回復魔法の研究開発 ご協力いただきありがとうございます
感想、評価をいただきありがとうございます(*´∇`)
読んでくださる全ての方々へ感謝の祈りを捧げながら、本編第83話を投稿させていただきますー!
これからも皆様に楽しんでいただけると幸いです(*´∨`*)
前回のあらすじ
久々?の魔力酔い
妹に泣きつく兄の図
中級ポーション錬成
「―――――――――――――――――!!!」
アゴが外れないのが不思議なくらい大きく口を開けっぴろげながらぱっくんぱっくんする老婆。名をマーグルという。ぱっと見山姥か奪衣婆、もしくは雪婆ないしは火消し婆、砂かけ婆、姥ヶ火・・・うんぬんかんぬんetc.。つまりはまぁなんだ。酷く醜い面の妖怪レベルの婆がいるということである。
更にはそんな醜女が地団駄もご披露されているのだが、その音が殆ど聞こえない様は往年のチャールズさんのようだ。あ、こっちじゃ伝わらんか。いわゆる彼の大御所、チャップリンさんの方ね。
「マスター、その説明だけでは不十分なのでは?」
「そかな?じゃあ、チャールズ・スペンサー・チャップリンさんならおk?」
「いえ、それも伝わり辛いかと。むしろどうして名前が伝わり辛いのだと思ったのでしょう?」
「あ、それもそうか。名前くらいみんな知ってるもんね。でも無声映画で有名なんだし伝わるでしょ?」
つまりはそういうことなんだが、わかっていただけると思う。聞くまでもないことなんだけどわかるよね?ね?
ちなみにチャップリン氏のスペンサーってミドルネームがなんとなく格好いいと思うのは俺だけだろうか?喜劇王とか言われてるのにスペンサーとか卑怯じゃんね。いまは関係ないんだけどさ。
「てかそれよりさっきからかなりの勢いで俺のMPが減ってる感覚がするんだけど何にそんなに使ってるん?」
思えばカナデさん外界デビューの折りにMP使用許可出したけどその上限値とか決めてなかった気がしないでもないや。敵とか謎の存在とかに吸われてないならカナデさんなんだろうけどいまそんなに使うことあったかな?醜さ100%の老婆が発する音声をハッスルしながら妨害してるくらいなハズなんだけど。
「・・・まさか・・?」
「はい、マスターのご推察通りです。マーグルが発する騒音が彼の有名な「出てけおばさん」を凌駕するほどにやかましく、相殺するのに大変苦慮しております。正直うるささ災害級です。」
カナデさんが言うにはそろそろ100デシベルに届きそうなくらいらしい(電車通過時のガード下相当)。それって麻雀牌をかき混ぜる時の音(80デシベル相当)どころかブルドーザーなんかの大型工機くらいうるさいってことじゃん(90デシベル相当)。ヤバくね?
「そんなになの?はぁ・・・じゃあまぁ、相手にしたくないけど一応相手してみるか。じゃないと魔力足んなくなっちゃうし。カナデさん相殺解除で。テト、少し煩くなるから耳ふさいでおいて。」
「は、はいなの!」
「かしこまりました。では切りますn」
「きいいいいぃぃぃぃてんのかあああいいいいぃぃぃぃぃぃいいいいっっっっっ!!!!!」
「うるっさっ!ちょっとマーグル婆さん!うるさい!うるさいよ!!」
耳を殴りつけるかのような大きな声が鳴り響く。戸は揺れ機材が弾みガラス製品なんか壊れかねない。煩さドラゴン級かもしれない。
「あああんんっ??あぁっっ?あぁ、やっとかい!人様の声を消すだなんて随分けったいなことしくさってくれたねぇ!!ええぇっっ???」
絡み方がヤーさんのようだ。それにしてもなんて大きな声を出すのだろう。元気すぎて老人ホームじゃ煙たがられる典型というか代表的なタイプだな。これなら同じ五月蠅い声でも金髪ボインなチャンネー貴族の方がずっといい。明らかにいい。高らかにいいんだが目の前にいるのは・・・うぅ・・・orz。
「え?だってこれから作業始めようって時にうるさかってん。仕方なかってん。」
とりま、いち社会人としか恥ずかしくないように簡潔な説明をしてあげてみた。ヤーさんVS社会人。構図的には絶望感がパない。
「そりゃあ、あんたらが『かなで』だかなんだか知らないヤツのことをちゃんと説明しなかったからさね!ほら!さっさと説明おしよ!!」
「うわっ!やめて!ばっちぃ!ツバが臭い!息もヤダ!!見た目もキツい!!!」
ヤーさんの攻撃 汚臭振りまく雑菌の温床液 をはなった!
社会人 に 200 のダメージ!
社会人 は 視覚的な恐怖を覚えた。
「余計なお世話さね!それより早くおしよ!これ以上は待てやしないよ!!」
叫びながらズンズンと迫りくる汚臭そのもの!ツバと口だけが臭いハズなのになんだか全身が汚く臭く思えてきた!ヤダもうホントムリバッチィ!!
「く、くるなバカァ!!『ドライヤー』全・力・展・開!!か~ら~の~・・投石っっ!!!」
ビュウンッ ゴッ!!!
「ぐふぉおお?!」
額目掛けて高速で飛んで行った石が見事にストライクった。マーグル婆さんは突然のことで驚く間もなくすってんころりん大往生。ヤバい!や、殺っちまったか?
「あまりの恐怖に魔法使ってまで加速させてしまった・・・。い、生きてるかな?」
無意識的に発動させた割りにそこそこいい感じに投擲をサポートしてくれた魔法には感謝しかないが、これは見るからに事件である。なんせ老婆が頭から血を流して倒れている。まるで死体にしか見えない。
「た、大変なの!あぁ、マーグルお婆ちゃんの頭が凹んじゃってるの!ソ、ソウ!ポーションあるの??!」
「おおっ!そうだそうだ!まだ望みは捨てちゃいかんな!ちょっと修理しようそうしよう!」
大慌てで下級ポーションを振り掛ける。えっ?中級じゃないのかって?だって死んでたら勿体な・・・ケフンケフン。だって死んでたら勿体ないじゃん!
「何故言い直したのでしょうか、マスター?」
いや、なんかなんとなく?俺の好感度とか下がるような気がしたんだけど今さら下がりようがないだろうから別に本心述べればいいかなって?てか心の中だしセーフかなって?
問答をしながらもバシャバシャとポーションをぶっかける。うっすら光る緑の光がとてもキレイだ。マーグル頭が四散しなくてよかったとホントに言わざるを得ない。
《・・・マーグルが問題なく呼吸をしていることが確認できたから大事無いと判断したように見えましたが?》
カナデさんが何か言ってくるがそれは買い被りすぎだ。完全に殺ってしまった感満載で証拠隠滅が頭をよぎったくらいに冷静だったし。ここではないどこかへ行くか、むしろマーグル婆さんが穏便に旅立ったことにして我が物顔で居座るかの2択までは一瞬で決まるくらいには沈着だった。
「・・・へっこんでる部分の治りが悪いな。『生活魔法』『疑似回復』。」
何事もないかのような顔をしながらマーグル婆さんへ残りのポーションをかけつつ人体じ・・・ゴホンゴホン。霊験あらたかな、古来より伝わる『生活魔法』系列の回復魔法を発動。ポーション成分の魔力性質を真似て対象のケガを治しつつ、更に同時進行でポーションを使ったらその成分を強化するという素敵魔法をしゃらんらー。実に素晴らしい魔法である。発明者はきっと聡明なイケメンに違いない。
すると、みるみる内に額の裂傷が塞がり多分気のせいだと思われた陥没痕を含めた怪我の痕跡の一切を隠滅。これは裁判で勝つる!とほくそ笑んだのも束の間、カッと眼を見開き暴れだすマーグル婆さん!そんなに早く起きなくていいのに!
「あ"--------!!!あ"---あ"----あ"------!!!!」
「うわっ!」
「ひぃっ!!」
頭を押さえてゴロンゴロンとのた打ち回る様は軽くホラーってる。ちな悲鳴1は俺で2がテトにゃんね。気持ちはわかるけど「ひぃっ」って・・・。
「少々劇的に治しすぎて神経が過敏になっているのと、皮膚が成長しすぎて周囲の細胞を圧迫しているようですね。ちなみに皺のように見えているのは皮膚の厚みが異なる部分ですので、通常の皺とはものが違います。」
「えっ、なにそれこわい。」
サラッと伝えられた内容が普通に怖かった。どうにかしてヒール的な魔法を作ろうと頑張ったんだがどうやら失敗してしまったらしい。あ、違うや。古代の魔法は失敗作だったらしい。恐ろしい魔法を開発して後生に残した困ったお方がいたもんだよ。だから俺のせいではないのです。まる。
「開発したのはマスターですので、この惨状の責任はマスターにあるかと。」
んむー。言い逃れ失敗。いやでもだって!いけると思ったんだもーん!現に俺の身体では大体成功してるし!『HP回復強化(小)』のお陰かも知れないけどさー!
「かもではなく事実その通りです。」
「ソウ、何かしたの?」
おうっふ。テトにゃんにバレないよう心の声に留めておいたのにカナデさんがさっきから表でトークするのをやめないからバレかけてーら。とりま『集音探知』を切ってっと。
「いやいや、なんにもしてないよ?マーグル婆さん大丈夫なのかなぁ?ってカナデさんと話し合ってただけだから。うん。」
「あからさまに嘘とわかることを言わないでください、マスター。」
「うぇっ?!なんでカナデさん話せるの?!」
「マスターが魔法を解除するタイミングに合わせて術を再起動させたにすぎません。カナデに一部権限を譲渡いただいたのでそれくらいのことは息をするより自然とできます。」
「当たり前にそんなことしないでよ!てかできちゃダメでしょできちゃ?!カナデさんのチートっぷりおかしくない?絶対なんかずるしてるでしょ!!」
一切息をする必要のないカナデさんが息をするより楽にって言ってくるのは謎すぎるが、それ以上にカナデさんの高性能っぷりが壊れの領域に片足突っ込み始めた件の方が重要だ。このまま放っておいたら新世界の神にでもなりかねない。
「ソウ!マーグルお婆ちゃんのこと治せないの??」
「えぇっ?!そ、そんなこと言われても・・・えーどうしたらいいかな?」
さっきカナデさんが怪我の状態を分析してたからそれを参考にすると、
「うう~んと、皮膚・・を剥がせば?圧力は治まる・・・かな?もしくは単純に沢山の穴開けたり?あ、神経もどうにかした方がいいかも?」
「ひ、皮膚を?!そんなにマーグルお婆ちゃんの頭は悪い状態なの?!」
「消毒の概念がロクに発達していないこの世界でどちらかの対応を行えば、アフターケアまで完璧にこなさないと遅かれ早かれ天に召されるでしょう。破傷風などの感染症を甘く見てはいけません。」
いやいや、カナデさん冷静に話しを進めようとしてるけどテトにゃんのマーグル婆さん頭悪い発言はイジんないの?あ、イジらないすか。そうなんすか。
「んーそんなに悪くないと思うんだけど、なんかね?ケガを勢いよく治しすぎて逆に痛くなっちゃったみたいで困ってんだよね。どうしようカナデさん?周囲の古い皮膚とダボついてる部分とかを少しだけ取ってみようか?」
「それが無難な治療方法かもしれませんね。消毒はしっかりとして、先ほどの『疑似回復』を少し改善して使えばなんとかなると思われます。」
改善って言われてもなぁー。何がいけなかったのかをまた考察しないといけないんだよねー。そもそもなんでポーションを連続で使ったらダメなのかってのの仮説は出したけど、実はまだ実験が済んでないんだよね。真面目な話し。
ポーションはあくまで傷をめっちゃ早く回復させるだけのエネルギーの塊なんだよね。そんでもって効能がしっかり出るようにするための仕掛けとして、対象へ回復性質を持った魔力だか術式だかが絡みつく仕様になってると睨んでる。
だから続けて使うと前のと効果がまざったり干渉しあっておかしなことになるってのが俺の仮説。多分間違ってない、ハズ。矛盾ないよね?大丈夫だよね?
んで、俺の『疑似回復』はこのポーションに初めから備わってる余計かもしれない『まとまわりつく』っていう効果を抜いた回復性質オンリーの魔力を創ってから、スキル『魔力操作』で対象へ浸透させていくようにしてるだけのもの。
単純作業だから手は離せなくなるけどある程度自由が利くし回復しすぎそうなところの魔力を薄くしたりすることで体裁を保ってみるって試みの魔法だ。実は結構高度なことしてたりするのだ!えっへん!
まぁつまり、この手作業部分がちょっと雑でムラが出来ちゃったってことと、普通にポーション使うのよりも何倍速かで傷が治ったせいで神経過敏痛?により苦しむはめになってると考えられそうなんだよ。あ、そうか。なら足りないのは設計図か!
再生後の完治姿をイメージしてそれに沿って魔法を発動すればキレイにできるかもしれんな。そこら辺をしっかりと定義しなかったのが今回の失敗の原因かも知れん。いま思えば大体こんなもんだろ的な適当な作業だったからダメだったに違いない!冴えてるな俺!
「ふむ。なんとかできそうだな。テト、ちょっとお湯わかしてきてくれない?マーグル婆さんに使うからさ。」
「わかったの!すぐに持ってくるの!」
聞き分けよく飛び出していくテトにゃんを尻目に早速治療を再開する。ちょっとこれからやる作業はテトにゃんに見せるのは忍びない光景になると思われるので・・・てか俺もできれば直視したくないもん。昔病院で自分の指縫われるのだって眼を逸らしてたタイプだもん。なんかこっちに来てから全然平気になったとはいえ、やっぱ気分は良くない系だけども。
でもいまは俺がやらなきゃならんので我慢してイヤイヤでもやるのだ。変わらずのた打ち回っているマーグル婆さんのおデコを患部の真皮を残して削ぎ落とす。スパパって感じ。当然ミスが許されないのでメスの代わりに使い慣れたロングダガーちゃんを使った。しっかりと『冒険級火属性魔法』で消毒してラ○トセーバー作成でお馴染みの『武器強化』で強化した状態なので安心して作業ができる。使い慣れた道具って素敵。
ちなみにマーグル婆さんの悲鳴は耳障りなのでカナデさんが消去しっぱなしなのは言うまでもないだろう。お陰でMP消費がヤバいことになってる。そろそろMP切れそうなんですけど。
更に流れ作業的に周囲の皮膚にも軽く切れ込みを入れて遊びを作る。隠し包丁みたいなもんやね。かーらーのー、すかさず『疑似回復』を発動して新たな傷口を治癒していく。この際注意しなくちゃいけないのは先ほどのような不格好な回復にならないように皮膚が均一になるよう気を付けるのと過剰回復によって細胞の壊死が起こらないようにすること。あと、神経が過敏にならないように神経部分はゆっくりと再生させることかな。やること多くてやべぇなこれ。もうなんか心折れそうだよ。
しかも今回は連チャン回復になるのでポーションなしでやるという苦行。MPの消費がスゲェやべぇことになってることも追記しておきたいがそこはまぁ若干自業自得なので良しとしよう。全ての責任をマーグル婆さんに押し付けたりしないあたり人間できてるな俺。褒め称えられて敬われたり跪かれたりするレベルじゃないコレ?(自画自賛)
「元はと言えばマスターが負わせた怪我が原因なのになぜそうも開き直れるのか、カナデには不思議でしょうがないです。」
「原因というのはだねカナデさん、最も最初に起こってることなんだよ?だから今回の件で言えばこの街のポーションが枯渇したこととマーグル婆さんがすぐに火傷治療特化用ポーションを作れなかったことが諸悪の根源だね。だから俺、悪くない。Q.E.D。」
「いくらなんでも暴論すぎます。そこまで遡ってしまっては別件です。責任逃れにしてもやりすぎだと思います。」
「んむ~、やっぱそうかな?いけるかと思ったんだけどなー。」
どうにかして俺のせいじゃないって言える逃げ道が欲しい。じゃないと普通に傷害事件じゃないか?コレってば。
「弁解の余地なくそうですが」とカナデさんがツッコミを入れてくるが諦めるにはまだ早い。俺は最後まで戦う所存だ!勝ち取れ無罪!さようなら、有罪!
「うぅ・・・ぐぬぬ・・んが・・あぁぁ。」
「あ?あぁ、いつの間にか治療が終わってたわ。」
考え事に没頭していたら傷口が肌艶はともかくキレイに塞がったマーグル婆さんのおデコが眼に入った。どうやら今回は激痛に苛まれていないようで穏やか?に寝息を立てているみたいだ。まるで生きてるみたいに見える。
「どうやら成功したみたいだな。」
「・・・当たり前ですが生きてます、マスター。」
冗談が通じないなぁ。横たわる老婆がいたら誰だって呟くに決まってるセリフなのに。
「ソウ!お湯持ってきたの!」
そこにタイミング良くテトにゃんがお湯を持ってきてくれた。が、はてさてふむふむ?どうやってあの熱湯を治療行為に使っていると誤魔化せばいいのやら。それが問題だ。
とりま択一式にしてみるとこんな感じかな。
①熱湯をマーグル婆さんにかけて起こす
②使った道具やロングダガーちゃんを煮沸消毒してる風を装う
③熱湯で温めた手拭いをマーグル婆さんに乗せる
④血塗れになったマーグル婆さんをヌルいくらいの温タオルで拭いてやる
⑤マーグル婆さんを熱湯につける
「・・・見た目的に治療してる雰囲気がでるのは③だと思うんだけど、どうだろうか?」
「あまりに無体なことを続けているとテトに嫌われると思いますが。」(ぼそっ)
「えっ、普通にイヤですけど?じゃあはいふざけるの即やめますムリですはい。④にします④に。」
まったく。カナデさんてばつい先ほどニコの衝撃告白を妄想して傷ついてしまった柔肌のような俺の豆腐メンタルをなんだと思っておられるのか。嫌われるとか想像するより先に聞いただけで吐きそうなくらいイヤなんですけど?
「なんでマーグルお婆ちゃん血塗れなの!!?」
あ、治療に夢中でマーグル婆さんが更に汚れてることに気が付かなかったわ。失敗×2☆
「よく気が付いたね、テト。ちょーっと治療の過程でばっちくな・・・血で汚れちゃったマーグル婆さんを雑巾で・・・そこら辺の布で拭いてキレイに(ならないと思うけど)してあげようか。」
「治療はもう終わってるの?じゃあ、おケガはもういいの?」
「モチのロンさ!あとはキレイに(できたら)してあげて治療は終わりだよー。」ニッコリ
嫌われたくない一心で必死になって自己弁護してみてるんだけど頭が働かないのか知らんがうまいこと言葉が出てこないからさぁ大変。ちゃんとテトにゃんを納得させられてるんだろうか?さっきから変にダルくて思考がまとまり辛い。疲れてんのかな?
そんな疲れた身体にムチ打ってなけなしの体力と精神力を振り絞りながらマーグル婆さんを手早く拭き掃除していく。だがしかし、拭けば拭くほど臭くなる気がするのは気のせいだろうか?小学生のころに使っていた木製の机を強制的に懐古させられる。
「しわしわだと思ってたけどホントに枯れ木だったのかな?節くれ立ってるしなんか固いよ?」
「マーグルお婆ちゃんはとーっても細いから、固いのも仕方ないと思うのー。」
拭き掃除を手伝ってくれるテトにゃん。行動も発言も優しい。多分優しい。よくわからんけども。
「一通り老けたしこんなもんかな?あとは放っておけば勝手に眼も覚めるでしょ。」
「マスター、誤字ですか?」
「いいえ、私はわざとです。」
「????」
よくわからないって顔で首をコテンとする様子が俺的にお気に入りです。うふうふうふっふー。眼福眼福雨あられ!
「さて、夜も遅くなったしそろそろ寝るか。マーグル婆さんにはこの(犬小屋で使ってるような)毛布でもかけときゃ充分だろ。」
なんか作業部屋の中に転がってた毛布をかけてあげる俺優しい。色んなシミやホコリがついてるけどきっと普段からこういうの使って寝てるんだろうと思われるので問題が見当たらない。置いてあるってことはそういうことなんだろうし。
「マーグルお婆ちゃんの治療が無事に済んでよかったのー!」
ニッコニコのテトにゃんの笑顔に心が癒されていく。猫耳もピンと立ってて可愛くて仕方がないので優しくナデナデしておこう。う~とか言いながら眼を細めるところがなんか猫っぽくていいな。
「今日はソウと一緒に寝れて嬉しいの!ニコちゃんも一緒なのー!」
はい?なんで一緒に寝ることに?最近は俺のしっかりとした情操教育のお陰でそんなこと言わなくなってたじゃない。忘れちゃったのかな?
《先ほどマスターが同衾すると明言していましたが覚えていませんか?》
えっ?覚えてないけど?言った?言ったっけそんなこと?いやいやだってちょっと落ち着いてよ。同衾はよくないでしょ同衾は。俺ら兄妹だよ?未成年だよ?まだ結婚してないんだよ??
カナデさんがなんかよくわかんないことを仰っているが、テトにゃんの様子を見るにいつも以上に期待の眼差し。あれあれー?なぜなにどうしてこうなったー??
その後、働くことを放棄した頭じゃどうしようもなくなって考えることをやめ、結局一緒に寝ることにした。てか兄妹ならむしろ一緒に寝たってなんも問題ないだろってことに気付いたし。
「はぁ~~~今日はなんか疲れたよー。」
テトにゃんの頭を抱き抱えるようにしつつお耳をほっぺたでグリグリグリ。あーきもちえー幸せやー。
「疲れたときは、しっかり休むのがいいの!うにゅ~ソウいーにおーいっ!」
テトにゃんが胸元にグイグイ来る。グイグイしながらクンカクンカされるがテトにゃんの方がいい匂いするにゃんねー。はぁ~たまらんばい。ハァハァハァハァハァハァ
そんな感じでマグマグしてたら先に寝たハズのニコが後ろからぎゅってくっついてきた。えっ、なにこれここが天竺ですか?天国ですか?姉妹丼とかさいきょーなんですけど?
これも日頃から俺が頑張ってるからどっかの神様がご褒美でもくれてるんだろうか?でもこの世界の神ってあのじじーだろ?ならそんなのくれそうにないな。もしかしたら他にも神がいるのかもしれない。けどま、そんなのどうでもいいか。
テトにゃん体温高くてあったかいし、ニコもポカポカできもちいーっすわーさいこー・・っすわー。・・・なんか・・・・めっさ・・ねむ・・・。
―――――――っっっは!!!?
気付けば朝で何故か知らんが妹2人に腕枕してる現状に激しくポカーン。もうハゲポ。
(いやいやいやいや!何がどうしてどうなった?!カナデさーん?!)
《おはようございます、マスター。昨晩はずいぶんとオタノシミデシタネ。》
(ブフッフォアッッ?!)
嘘でしょ嘘だろ嘘だと言って!!何その意味深!なぜなにどうして?!お、俺ってば記憶にないままヤっちまったの?それなんてLO?!いや待てそんなバハマッ!!モチツケクンクンイイスメル!!
(いやいや、そんなバカやってる場合と違うから!ちょっとちょっとカナデさん!真実を知ってるのは貴女だけなんですのよ?!教えて何があったの!俺はまだ魔法使いなの?それとも賢者なの?!)
《・・・・・・そのような疑問を抱く時点でマスターはクソ虫確定です。あまり幼子に情欲を傾けないでください、月城さん。》
(えっ?あ、えっ?ご、ごめんなさい?)
カナデさんたら信じらんないくらいに冷たい声、出るんすね。一気に底冷えましたけど。なんか色々と怖いんですけど?
テンションが崖を降るどころか千尋の谷へと急転直下しちゃったんでいそいそと朝の支度をすませてお出掛けですよ。朝ごはんもゴルドルさんのお宿へ行ってしっかり食べたから元気っちゃ元気なんだけど、メンブレ状態っすわー。
ホントさっきといい昨晩といい、マジすんませんした。ちょっと調子にのってたかもしれないっす。治療薬できたのが多分自覚なかったけど自分で思う以上に嬉しかったんす。きっとそうなんす。なんて心の中をカナデさんへの言い訳と謝罪で満たしながら食堂を出る。
今日の予定はなんだっけ?思い出せないっていうか考えるのも億劫だよもう。両手にはニコニコツヤツヤ状態の天使が2人。きっとお腹が満たされて幸せだからなんだろうけど、なんとなく何かが引っかかる気がしないでもないのはなんだろう?やっぱり事案が発生してたのかな?俺ってばお巡りさんにタイーホされちゃうんだろうか?ちょっと自分が信じられない。
「あ、ソウさん!よかったまだ居てくれて!」
急に名前を呼ばれて見てみると、息を切らしながらかけてくるおっぱ・・・もといリーフさんがいる。ばるるんばるるんって感じ。何がとは言えません。ええ、私は紳士ですから。リーフさんが転んでケガでもしたら危ないのでじっくり見守ってあげるのがお仕事です。
「メンタルの回復が早すぎませんか、マスター?」
だって心の回復薬みたいなもんじゃん?可愛らしい女の娘が有する神が与えたもうた奇跡の霊峰を望めば誰だって元気になるってもんだよ。いやぁー今日は朝から気分がいいね!さっきまでの陰鬱な気分なんか吹き飛ばされちゃったよ!
「はぁー、はぁー、はぁー。」
「そんなにはぁはぁしてどうしたの?何かお急ぎの用事でもあった?」
「は、はいっ!実はそうなんです!ちょっとソウさんに指名依頼が来ちゃいまして!」
「はい?俺になんで来るんだ?Fランクなんだけど。」
「えぇ、ソウさんはFランクですので達成難易度が高い依頼は指名できないんですが、今回は難しいものではなかったので受理されました!」
受理されましたって・・・俺の意思はどこいっちゃったの?ギルド側で勝手に受けていいもんなのコレ?
「普通俺の意思確認してから受けない?なんで強制イベント的な扱いになってんの?」
「い、いべんと?ですか?」
「いや、そこは掘り下げなくていいや。」
「と、とにかくですね、ちょっとお急ぎで来てほしいんですがよろしいでしょうか?」
「どちらかと言えばよろしくないですね。」
「えっ?!そうなんですか??!」
別に今日の予定を思い出せないからどっちでもいいっちゃいいんだけど、なんかこの勝手な強制感がイヤだからなー。だってこっちの予定とかガンムシとか横暴じゃんね。
「むしろなんでいいと思ったし。俺ってそんなに暇だと思われてるの?」
「あ、いえ、そのぉ・・・そういうことではないんですけどぉ。」
ふむふむ。リーフさんは笑顔が素敵だけど困った顔も可愛いかもしれない。もじもじしちゃってるのもポイント高めです。
「じ、実はですね!あんまり大きな声じゃ言えないんですけど、今回の依頼主の方がちょっと特殊でして・・・。う、受けていただけないとちょっとギルドが困っちゃうっていうか・・・そのぉ・・・。」
ギルドの事情はギルドのことだから俺にはあんまり関係ないんだけどなぁー。でもリーフさんが困ってるなら仕方ない、かな?知らない仲じゃないし、なんか真面目に困ってそうだし。
「とりま話しを聞かせてもらうよ。受けるかどうかはそれから判断してもいいんだし。」
「いえ!そ、それじゃ困るんです!もう受けるってことでお話しが通っちゃってるんです!」
「俺の了承を得る前に決まるとかどんだけっすか。」
ギルドの横暴どころか暴走を誰か止めていただきたい。なんで当人の了承を得ずにもう決まってんのさ?俺が街中にいなかったらどうするつもりだったんだろう?
ちょっとイライラしてきたので依頼主に説教をかまそうかと思い詳しく事情を聞いてみた。どうせくだらない事情なんだろうと思ったらホントにくだらない事情だったから割愛。
でも、依頼主の名前が気になったので会ってみることに決めてみた。だって相手の名前がどう考えてもアレだったんだもん。
「初めまして、ソウさん。僕の名前はエニクス・スクウェア。依頼を受けてくれてありがとう。」
うーん。ギリギリ伏字がなくても大丈夫かな?かなり危ない気がするけどきっと平気だろ。似てるだけで違うし。
「初めまして、スクウェアさん。ちょっと色々とお話しさせてもらいたいんで、そこんとこマジでよろしく。」
これが黒髪黒目の青年、エニクスとの初めての出会いだった。
お読みいただきありがとうございます。
ソウ君とマーグルお婆ちゃんの絡みはどんどんバイオレンスになっていってます。そのうちヤバいことになりそうです。
そしてソウ君の頭はもうダメですね。ちょっとっていうか大分気持ちが悪いです。お巡さーん、こっちでーす!
ちなみにですが、何故かマーグルお婆ちゃんが出てくるとブクマ登録者様が増えまくってビビりました。もしかして彼女が真のヒロイン(絶望)なんでしょうか?ガクブル
まだメインヒロインが決まってないので恐怖を感じざるを得ません・・・。
いえ、ブクマ登録者様が増えて嬉しくないわけではないのですが、なんだか釈然としないというかなんというかで・・・。
最近は年上趣向が強いってホントなんですかねぇ・・・(遠い目)。




