世界創世
ある日突然、世界は統合された。
全ての人類が手に手を取り合い、或いは自らの敵を滅ぼしひとつの国家になった。―――訳ではない。
世界とは一つに見えるが実の所、複数の可能性とIFにより出来ている。ヒトが想像しうる限り世界は存在していると言っても過言ではない。
人間たちが夢見る剣と魔法のファンタジー世界、超科学により実現するSF世界、今なお存在を完全否定できない神や天使、悪魔が存在する世界、人が思いつく限りの世界は認識出来ていないだけで存在しているのだ。
その認識出来ない筈の世界がある日突然、何の前触れもなくすべて統合された。
詰まる所それは―――
「え?」
「GuRaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa」
「ヒッ!」
「ブモ―ーーー!!」
「くぁwせdrftgyふじこlp!?」
――――未曾有の大混乱である。
全ての知性ある種族たちは瞬きにも等しい時間で統合された世界に驚愕し、混乱した。しかし混乱はそれだけでは留まらない。
何故なら幾多の混乱も幾億の驚愕も、お構いなしに世界に声が響き渡ったからだ。
「世界の統合なんぞ気まぐれだ。ルールは一つ『自我と知性ありし者のあらゆる殺傷、戦争、略奪を禁ずる。』以上、強制力が働くからな、力無き者は従うのみだ。因みに言語だけは統一してある」
そのたった一言の発言を残し創設神―否、統一者と思われる者は沈黙した。
しかし与えた衝撃は測り知れない。何故なら声を聴いてすぐにそれぞれの世界で神と呼ばれ崇められ、或いは事実世界創世をおこなった創世神達がおこなった再創世を、全く受け付けなかったからだ。
それは彼の神々よりも力ある存在がこの世界を創り上げた事を立証し、同時に何人たりとも『ルール』を覆すことが出来ないと言う証明になった。
かくして知性ありし者達は空には太陽と月、星以外に島が浮き、ドラゴン、フェアリー等の有翼種が飛び交い、霊峰の裾野以上の森が各地に広がり長寿の種が住まう、迷宮が出現し不可思議な石を落とす獣が徘徊し、夜を退けるが如く明りの灯る都市が存在する。そんな様変わりした世界で生きていく事となった。
世界統合が行われたこの日は後の世に、創世神への盛大な皮肉と畏怖を込めて『混沌の日』と呼ぶようになった。