続・魔法研究時々別れ 「僕らの別れがとうとう来たんだ、ラス○ル」
感想、評価をいただきありがとうございます(*´∇`)
読んでくださる全ての方々へ感謝の祈りを捧げながら、本編第80話を投稿させていただきますー!
これからも皆様に楽しんでいただけると幸いです(*´∨`*)
前回のあらすじ
思考トレース率が100%を超えました
セクハラスキー
カナデさん、外界進出
水を求めて三千立法メートル
スキルのないままに使いまくってた『生活魔法』。それがスキル化されて何が変わったかというと、特によくわからなかった。なんか全体的に使いやすくなったなーとか、魔力の消費量が少しだけ減ったかなーって程度の感覚的な変化が大半だったからだ。すでにスキルに頼ることなく自分で制御できちゃってたってことなんだろうと勝手に独りで自己完結った。
元々魔法操作系、魔術構築系、知識面と充実したものを持ってたからそれが原因らしいが当然解せぬ。隠れて小さくガッツポーズ泣き叫んで喜んでる雰囲気を醸し出したのに損した気分です。あ、ちなみにリンジュの実は上手にドライフルーツにできました。やっぱり持つべきものは便利な魔法すな。一瞬プラズマクラスターって単語が頭をよぎったが多分今回の件とは無関係なハズだ。あれはシャ○プだけの技術らしいしウチのエアコンは霧○峰だ。
「あ、なんかいま閃いたかも!」
急激にポクチンした時の一休さん状態になった。いわゆるティンってヤツだ。前にCMで見たプラズマクラスターの技術は確かイオンがどうのこうので水素や酸素がうんちゃらかんちゃらでH2Oや細菌・真菌なんかをどうのこうのするやつだったような気がする。うろ覚えでもこの際そこはどうでもいい!
「つまり、状態変化だけがすべてじゃないってことだ!水素と酸素があれば水が作れる!そんでもって空気中の水素と酸素ならその量は無限大!夢が広がるウッハウハだ!」
「ええっと、ソウさんの様子が・・・?ど、どうしたの?いったい何が??」
視界の片隅でハリンさんが何か言ってる気がするがいまはかまっちゃいられない!つまりは化学変化というか物質変化というか、とにかくそんな感じのアレで再度挑戦してみるべきだ!
「ソウは魔法のことに集中するといつもこうなるの。でも、少ししたら治るから大丈夫なの。」
「あたしも何回か見てるけど放っておけばいいのよ!見る役はいつもニコがしてくれるし!それよりソウが作ったしわしわのリンジュの実を食べてみない?気になってたのよねコレ!」
どこまで正確にできるかはわからんが、大気中の水分子をかき集めて液状に出来たんだからきっと出来る!成せば成る!俺はやれば出来る子だ!うっし!やっぞコラァ!
今度は酸素元素と水素元素を意識してこいつらを結合させて水分子に。そこから更に液状にする。それと同時にさっきと同じように空気中の水分をかき集めて液体にしてしまえばすぐに量を確保できるハズだ!そしてこの方法が確立できればいつでもどこでもお風呂を用意できるようになる!異世界来てから初のお風呂だ!wktk胸熱なドッキドキのKONYOKU展開待ったなしである!
「ここまできたらこの名を冠するのもやぶさかではないだろ!いでよ水!『生活魔法』『水創生成』!」
記念すべきこの魔法にはあっちのラノベでいうところのクリエイトウォーターと同等の名を与えよう!ふーははははは!これで水を出すもお湯を作るも自由自在!流石は俺!天才なーのだー!!
ごぽぽぽ・・・ごぽぽっごぽぽぽぽ・・・・ごぽごぽごぽぽぽぽぽごぽぽぽぽぽぽぽ・・ごぽっ・・・ぽ
「見よ!まるで水が泉の如く溢れ・・・あふ・・・・れ?あ、あれ?ど、どうした?!なんでだ!?また勢いが?どうなってんの???!」
「マスター、その方法では大量の水を生成することは難しいと思います。」
「なんでさ?!空気中の元素かき集めればそれなりの量になるでしょ?違うの??」
「どうしてマスターがその結論に至ったのかはわかりませんが、通常空気の重さは1気圧下では1立方メートル当たり約1.2gほど。先ほど飽和水蒸気量を考えていたかと思いますがアレは限界まで水分を含ませた状態での話しです。常にそれだけの水分量がある訳ではありません。」
「・・・うそでしょ?」
「本当です、マスター。ですので、先ほどの魔法も今回の魔法も非常に非常識と言わざるを得ません。どうして空気中に含まれている水分量以上に水を作り出せているのか。はっきりとはわかりませんがもしかしたら・・・一部は水系の精霊と同様にマスター自身が水を創り出している可能性が考えられます。」
カナデさんが何か言ってるがよく聞き取れなかった。ていうか俺の脳が理解するのを拒んでる気がする。なんで異世界で水を生み出すのにこんなに苦労しなくちゃいけないんだ?どうしてお風呂の準備が気軽にできない?!そんなの絶対おかしいだろ!
くっ!こんな時三つ編みメガネの豊満委員長なら素晴らしい代案を提示してくれたかもしれないのに彼女は俺の元には来てくれない。知ってることだけでも教えてほしいのに・・・。こうなったらもういっそのこと異世界召喚魔法を創造るしかないのだろうか?いや、それで召喚べるのは2.5次元のパチモンが精々か。ホンマモンは次元の壁を越えられやしないだろう。
「くそっ・・・もはや神は死んだ。」
膝から崩れ落ちそう呟くも、あの怠惰な神野郎がそう簡単にくたばるとは思えなくって余計にイラついた。この素晴らしくない世界に終始憤りを禁じ得ない。略してこのすば禁。なんかダメそうだ。
「んっ。」
ニコが俺に合わせてしゃがみこんで「がんばっ!」のポーズで慰めてくれる。なんてええ娘や。心が洗われるようだ。しかも可愛いいい匂い。
「ありがとニコ。ちょっと元気出た。ちょっと『生活魔法』が思ったほど万能じゃないからって落ち込んでても仕方ないよな。今度冒険級の水魔法覚えてリベンジするわ!」
ニコの頭をなでなでしながら自身を奮い立たせて誓いを立てる。そうだ。何も魔法は『生活魔法』しかないわけじゃないし他にもいくらでもやりようはあるんだもんな!俺たちの冒険はまだ始まったばかりだ!(キリッ)
「だからね、弓を扱う際にはバランスを考えないといけないのよ。」
「バランスなの?」
「えぇ、これは私の師匠の受け売りなんだけどね。弓は対象に近付くほどに威力が上がるし当てやすくなる。けど反撃を受ける危険性が高まるの。弓矢を持ってたら剣も盾も使えないから。でも逆に離れすぎると威力も落ちるし当てづらいしで案外この距離感が難しいのよ。」
「うんうん、なるほどなのー。」
何やらハリンさんとテトにゃんは俺をシカトしてハンティングというか弓のレクチャーをなさっているようだ。地面ドンを披露してるんだからもうちょっと興味持ってよ。寂しいよ。てかテトにゃんそんなに弓に興味があるなら今度用意してあげようか?そしたらお兄ちゃんに興味持ってくれるかな?
「特に大切になってくるのは周囲に妨害してくる存在がいないかどうか確認することね。集中してると気付かないなんてことがよくあるけど、それが1番危険なの。」
んむ~、まだ続きそうだな俺へのシカト。テトにゃんも真剣だし邪魔しないようにリンジュの実でも・・・あ。
「おいこらミリー。なんで乾燥させたのなくなってるんだ?」
「えぁっ?!え、ちょ、ちょっとそのぉ・・・あ、味見をしただけ・・・よ?そ、そう!味見よ味見!あんたが変なもん作るからあたしが味見とか毒見として食べてあげただけじゃない!む、むしろ感謝してほしいくらいだわ!」
ゴンッ!!
「いっったあぁぁ!!?」
「ふざけた嘘をつくな。悪いと思ったなら謝れ。間違ったと思うんなら水でもカブって反省しなさい。」
「・・・・・ご、ごめんなさい。ちょっと気になって食べてみたらすっごく甘くって一気に全部食べちゃった・・。」
「ふむ。初めからそうやって言えばいいんだ。今回はデコピンの刑で許してやろう。」
「ちょっ?!ちゃんと謝ったじゃない!なんっ「バチンっ!」あだっ?!」
「罪には罰を、デコにはピンを。これでチャラにしてやるから次からはちゃんと相談しろよ?勝手に人の物盗るのは悪いことだからな。」
「いったたたた。わ、わかったわよ。・・そ、その、えーっと・・わ、悪かったわね。」
「うむ。わかればよろしい。てかそんなに糖度上がったのか。あとは風味だけどそれはどうだった?」
新たに枝からモイモイした実を乾燥させながらミリーに問うが、美味しかったしか返ってこない。しまった聞く相手を間違えた。ちなみにあとになってテトにゃんとハリンさんも共犯であることが判明したので2人にもデコをピンしてお仕置きしておいた。対ミリー時の威力の半分以下だがこれで正解だろう。か弱い2人を鉄頭と同等に扱ってはいけない。
リンジュの実をいくつか乾燥させ終えたらまだつまみ食いをしてなかったニコと2人で実食。思った以上にうまぁい。あんまり知らないけど見事なドライフルーツもどきといえよう。表面的な風味はかなり飛んでるけど噛んでる内にじわじわと出てくる後味が良い感じに美味しい。語彙は少ないが十分成功といえるっぽい。あとで保存性も確かめてみるか。
その後、いくつかの果実と薬草類、獲物を追加げっちゅしてから帰路に着く。思った以上の大漁具合にびっくりしているが、何よりの収穫は馬車の天井ができたことだろう。それなりの大きさの枯れ木があったから加工してちょちょいとDP召喚機能・・・というか構築機能?変換機能?を使ってみただけなんだけど。ホントにこれの何がどうしてどの辺りが召喚なのだろうか?現実を塗り替えてるような感覚すらある。まさにファンタジー。
「いつの間に屋根が?どうして?どうやって?」
とハリンさんがブツブツ言ってたが聞こえないフリで安定のスルー。こういう時こそ日本人の嗜みを忘れてはいけない。事なかれ主義・ニッポンの素晴らしさをこの世界に広めるのは俺しかいないのだから。
「なんか行きよりだいぶ遅くなってない?」
「行きよりもこれだけの荷物を増やしてたら当然よ。むしろ頑張ってる方だと思うけど。」
「オバナもフランクもガンバレーなのー!」
帰りの道中もトラブルは特に何もなく順調なドライブだったと言えよう。お尻の被害と移動時間以外は。どうやらハンティングでハッスルしすぎたせいで積載量オーバーになってしまったみたいだ。氷水の入った樽とかが余計だったかもしんない。馬たちよ、すんまそん。
ちょっとうとうとしてた時にみすぼらしい格好をしたおっさんを轢きそうになったような気もしたが、多分夢現に見た幻だったんだろう。記憶が曖昧なのでそう結論をくだす。それでも陽が沈む前にメタリカーナにたどり着きギルドで精算。ミリーが受けた依頼の納品をしてみるとあなをかし。
「依頼だとそんなに違うもんなのか。」
淡々と述べてるように見せかけて実は開かずの右目が開いちゃいそうなくらいにびっくらこいてる俺氏。開いてる方の左目なんかポロリしちゃいそうだもの。
「まぁな。通常の素材買い取り価格に依頼達成報酬が加算されるからな。1つ1つは小さくともまとまればそれなりにならぁな。」
そう返してくるのは毎度お馴染みの腕毛ことジッダ氏だ。腕組みしてると何が何だか分からなくなるからやめてたもれ。毛が絡んだりしないの?
「それになんなんだこの鮮度?下処理もしっかり・・・てかコレの下処理って狩ってからすぐにやったのか?!臭みがねぇし色も鮮やかすぎるだろ!!」
「当たり前じゃん?じゃないとすぐに肉質が悪くなってゲロ不味い肉になんじゃん。そんなん食べれないし食べ物じゃないと断ずるのもやぶさかではないぞ。」
「・・・マジか。ソウさんにはいっつも驚かされてばっかりだな。まさかこの人数で即時解体ができるたぁな。だがそうなるとちっと困ったことになるかもしれねぇ。下手したら依頼達成処理できねぇかもだぞ。」
「はっ?なんで?」
「いやな?普段持ち込まれるヤツは決まってここまでの処理なんざされてねぇのよ。それをいつもと同じ値段で処理しちまうと色々と問題があってだなぁ。」
「あぁ、なるほど。そういうことね。逆に良すぎて扱いが困る系か。」
「まぁなんだ。あんま言いたかねぇけどそういうこったな。ちっと上の連中に掛け合ってみてもいいか?どっちにしてもギルドで買い取らせてもらいてぇから換金できねぇってことにはならないんだが。」
「できれば成功処理して貰えると助かるかな。ムリならムリで依頼期限はまだあるんだっけ?もしまだ日数に余裕があれば下処理なしのも狩ってくるけど?」
「期限の方は特に問題はなねぇけど、それよりわざわざ質を落として持って来いっつーのもな。できるだけ達成処理できるように粘るとするさ。」
聞くところによるとそもそも狩った獲物をその場で解体するなんてことは普通はしないらしい。なんか普通じゃないことやりまくってるな。そろそろ自重しないと変なヤツだって思われてしまいかねないから気を付けよう。
あ、解体をすぐにしないのは技術的な問題じゃなくって妨害的な問題の方らしい。血肉の匂いに誘われて大量のモンスターと動物が襲ってくるから普通はできないってことらしい。そういえば1回猛烈アピールを受けたけどアレがそうか。次々来てたから変だとは思ったんだよ。うん。
だがしかし、うちにはうちのやり方がある。というかばきゅってくれるダンジョンがある。これは大きなアドバンテージだろう。モンスターや動物の要らない部位などを回収するという点においてはアイテムボックスに匹敵するチートっぷり・・・じゃないよね。ただの掃除機しょぼんぬだよ。
「あと果物っていうアバウトな依頼も受けたんだけど、コレとコレならおk?」
「あぁ、マンレープ(ぶどうみたいなヤツ)とワイリー(野イチゴみたいなヤツ)か!どっちも需要があるヤツだな。問題なく引き取ろう。他に何かあるか?」
「他?あとは果物ならリンジュの実くらいしかないけども?」
「リンジュの実?あーそりゃダメだな。すぐに悪くなっちまうから引き取れ・・・ない?いや、なんだそれ?それがリンジュの実か?」
「うん、乾燥させたリンジュの実だけど?」
「乾燥だと?!いったいどうやって!?いや、それよりもリンジュの実なのに変色が一切ない!これなら十分売り物にできそうだ!ど、どれだけあるっ??」
「いや、保存性の確認とか俺らのおやつにも要るからあんま渡せないぞ?いま許容できるのは実の5個分くらいが限界だ。」
言ってから愛妹たちをチラチラ見る。このムダに興奮してる腕毛野郎に少しくらいの施しをしてもいいよね?って軽い気持ちでアイコンタクトを送ってみたら素直に頷いてくれた。話しがわかるのはいいんだけどちょっと将来が心配だわぁ~。
《底意地の悪いマスターとは考えていることが違うと思います。アイコンタクトで遊ばないでください。》
怒られちった。アイコンタクトって難しいんだね。
「それだけでも十分だ!頼む!そいつも売ってくれ!」
両手を合わせて拝む腕毛。腕を近づけないでくれ。なんか舞いそうだしセリフがヤバい。薬の密売人の役でもやってる気になってくる。
「別にいいけどなんでそんなに?」
「あぁ、実は明日か明後日くらいに隣国からそれなりの人間が来ることになってるらしいんだが、最初にギルドで持て成すことになってんだ。それ用に何かないかってここんとこ探してたんだよ!リンジュの実なら他にはあんまねぇ上にあったとしても中々用意が難しい!その点乾物なら時分を合わせることもない!まさに打ってつけだぜ!」
なんだかイヤな単語を拾った気がする。絶対フラグだよコレ。面倒なことになる前に避けるか逃げるかしようと固く心に誓ったまま適当に取引を終える。今回の稼ぎは全部で銀貨91枚(税金天引き後)になってびっくりした。
ゴブなんか100単位で殺ってその上で巣まで破壊したのにこれの半分以下。ゴブの命のなんと軽い事か。ふわふわりんふわふわるんですね?わかります。あの時よりも納品数が少ないのに余裕で高値を更新したことに同情を禁じ得・・・なくないな。だってゴブには利用できる部位がないのが悪いんだもん。金銭的価値なんかなくって駆除代金だもんな。ついでに新鮮な肉に関しては査定次第であとからもっともらえる可能性もあるらしい。
「しかも『城砦の矛』用の鹿(仮)を丸々1頭残してこれか。なかなかの収穫だったな。」
「な、なかなか?これでなかなかなの?やけに荷物が増えたなーっ多いなーって思ってたんだけど、全部売れるものだったなんて思ってなかったわ・・・。」
「大体が食肉だったじゃん?猪系、鹿系、鳥系etc.。量も量だったし。それに頭痛薬やかゆみ止めの薬の原料とか結構積んでたんだよ。」
基本的に重たいもんはミリーを酷使してたからハリンさんは気付いてなかったのか。何気に樽に詰めれるだけ詰めたりと省スペースにも気を使ったし。今回の報酬分配として3パーティーってことで3人の頭割りにしようと言ったら断られた。
「それじゃもらい過ぎだから人数割りがいい・・かな?いえ、それでももらい過ぎね。その半分でお願いしていい?」
「ハリンさんがそれでいいとしても最低でも人数割り分くらいは受け取ってよ。ミリーもそれでいいのか?」
「あたしはお肉が貰えたらそれで十分よ!多少のお金があってもあんなにいいお肉は食べられないもの!」
本人がいいならいいかとハリンさんとミリーには銀貨18枚ずつ渡した。鹿(仮)肉はバルムさんたちにお土産として渡すからこれでいいだろ。
「そんじゃ今回の1泊2日の狩り旅行はこれにて終了だな。バルムさんとこにお肉届けるけど2人はどうする?」
聞いてみたらどうせ他に予定もないからと即断で着いてくるとのこと。愛妹たちは俺と離れることは有り得ないので一緒に行くに決まってる。とりまどこにいるかわからなかったので定宿はどこかとミリーに聞いた。
「いつもはギルド裏の安宿に泊まってるわよ?人数多いとお得なんだって!」
ミリーの先導に従い安宿と言われた場所へと行ってみると入口前でばったり懐かしの白パン・・・もといタンロちゃんとエンカウント。特別可愛いわけではないが個人的にお気に入りのそばかすっ娘だ。そばかす、なんかいいよね。
「タンロ姉!」
「ミリー!」
「「おかえりなさい!」」
同時に迎え入れる態勢を取る2人。両者一歩も譲らない構えです。
「「??」」
天然か!っとツッコミを入れたいけどはたして通じるかどうか悩むところである。こっちの世界に天然という概念がそもそもあるのだろうか?どっちも出掛けてたんだからどっちも正解なのも面倒なところだ。
「え~っと、タンロさんだよね?ちょいおひさー。」
「え?あ、あぁー!どうもミリーがお世話になりましたー!」
「うん、お世話は沢山したけども、同じくらいお世話になったから大丈夫だよ。それで早速で悪いんだけどバルムさんって今日いる?」
ミリーには本当にお世話になった。彼女いない歴=年齢という深い業を背負った俺に色々と提供してくれたからな。時に視覚で時に触覚で、頻繁に嗅覚で稀に味覚で。まだまだ発展途上ではあるものの女性経験に乏しい俺に対してこれでもかと言わんばかりに積極果敢なサービスをしてくれたこと、忘れはしない。ありがとう、ミリー。
《ほぼ一方的にマスターからのセクハラだったと記録していますが、いつの間にかマスターの中では同意の上でありミリーからの提供ということで落ち着いているのですね。童貞を拗らせると妄想と現実の区別がつかなくなると、カナデ覚えました。》
「バルムさんなら装備類の点検をするって言ってたから部屋にいるんじゃないかしら。用事なら呼んでくるけど?」
カナデさんが見当違いなことを言ってくる。同意なんて要らないんだよ。必要なのは偶然と必然だけ。俺の下心と罪悪感が表に出なければそれは故意とは言えない。つまり無罪。完璧なロジックである。
「うん、お願いしていい?」
《ゲスい思考と犯罪臭がする理論を頭に浮かべながらよく普通に人と接することができるものですね、マスター。非常に異常です。》
スキル『並列作業』があるんだからこれくらい普通だと思うんですけど?カナデさんはちょっと俺の内面に厳しすぎだよ!多分世間の男性たちは似たりよったりな思考してると思うよ?むしろ俺紳士だよ?
「わかった、ちょっと待っててね。」
ひざ下丈のスカートの裾をふわりとひるがえして駆け出すタンロちゃん。このスカートのふわふわ感って不思議と目で追いたくなるけどどうしてだろうか?太古の昔、狩猟民族だったころの血が騒ぐのだろうか?
自身の本能の起源を考察するという崇高且つ高度に学術的な思考へ意識を飛ばしていたらすぐにタンロちゃんが帰ってきた。ちょっとと言ってたけどマジで早やっ!近くにいたのかな?
「おや、ソウさんじゃないか。それにテトちゃんもニコちゃんも!よく来てくれたね!!あたしはミリーが帰ってきたって聞いたから来たんだけど、タンロ?あんたまぁた大切なこと伝え忘れてやしないかい?」
おいコラなんだそのテンション差?俺が愛妹たちのおまけみたいな感じ出すなよ。むしろ2人は俺の付き添いなんだぞ?
「えっ?あ、ご、ごめんなさい!ミリーちゃんが帰ってきたのがうれしくって!ソウさんたちも来てたってこと伝え忘れてました!ごめんなさい!」
某帝国ホテルの新人研修張りにぺっこぺっこと高速お辞儀を繰り返すタンロちゃん。見ようによってはヘッドバンキングをかましてるようにも見える。思ったよりもロックなお嬢ちゃんだ。できることなら腰を折った状態の前屈みな体勢で止まっていてほしい。もちろん他意はない。
「まぁいいんだけどね。今度から気を付けておくれよ。それでソウさん、今日はどうしたんだい?」
「用ってほどのことでもないんだけど、1つは預かってたミリーの返却。重い物持ってもらったり、色んな面で活躍してくれたよ。その件はどうもありがとうって言いに来たんだ。」
「それはよかった!うちのミリーがお役に立てて何よりさね!それにしたってソウさんは律儀だねぇ。元々迷惑をかけたのはこっちだって言うのにさ。」
「迷惑を被った分は素材依頼でチャラにしたじゃん?だからこっちが多めに貰っちゃってるんだよねってことで、2つ目はその埋め合わせ。よかったらこのお肉みんなで食べてよ。」
そう言いながら馬車から降ろした樽の中身を見せる。樽を動かしてるのはミリーだけど。
「お肉って・・・はははっ!こりゃまいったねぇ!ソウさんあんたイイ漢すぎるよ!迷惑かけたのはこっちだってのに、こんな立派なディリ―までいただいちまってホントにいいのかい?」
「うん、さっき狩りから帰ったばっかりだから鮮度は保障するよ。しっかり下処理もしてあるから臭みも抑えられてるハズだし。」
「うちは人数居るから正直助かるよ!そうだ!なんだったら今夜食べてかないかい?ちょうどこれから晩の用意をと思ってたところなんだよ!」
「誘ってくれるのはマジ普通に嬉しいんだけど、今日は先約があってねー。申し訳ない。」
しかもその先約がマーグル婆さんである。ポーション絡みじゃなければブッチしてこっちに参加したんだが・・・。
「あー・・なんだいそうなのかい?貰い過ぎた分を返せたらって思ったんだけど。」
「気にしないでよ。これからも何かしらで縁があるかもしれないから、お近付きの印とでも思って楽しんで食べてくれたら十分だし。」
「これからかい?あぁ、そうだね!そうさせてもらおうかねぇ!今後何か困ったことがあったらあたしらを頼っておくれ!我ら『城砦の矛』はソウさんのピンチとあらば1番に駆けつけることを約束するよ!」
何故かピンチ限定で友援のご提案をいただいてしまった。いや、情報交換とかそういう冒険者っぽい繋がりでよかったんだけど・・・なんか言い出し辛いな。もういっかな?
「わかった。もしもの時は頼らせてもらうよ。逆にバルムさんたちが困ったときは俺らにも声かけてよ。案外役に立てるかもだからだからさ。」
互いに有事の際の相互扶助的な約束を交わした。何気に異世界に来て以来初めての対等な付き合いが出来る人になったかもしれない。これからこういった繋がりをもっと沢山作っていきたいものだな。うん。
「ところでバルムさん!ちょっといいかしら?」
「んん?どうしたんだい、ミリー?」
「実はバルムさんに相談したいことがあるんだけど――――・・。」
突然会話に闖入してきたのは我らがポンポコタヌキ娘のミリーその人だった。なんでもミリー曰くハリンさんを是非ともチームへ入れたいらしい。テトにゃんまで会話に入ってハリンさんの能力アピールして売込みしてるし。あれあれ?そんな話しいつの間にしてたん?俺が孤独に御者してる時?除け者感が半端ない。てかハリンさん『魔硬』使えたんだっけ?
「ミリーちゃん、私『魔硬』持ってないからやっぱりムリだと思うんだけど。」
「でもでも!聞いてみないとわからないじゃない!あたしがあの時助けに入るのが間に合ってればあの人たちも助かってたかもしれないだもん!」
だもんって。実は間に合わなかったの気にしてたのか。思えばミリーは正義感?みたいなヤツが強いタイプだったような気がするから後悔してたりするのかもしれない。
「ウチもあの時いたのに役に立てなかったの・・・。」
「ん~、事情はわかったさね!パーティーの仲間を失ったとあっちゃあ見過ごせないね!正式な加入はすぐにとは言えないけど、まずは一緒に行動してみるってのはどうだい?」
「やった!流石はバルムさん!話しがわかるわね!」
「困ってる女の子を1人ほっぽり出したんじゃ『城砦の矛』の沽券に関わるじゃないか!冒険者の先輩としてちょっとくらいの面倒は見させてもらうよ!」
「い、いいんですかっ?」
「あぁ、もちろんだとも!それじゃいまいるメンバーに面通ししないとさね!ソウさん、そういうことだから悪いけどあたしらは行くよ!なるべく早く馴染んで安心させたいからね!」
「うん、それがいいと俺も思うよ。バルムさん、ハリンさんのこと俺からもよろしく頼むね!」
「おうさ!このバルムに任せなよ!」
カラカラと笑いバコンバコンと厚い胸板を叩くバルム|△≪さんかっけー≫!マジ漢です!俺のとこじゃ構成メンバー的にあんまりだったから助かるわー。だけどもこの蚊帳の外的雰囲気はいかんともしがたい。よろしくとか言ったけど場違いすぎる気もするし。とりまニコの頭でも撫でて癒されるとするか。なでなでなで。
最後に疎外感をたっぷり味わってしまったが、これでようやくミリーをリリースすることができた。荷物持ちとして重宝したが、身の安全には代えられない。いや、もう急に殴りかかってきたりはしないんだろうけどさ。今後のサービスシーンは大幅に減ることだろう。
≪テトにゃんとニコがいるので頻度が下がることはないと思いますが?≫
をいをいカナデさんや、何をおっしゃるうさぎさん。愛妹たちをどういう眼で見てるんだい?俺が大切なこの娘たちをそんな穢れた眼で見るわけないじゃないか!HAHAHAHAHA!
≪散々視姦しておいてよくも言えたものですね、マスター。≫
人聞きの悪いことはおよしになってくれませんか?最近のカナデさんの発言が過激すぎる件について小一時間位問い詰めたい気分になってきたよ!
それに、大切な妹たちが可愛すぎて大事すぎてそんな眼で見るのはちょっとムリなんです。ほら、本気になるほど奥手になるっていうでしょ?
≪なるほど。つまりはヘタれているのですね、マスター。委細承知しました。≫
どうやら人工頭脳?であるカナデさんにはまだまだ人間の繊細な機微がわかっていないようだ。よろしい、ならば戦争だ。カナデさんが音をあげるまでOHANASHIAIをしっかりとしないといけない。
何よりYESロリータ!NOタッチ!匂い嗅いでもチョメするなって言うだろう?
「ミリー、ハリンさん、またねなのー!」
「んー!」
「もちろんよ!また一緒に冒険するんだから!」
「ソウさん、テトちゃん、ニコちゃん、色々とありがとう!またね!」
おおぅっ。ボケッとしてたらタイミングを逸してしまった。とりまにこやかに手でも降っておくか。
「また都合が合えばご一緒しましょう。」
なんでカナデさんがしれっと挨拶するのかな?かな?
お読みいただきありがとうございます。
ちょっと魔法のお話しが長くなってしまいましたが、お付き合いいただきありがとうございます。
矛盾や書き間違ってそう!とかありましたらご報告いただけると幸いですm(_ _)m
それにしてもまさかミリーがここまで居続けるとは思っていませんでした。なかなかしぶといですね!
次回、新キャラ出る予定です。




