ブレイブストーリーその2
今回はサイドストーリーである異世界勇者物語第2話です。
短めにトントン進んでいます。
豪華、というよりシックとでもいった方が良さそうなしっかりとしつつも雰囲気のある造りの会議室。その中心に煌々と在るシャンデリア。そこには10以上のエルフの首が並べられていた。男も女も居やがるんだと思うが、どれもこれも形が似通っててどっちかわかんねぇ。
そしてどの顔も目を潰され口を縫われていたが、不思議と生きているかのような雰囲気を発していた。いや、実際はありえねぇんだろうが感じる気配?がそんな感じがするってだけだ。変な話しだが生気ってやつを感じやがる。
「・・・すげぇな。」
「こちらの品の素晴らしさがご理解いただけたようで何よりです、アーガード様。」
「意識しないと感じることもできなかったがこれだけ濃密な魔力を放つ魔導具は初めて見たぜ!なぁ、ウー!」
「えぇ。これは素晴らしいですね。非常に興味をそそられます。できることなら持ち帰って解体して調べ尽くしたいくらいです。」
珍しく興奮した様子のウー。フーも呆気にとられてるみてぇだが、ローのヤツの反応は薄い。
「ローは魔力の感知は苦手だったな。それじゃコイツの凄さはわからねぇか。」
「あぁ、俺は魔術的な素養はほとんどねーらしいからな。ただ、なんとなくだがすげーってことくらいならわかるぜ。なんとなくなー。」
あっちにいるときにいくらかやってたゲームで表現するなら俺とフーは魔法戦士みたいな能力で、ウーは完全魔法使い型。ローのヤツは重戦士って感じらしいからまぁ仕方ねぇ。魔法ってのは才能っていうかスキルの構成が大きく影響するって話しだからな。
「なんかあの首生きてるみたいだねー!てか生きてるんじゃないの?スゴイネスゴイネ!流石はG的生物のエルフだね!あはははははははは!!」
「いえいえ、これはそういう次元の話しではないみたいですよ?詳しく見てみないとなんとも言えませんが、恐らくは・・・いえ、やはりすぐにはわかりませんね。もしかしたら魔術によって魂を縛り付けることにより延命に近い事象を成り立たせているのかもしれません。魂!ふふっ!実に興味深い!!」
「相変わらず変なとこで興奮するヤツだな。ところで姫さん、コイツらを使うと全知神様を感じられるって言ってたけどそれってどういうことなんだ?」
「うふふっ。アーガード様、とても良い質問ですね!それでは簡単にではございますが、少しだけご説明させていただきます。」
あ、これダメなやつだな。姫さんがイイエガオで説明を始めるといつも決まってなげぇし。ウーくらいしかまともに聞いてねぇんじゃないか?つか聞いてもどうせわかんねぇしな。
「こちらの装置はまず第一に穢れた劣等種であるエルフというウジ虫共を魔力タンクとして使用するところが画期的且つ秀逸でして必要なのは鮮度の高いエルフの首を特殊な呪法と儀式を用いて切断したのち即座に魂位低界結界へと封印してから召喚魔方陣の応用を以て位相をずらし半物質体でありながら半精神体とするのが大前提ですここですここが重要なのですここのところにこそ我が王家の秘儀がございます何故ならば本来存在しえない不確定性を付与することができるのですからその時点で神の御業に最も近しい術であると言えるでしょうしかしながらそれも全ては全知神様のご加護があってからこそ実現せしめるのですからやはり総ては全知神様の御心のままに行われているという何よりもの証拠であると言えますねまた不確定性を付与することができましたら次にエルフの頭部に集約する全魔力と検体の魂を高圧力下で圧接しますこうすることにより特定の周波数の高濃度エネルギーが放出されるようになりますのでその状態を維持しつつ同時に対象のエネルギーを吸い上げる形を取りますもちろんその際に大量の魔力を損失し検体は壊死まっしぐらとなるところなのですが実はここでもエルフの特性が活かす事ができまして彼らは長寿の生き物ですつまり私達人間種とは比べ物にならないほどに長い時間生きるしぶとい生命力を有しているということですなのでその有り余るくらいにある時間というモノそのものを前借りすることによって魔力の補てんが可能というまさしく動力源になるべくして生まれた――――――。」
「つまり魔力と魂を混ぜ合うようにすることにより生まれる反発力が、混ぜようとする力よりも強いということですね?実に不思議な現象だ!しかもその現象を継続させるために時間を前借して魔力に変換?意味がわからない!だがそれがいい!それが素晴らしい!はははっ!エネルギー保存の法則に反するように思えますが時間そのものをエネルギーにしているとでも?有り得ない!有り得ません!時間というものはあくまでも概念に過ぎないもののハズ!それをあたかも物質か何かのように定義して使い潰すという発想そのものが理解不能だ!もっと、もっと知りたいです!もしかすると私の想定とは違ったナニか・・・そう、ナニかがあるのかもしれません。是非とも実際にエネルギーを抽出している現場へ私を連れて行ってください姫様あぁぁぁああ!!」
・・・ウーのやつ瞳孔開きかけて・・・いや、そっとしとくか。ありゃ手に負えねぇや。
「あ~あぁっ!これじゃいつまでたっても終わんないかもね!お姫もウーくんもやたら話しなっがいんだからさー!」
「まぁな。ああなっちまったら姫さんかウーのヤツが飽きるまで続くだろうぜ。」
「なぁ、帰っていいか?ただ話しを聞くだけなら全員で聞かなくてもいーだろ。面倒・・・このあと用事があるんだが。」
「ローくん嘘へたっぴだねぇ!あははっ!めんどだってめんど!あはっ!」
「ローの言いたいこたぁわかるがいちおう姫さんの呼び出しだし、もう少しくらい待ってみてもいいんじゃねぇのか?」
「でももしかしたらウーくんとお姫どっか行っちゃうかもしれないよ?ウーくん行きたいとこがあるみたいだし!」
「それは・・・困るな。はぁ・・・しゃーねーな。―――――スキル発動、『威圧』!!!」
俺はウーと姫さんに向かって全力の威圧スキルを放つ。
「「――――っっっっっ!!!??」」
並みの魔物なら失神どころか心停止して死んじまってもおかしくねぇくらいのをかましたんだがどっちも驚いただけで全然マイッた様子がねぇ。ま、だろうな。
「その辺りの話しはまたあとでやってくれよ。」
「・・・そう、ですね。失礼いたしました、勇者様方。それではどうぞこちらへ。立ち話もなんですから座ってお話しいたしましょう。」
「アーくんおっかないんだー!ウーくんびびってるー!へいへいへーい!」
「こほんっ。私のことはともかく姫様にスキルを向けるのは好ましくないな。相手は王族だぞ?アーガード、君は少々短絡が過ぎるんじゃないのか?」
「あぁ?そりゃおめぇらが長々と話してたから仕方なくやっただけだろ?それに、攻撃スキルは使っちゃいねぇんだからいーじゃねぇか。なぁ?」
「はぁ・・・まったく。そう考えることができるのなら、次からは声をかけるようにしてほしいものだね。」
「あぁ?話しかけて止まらねぇからやってんだろ?わかれよそれくr」
「アー、ウー、それにフー。席につこうぜ?俺ぁもう疲れちまったよ。」
盛り上がってきた所でローのヤツに止められちまった。普段のんびりなくせしてこういう時だけ動くの早いよなお前。
「ローくん一番体力あるのに?あははっ!嘘はよくないよーん?」
ローの仲裁?とフーの能天気さもあってこの場は収まったがやっぱダメだな。どうしてもウーと言い合うとよくない方に進んじまう。属性の相性が絡んでる、なんて聞いてはいるが実際どうなんだか。単純に考え方が違い過ぎるからだろーよ。
「それでは勇者様方、改めまして本日お伝えしたいことはたったの3点です。ですが、この3点は非常に重要なことですのでしっかり覚えて忘れないようご注意ください。」
姫さんがほそっこい指を1つ突き立てて胸を張る。
「まず1つ。勇者様方には全知神様の天啓を受けていただきます。」
更に1つ指を立て、続ける。
「次に2つ。我が祖国、『聖なる光の降る国』内で確固たる基盤を築いて頂くために爵位についていただきます。」
最後の指を1つ立てると、ニッコリと微笑みながら姫さんは言った。
「そして最後に3つ。この世界の浄化を始めましょう。」
「浄化?浄化ってなんだ?掃除でもすんのか姫さん?」
「お掃除・・・えぇ、概ねそのような感じですね。まずは順を追って説明と、体験をしていただきましょうか。」
それだけ言うと姫さんはいつの間にか持っていた杖を掲げ何かを唱え始めた。そのすぐ横に2人の騎士。
「騎士・・・なんかいたか?」
「えっ?あっ、ホントだ!気付かなかったよ!すごいね!僕らに気付かれないで入るなんて!」
「・・・本当に全員気付かなかったというのですか?ローさん、あなたは?」
「同じだな。気付いたらそこにいた感覚がある。」
「ふふっ。警戒なさらないで大丈夫ですよ、勇者様方。彼らは『祈り奉る小部屋』専属の守護騎士ですので普段は少々特殊な結界で姿を隠しているのです。」
「特殊な結界、ねぇ?」
「えぇ、なにせこちらの『祈り奉る小部屋』は我が国で最も大切な場所の1つでございますので、最上級の守りを置いているのです。ちなみにこちらの結界も我が王家の秘技の1つです。」
「次々秘技が出てきやがるな。」
「すごいよねー!僕びっくりしてばっかりだよー!あ、あいさつはちゃんとした方がいいよね?僕はフーだよ!よろしくねー!」
「フーガード様、申し訳ございません。彼らは会話ができない状況ですのでご挨拶の方は・・・。」
「まさか、彼らは耳か喉を?」
「いいえ。その様に物騒なことはいたしておりませんわ。ただ、他者の声に惑わされないように音を遮断しているだけです。任務時間以外は普通にされていますのでご安心ください。」
「そうですか・・・。」
「おいおい、なんで残念そうなんだよウー。おかしいだろ?」
「自分の予想が外れたのが悔しいだけなので気にしないでください。」
あの顔ぜってぇ違うだろ。なんかどんどんヤバくなってる気がすんぞあいつ。
「それでは勇者様方、よろしいでしょうか?まずはそれぞれリリアル・コーロディアル様より天啓を授けていただこうかと思うのですが。」
姫さんはそう言ってゆっくりと俺らを見回した。もちろん返事はOKだ。いまは他にすることもねぇしな。当たり前だ。
「ありがとうございます。それでは皆々様、リリアル・コーロディアル様に祈りを捧げましょう。唯一無二の我らの神に!!」
「「「「唯一無二の我らの神に!!」」」」
――――1か月後――――
「あーーーまだ頭がクラクラするよーー。ちょっとだけだけどさーー。」
「俺もまだダメだな。頭がはっきりしねー。」
「まったく、いつまでぼやぼやしているのですか?フー、アー。」
「だってだってー、神様に天啓貰ってからずっと頭がぼんやりするんだもーん。しかたないじゃーん。」
「俺とウーは平気だからよくわからんが、そんなに酷いのか?」
「いや、別にそうじゃねーんだけどな。ずっと寝不足みたいなダルさっつーかなんつーかが続いてる状態みてぇな?うまく言えねぇんだけどよ。」
「そーなんだよねー。ま、きっとあと何日かゴロゴロ寝てたら治るんじゃないかなー?そんくらーい。」
「ですが、アーはともかくフーは間もなく出るのでしょう?」
「あー、まーねー?」
「もう少し休んでから出れたらいんだけどな。」
「ローはそう言うがよ、フーは外なる世界の守護者なんだから仕方ねぇだろ。守る範囲も広いし遠い。さっさと出ねぇと間に合わねぇよ。」
「・・・そうか。」
「そうそうー。心配してくれてありがとねーロー君、ウー君。でもだいじょーぶだよー。僕は馬車の中でひたすらゴロゴロしてみせるからねー。」
「フーガード様!間もなく出発でございます!」
「ありゃりゃー呼ばれちゃったねー。それじゃみんな、ちょちょっと行ってくるよ!何かお土産でも買ってくるねー!」
「土産なら外敵の持ちもんかなんかで十分だろ。はっ!1番やりあえるうめぇとこ行くんだ、へまやらかすなよ!」
「フー、体調はなるべく早く治すように。本調子じゃないからと職務を怠るようでは姫様やリリアル・コーロディアル様に顔向け出来ませんからね。」
「無茶して怪我するよりはマシだと思うけどな。」
「うんうん!みんなありがとねー!それじゃフーガード公爵、行ってきまーす!!」
勢いよく馬車へと乗り込みブンブンと手を振りまくる姿は全然お貴族様らしくねぇな。ま、成り立てじゃ仕方ねぇか。俺らも他から見たら大差ねぇだろうしな。
「さて、フーが行きましたので次はアーですね。まだ少し間があるとはいえ早く体調を治さないとですよ。」
「あ?言われねぇでもわかってるよ。それに俺の出番はまだ多少先だしな。それまでには放っといても治るだろうよ。」
「ならいいのですが。」
「ちっ。そういえばフーのヤツは獲物なんだったかな?」
「あぁ、フーなら確かトラ系だと言ってたと思う。」
「えぇ、そうですね。フーはトラ系の畜生が今回の標的です。その次のアーはライオン系の畜生ですね。」
「あー、トラもライオンも一緒だろ?」
「ふー、トラとライオンの違いをしっかりと説明しましょうか?」
「要らねぇよ。どっちにしろ俺は内なる世界の守護者だからな。来たヤツぶっ殺してりゃいいんだろ?」
「まぁ!間違ってはいませんね。くれぐれも打ち漏らすことのないようお願いしますよ?でないと姫様やリリアル・コーロディアル様に顔向けてまきませんからね。」
「分かりきったことグダグダ言ってんじゃねぇよ!この俺がそんなヘマやらかすわけねぇだろ!」
「だといいんですがね。」
「てめぇケンカ売ってんのか?!あぁっ!?」
「あー、アー、ウー、疲れたからそろそろ部屋に戻らないか?」
「ロー!てめぇはまだそれかよ!」
「あぁ、悪いがフーを見送るのに多少早起きしたからな。アーもまだ本調子じゃないんだ。戻って休んだ方がいい。今日は予定もないだろう?」
「まぁ、確かにこのあとはなんもねぇけどよ。」
はぁ、フーのヤツがいなくなってすぐこれかよ。明るいヤツがいなくなったらウーの嫌味ったらしいしゃべり方が余計に気に障っちまう。
「じゃあロー!なんか食いに行こうぜ!なんか小腹空いちまったよ俺は!」
「別に構わないが。ウーはどうする?」
「いえ、私は少々野暮用がありますので。」
ウーはそう言いながらご自慢のメガネをくいっくいっとうざったらしく動かした。イチイチ苛つく野郎だな。
「では、お先に失礼します。」
「おう、またな。」
「ウー、お前もあまりムリはするなよ。」
「・・・当然です。」
あー?なんかよくわかんねぇけどこれでスカシメガネもいなくなったな!
「ローは何食いたい?」
「俺は甘味があればなんでもいいんだが。」
「サラッと高級品じゃねぇかそれ。」
変わらないローの発言に苦笑しつつフーが発った方を一瞥するが、すでに馬車は見えなくなっちまってた。
異世界に来て大分経つがこんな風に長時間バラバラに行動すんのは初めてだな、なんて思ったがアイツはつえーから問題なんかねぇだろう。
「それよか遠征行くと飯マズがなぁー。」
俺はすぐに自分が出るときのことを考え始めていた。なんせ俺らはチートを貰った最強の勇者だからな。負けること、どころかケガをすることすら想像もしていなかった。
「無事に帰って来いよ・・・。」(ボソボソ)
隣にいたロー以外、全員が。
久々の登場、4人の勇者とお姫様。
忘れた頃にやってくるタイプです。




