 ……いや、まさかこんな所に来ることになるとはな……日本にいる時だったら絶対ありえないよな。などと思ってる時だった。


「お姉様ー!」


 と、何処かで聞いたことのあるような声が聞こえてきた……嫌な予感がした。


「あら、エフィナじゃないの久しぶりね」


 コリンは走ってきた女にそう言い言葉を続けた。


「そう言えばあなたまた王宮を抜け出したそうね、さっき門番の人に聞いたわよ」


「違うわよ、お姉様が帰ってきた情報を手に入れたから会いに行こうと思っただけだわ」


 エフィナと呼ばれるその女は言い訳がましく彼女に言葉を返した。


「はぁー、あなたは変わりませんね。本当は外に遊びに行きたかっただけでしょ」


「……でも会いたかったのは本当ですわ」


「そうですか、会うのは一年ぶりですものね」


 彼女達はしばらくその場で話をして後ろの俺達に目を向けてきた。


「そうでしたわ、エフィナにも紹介するわね。後ろの二人は私達の仲間で秋嶺と秋華って言うのよ」


 コリンが俺達の事を紹介すると彼女は一目散に俺の所にやってきた。


「あー! あんた昨日私にぶつかって来た奴じゃない」


 ……やっぱりそうだったか。昨日の服とは明らかに違うが声と顔が一緒だもんな、さてどうしたものか。


「あら、エフィナ知り合いだったの? それなら話は早いわ」


「知り合いじゃないわよ」


 彼女は少し息を荒くして昨日あった事をコリンに説明した。


「まぁまぁ、それは災難でしたね秋嶺さんうちの妹が申し訳ありません」


 彼女が話を終えるとコリンが俺に向かって頭を下げてきた。


「なんでそうなるのよ、悪いのはあいつでしょ!」


「いいえ、あなたが悪いわよ。ほら! ちゃんと謝りなさい」


 コリンがそう言うと、彼女はばつが悪くなったのかその場を去っていった。

 ……良かった、これ以上面倒なことにならなくて。


「もぅあの子ったら、本当にごめんなさいね秋嶺さん」


「いえいえ、自分も悪いところは有りましたしお互い様です」


「そう言っていただけて嬉しいですわ。あの子剣の腕は一流なのにああいった所はまだまだ子供なんですのよ」


 その後彼女はあの女もといエフィナについて話してくれた。

 エフィナ・ロピス・クラネト18歳、クラネト家の第2女として生まれ、将来は王宮に仕えるため4歳の頃からしっかり指導してきたそうだ。ただ少しやんちゃのところがあり、今回のように抜け出したりは昔からしょっちゅうあったそうだ。

 そんな彼女だったが1つだけ他と比べてずば抜けていた事があったという、それは剣で戦うことすなわち騎士としての才能だ。彼女はその後も剣の技術を上げ15歳になった時に王宮騎士になったらしい。

 そして今はその剣の才をさらに延ばし王宮騎士副団長としてこの王宮に支えているそうだ。

 ……あいつが王宮騎士副団長とかこの国は終わりなんじゃないかと思ったのは秘密だ、コリンさんにも失礼だしな。


「後はあの勝手に行動することを直してくれればあの子も立派ですのに」


 彼女は説明が終わるとため息混じりに言った。

 俺にもその気持ちは分かるな。俺達は姉妹ではなく兄妹だが少なからず妹に直して欲しいところはある。ただ言ったところで直らないのも事実、そうなるとだんだん心配になってくるのである。彼女もきっとそういう気持ちなのだろう


「妹がいるって大変ですね」


 俺はそう一言彼女に言って秋華へと目線を向けると、すっとぼけた顔をして俺を見ていた。

 ……そういうところだよ、直してほしいのわ。と、心の中で思い再び廊下を歩き出した。


 それからしばらく廊下を歩いていると大きな扉が見えてきた。心なしかその扉は威圧感を放っているように感じた。

 

 それにしても随分と大きな扉だな、まるでこの国の王がいるような感じの扉だぞ。でもそれはないか、セチルさん達は依頼の報告に来たんだしきっと何か重要な施設かなんかだろう。と、俺は結論づけ彼の方を見た。


「少年達は入ったら端の方にでも立っていてくれ。後、少年達はあの焼け野原での生き残りってことにするから話合わせてくれよ」


 彼はそう一言俺達に言うと扉へと手を掛け扉を開いた。するとそこには二人の人の姿があった。

 一人はまるでオーラでも纏っているのか凄まじい威圧感が感じ取られる男。

 もう一人は整った顔に均整の取れた手足、まるで宝石のように美しい女。

 その二人が椅子へと腰掛け座っていた。


 そう、そこは王座の間であった。


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